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マイマイカブリ(Carabus (Damaster) blaptoides)の分類 オサムシ科(Carabidae)
マイマイカブリ(Carabus (Damaster) blaptoides)の概要 Carabus

マイマイカブリ(Carabus (Damaster) blaptoides)

【 学名 】
Carabus (Damaster) blaptoides (Kollar, 1836)

基本情報

大きさ・重さ

成虫体長:26〜65 mm (井村・水沢, 2013, p. 335)
幼虫体長:35 mm 内外 (終齢) (黒佐, 1959, p. 400)
卵の大きさ:長径約 1 cm

参考文献

  • 2013 日本産オサムシ図説 - 書籍全体, 井村有希、水沢清行(著) 日本産オサムシ図説. 昆虫文献 六本脚. .
  • 黒佐和義 1959 741 マイマイカブリ, 河田黨(著) 日本幼虫圖鑑. 北隆館. p. 400.

最終更新日:2020-04-30

活動時期

4〜10月 (三木, 1993, p. 114)

参考文献

  • 1993 フィールドガイド11 日本の昆虫 - 書籍全体, 三木卓(著) フィールドガイド11 日本の昆虫. 小学館. .

最終更新日:2020-04-30

分布

北海道・本州・四国・九州および周辺の諸島 (屋久島以北)
(井村・水沢, 2013, p. 335)

参考文献

  • 2013 日本産オサムシ図説 - 書籍全体, 井村有希、水沢清行(著) 日本産オサムシ図説. 昆虫文献 六本脚. .

最終更新日:2020-04-30

学名の解説

種小名は「Blaps (ゴミムシダマシ科の中の一属) の形をした、Blaps のような」という意味。亜属名の Damaster はギリシャ語の damastēs の語尾を書き換えたもので、「征服者」を意味する。(井村・水沢, 2013, p. 336)

参考文献

  • 2013 日本産オサムシ図説 - 書籍全体, 井村有希、水沢清行(著) 日本産オサムシ図説. 昆虫文献 六本脚. .

最終更新日:2020-04-30

和名の解説

和名はカタツムリ (マイマイ) の殻をかぶるようにして食べている姿に由来している。

参考文献

  • 八尋克郎 1998 オサムシ類の食性, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. p. 93.

最終更新日:2020-04-30

亜種

以下の8亜種に分類される。

・マイマイカブリ北海道亜種 C. (D.) b. rugipennis (Motschulsky, 1861)
…北海道に分布。体長 26〜44 mm。頭部と前胸背板の背面は緑色、緑赤色、赤銅色などのものがあり、金属光沢を帯びる。鞘翅は黒色で、しばしば紫色。稀に緑色を帯び、光沢は鈍い。鞘翅端は腹節の先端を僅かに越えるが、先端は鈍く尖るか又は全く角をなさず、顕著な尾状突起は形成しない。通称はエゾマイマイカブリ。

・マイマイカブリ東北地方北部亜種 C. (D.) b. viridipennis (Lewis, 1880)
…東北地方北部(青森・秋田・岩手各県と宮城県東部)に分布。体長 28〜44 mm。頭部の背面と前胸背板および 小盾板は金属光沢を帯びた紫紅色。鞘翅は多少なりとも緑色がかり、時に黄色ないし青色味を帯び、光沢は弱い。体側面、腹面にも赤紫~紫色の金属光沢をそなえる。鞘翅端は鋭く尖り、尾状突起を形成する。キタカブリと呼ばれることがある。

・マイマイカブリ東北地方南部亜種 C. (D.) b. babaianus (Ishikawa, 1985)
…東北地方南部 (宮城県・山形県・福島県北部) と中部地方北部 (新潟県・長野県北部) に分布。体長 27〜44 mm。東北地方北部亜種に近いが、頭部と前胸背板背面の色彩は紅赤色、紅紫色、紫色、青紫色、青藍色、青色などに変化し、一般に分布域北部に産するものは赤っぽく、分布域南部のものは青っぽくなることが多い。鞘翅は基本的に黒色だが、僅かに青味や緑色味を帯びる場合もある。鞘翅端は東北地方北部亜種のそれに近い。通称はコアオマイマイカブリ。

・マイマイカブリ粟島亜種 C. (D.) b. fortunei (Adams, 1861)
…粟島 (新潟県) に分布。体長 33〜46 mm。頭部背面と前胸背板は紫紅色の物が多いが、時に青紫色で、金属光沢は東北地方南部亜種よりもやや弱いものが多い。鞘翅は黒色で、時に僅かに青~紫色を帯びる。鞘翅の尾状突起は佐渡島亜種よりやや長いが、東北地方南部亜種より短い。通称はアオマイマイカブリ。

・マイマイカブリ佐渡島亜種 C. (D.) b. capito (Lewis, 1881)
…佐渡島 (新潟県) に分布。体長 32〜44 mm。頭部背面と前胸背板は紫色で、中部地方以北に産する各亜種より光沢は鈍い。鞘翅は光沢を欠く黒色だが、肩部側縁には紫色の光沢を有する。相対的に複眼の突出が弱い特異な体型が特徴で、頚部は太く、長さは複眼の直径の約 2 倍。鞘翅端は僅かに腹節末端を越える程度で尖らない。通称はサドマイマイカブリ。

・マイマイカブリ関東・中部地方亜種 C. (D.) b. oxuroides (Schaum, 1862)
…本州中部 (関東地方・中部地方) に分布。体長 30〜50 mm。一般に頭部背面と前胸背板は青藍色~紫~黒色、鞘翅は黒色だが、北方や高地のものではしばしば青みがかる。鞘翅端の尾状突起は一般に短いが鋭く尖る。通称はヒメマイマイカブリ。三浦半島産の大型個体に対し、モンローマイマイという通称が使われたことがある。

・マイマイカブリ隠岐亜種 C. (D.) b. brevicaudus Imura et Mizusawa, 1995
…隠岐諸島に分布。体長 38〜50 mm。基亜種に近いが、以下の点で異なる:1) 鞘翅肩部の紫色光沢が弱く、小盾板は同光沢を欠く。2) 平均してやや小型。3) 前胸背板はより太短く、長幅比は1.35程度で、表面の皺と点刻が粗い。4) 鞘翅も全体にやや太短い。最大の特徴は鞘翅端の突起が明らかに短い点で、その先端部はあまり鋭く尖らない。通称はオキマイマイカブリ。

・マイマイカブリ基亜種 C. (D.) b. blaptoides (Kollar, 1836)
…本州西半部・四国・九州に分布。体長 30〜65 mm。頭部背面と前胸背板は黒色で、より北方に産する他亜種のような光沢がなく、僅かに暗紫~藍色を帯びる程度。鞘翅も黒色で光沢に乏しく、肩部は紫色を帯びるものが多い。鞘翅端の尾状突起は著しく発達し、先端は矢筈形で鋭く尖る。五島列島福江島の集団には極めて大型の個体が出現することが知られている。ホンマイマイカブリと呼ばれることもある。

(井村・水沢, 2013, pp. 336-341)

参考文献

  • 2013 日本産オサムシ図説 - 書籍全体, 井村有希、水沢清行(著) 日本産オサムシ図説. 昆虫文献 六本脚. .

最終更新日:2020-04-30

分類学的位置付け

昆虫綱 コウチュウ目 オサムシ亜目 オサムシ上科 オサムシ科 オサムシ亜科 オサムシ属 マイマイカブリ亜属 マイマイカブリ
オサムシ亜族 Carabina に関しては、全ての種をオサムシ属 Carabus に含める分類体系と、多くの属に分けるという分類体系がある。オサムシ亜族を Carabus 1属としてその下に多数の亜属を認めるとすると、分類は上のようになる。

参考文献

  • 八尋克郎 2007 マイマイカブリ, 森本桂(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑 第Ⅱ巻 (甲虫篇). 北隆館. p. 18.

最終更新日:2020-04-30

形態

成虫の形質

オサムシの中でも、とくに体形が細長く、胸部と頭部が顕著に突出して、いわゆる「クビナガ」になっているのが特徴。頭部と前胸背板の色彩は亜種又は個体によって金緑・金銅・紫紅・青紫・紫・暗藍・黒などに変化し、鞘翅は光沢を欠く黒色だが、北方のものでは黄緑色・緑色・紫色等を帯びる。体側面と腹面にも前胸背板と同様ないし紫色の金属光沢を帯びる。鞘翅端は多少なりとも腹端を越えて後方に突出し、尾状突起を形成するが、南のものほど長く顕著になる傾向がある。
雄の口髭 (小顎ひげ,下唇ひげ) の先端は雌に比べ広がる。他のオサムシ類と異なり,前跗節による雌雄の区別はできない。
北海道、本州、九州、四国などに分布する集団は、頭部・胸部が伸張した典型的な狭頭型形態を示す一方で、新潟県佐渡島に生息するサドマイマイカブリは、相対的に頭部と胸部が横に肥大した巨頭型的な形態をしている。巨頭型は大顎の力が強くカタツムリの殻を壊して食べることができるが、その太短い頭部・胸部は頭を殻に突っ込んで採餌する上では不利にはたらく。逆に、狭頭型はその細長い頭部・胸部を殻に突っ込む上で有利だが、大顎の力が乏しく殻を破壊して食べることができない。このように一方が成り立てば、もう一方が成り立たなくなってしまう天秤のような関係はトレードオフと呼ばれる。巻貝の採餌行動に、このようなトレードオフが存在するため、巨頭型・狭頭型といった形態変異が生じていると考えられている。

参考文献

  • 2013 日本産オサムシ図説 - 書籍全体, 井村有希、水沢清行(著) 日本産オサムシ図説. 昆虫文献 六本脚. .
  • 小沼順二 2013 マイマイカブリの形態変異:適応と遺伝的背景, 曽田貞滋(編) 環境Eco選書⑧ 新オサムシ学 ー生態から進化までー. 北隆館. pp. 197, 199.
  • 2000 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬 - 書籍全体, 曽田貞滋(著) 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬. 京都大学学術出版会. .

最終更新日:2020-04-30

幼体の形質

頭幅は約 4.2〜5.7 mm。体表の硬皮は黒色で青色金属光沢を有し、足は黒褐色である。幼虫は他のオサムシと比べると大きく、脚が長く、また腹部が幅広くなっている。これは、一度に大量の養分を吸収して利用するには、満腹して腹節の間が伸びた状態での容量が大きくなるよう、幼虫腹部が幅広い体形が有利であるためとされている。

参考文献

  • 黒佐和義 1959 741 マイマイカブリ, 河田黨(著) 日本幼虫圖鑑. 北隆館. p. 400.
  • 2000 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬 - 書籍全体, 曽田貞滋(著) 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬. 京都大学学術出版会. .

最終更新日:2020-04-30

卵の形質

乳白色をしている。

参考文献

最終更新日:2020-04-30

地理的変異

亜種ごと、また同じ亜種でも地域によって色彩や形態に変異が生じる (「亜種」の項参照)。

参考文献

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似ている種 (間違えやすい種)

亜種エゾマイマイカブリはオオルリオサムシの1亜種サッポロクビナガオサムシに似ている。(石川, 1991, p. 201)

参考文献

  • 1991 オサムシを分ける錠と鍵 - 書籍全体, 石川良輔(著) オサムシを分ける錠と鍵. 八坂書房. .

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生態

成虫の生息環境

自然林やスギ・ヒノキの植林地、休耕田、高層湿原、草地など、様々な環境に広く適応している種で、日本列島のほぼ全域に分布しており、周辺島嶼からの記録も多い。密度は低いが分散力は非常に大きいようで、山地から低地にまで広く分布し、中部地方では高山帯にまでみられることがある。また、河川敷のような攪乱の多い場所 (あるいは餌となるカタツムリが多い場所) には比較的たくさん生息することが知られている。

参考文献

  • 2013 日本産オサムシ図説 - 書籍全体, 井村有希、水沢清行(著) 日本産オサムシ図説. 昆虫文献 六本脚. .
  • 曽田貞滋@長太伸章 2013 マイマイカブリの地理的集団間の系統関係, 曽田貞滋(編) 環境Eco選書⑧ 新オサムシ学 ー生態から進化までー. 北隆館. p. 194.

最終更新日:2020-04-30

成虫の食性

主にカタツムリを捕食。他にはミミズや昆虫の幼虫、新鮮な動物の死体などを摂食し、クヌギなどの樹液にも集まることがある。

参考文献

  • 2013 日本産オサムシ図説 - 書籍全体, 井村有希、水沢清行(著) 日本産オサムシ図説. 昆虫文献 六本脚. .

最終更新日:2020-04-30

幼虫の食性

幼虫はカタツムリだけを食べて成長する。

参考文献

  • 八尋克郎 1998 オサムシ類の食性, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. p. 93.

最終更新日:2020-04-30

成虫の天敵

ヒキガエルなどに捕食されている。(曽田, 2000, p. 49)

参考文献

  • 2000 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬 - 書籍全体, 曽田貞滋(著) 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬. 京都大学学術出版会. .

最終更新日:2020-04-30

ライフサイクル

春繁殖型で、5月から8月にかけて産卵し、新成虫は8月から11月にかけて出現する。主に成虫で土中や朽木の中で越冬するが、幼虫も冬の間のオサ掘りで採集されることがあり、一部は幼虫越冬も行うものと考えられている。幼虫越冬の場合は、土の中で越冬し、そのまま蛹化・羽化して、さらに体が硬くなってから地表に出るものと考えられる。オサムシ亜族の幼虫齢数は普通三齢だが、マイマイカブリの齢数は例外的に二齢である。(曽田, 2000, pp. 65, 118, 120, 122)

参考文献

  • 2000 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬 - 書籍全体, 曽田貞滋(著) 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬. 京都大学学術出版会. .

最終更新日:2020-04-30

生殖行動

交配実験によると近接地間のものはよく交尾し産卵するが、雌雄の産地が離れるに従い産卵が、ついで交尾が起こらなくなるという。

参考文献

  • 八尋克郎 2007 マイマイカブリ, 森本桂(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑 第Ⅱ巻 (甲虫篇). 北隆館. p. 16.

最終更新日:2020-04-30

産卵

雌は一つ一つの卵を、腹部の先で土の中に開けた空所の中に丁寧に産み込む。卵はそこの部分がわずかに土に接地している状態である。狭い容器内でも少しずつ離れた場所に産みつける。卵を産み落とすとさらに次の卵を成熟させ、次々と産卵を行う。
オサムシの中では卵が大きい代わりに、その数が少ない傾向にある。卵巣小管の数は8本程度しかなく、ミミズ食や昆虫食のオサムシの半分以下である。
(曽田, 2000, pp. 10, 120)

参考文献

  • 2000 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬 - 書籍全体, 曽田貞滋(著) 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬. 京都大学学術出版会. .

最終更新日:2020-04-30

特徴的な行動

天敵に襲われるとおしりから強い酸性の化学防御物質を噴射する。(曽田, 2000, p. 49)

参考文献

  • 2000 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬 - 書籍全体, 曽田貞滋(著) 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬. 京都大学学術出版会. .

最終更新日:2020-04-30

関連情報

採集方法

ピットフォール (落とし穴) トラップによって採集される。プラスチックカップのような容器をその口が地面と同じ水準になるよう埋め込んでおくと、マイマイカブリは歩き回るうちに、落とし穴に落ちるので、これを採集する。また、マイマイカブリの成虫は土中や朽木中で越冬しており、冬の間にこれを手鍬やピッケルで掘り出す、という採集方法もあり、この方法は「オサ掘り」と呼ばれる。(曽田, 2000, pp. 5, 7)

参考文献

  • 2000 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬 - 書籍全体, 曽田貞滋(著) 生態系ライブラリー8 オサムシの春夏秋冬. 京都大学学術出版会. .

最終更新日:2020-04-30

種・分類一覧