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ツクツクボウシ(Meimuna opalifera)の分類 セミ科(Cicadidae)
ツクツクボウシ(Meimuna opalifera)の概要 Meimuna

ツクツクボウシ(Meimuna opalifera)

【 学名 】
Meimuna opalifera (Walker, F., 1850)

基本情報

大きさ・重さ

・成虫全長: 41~47 ㎜;前翅の開長 76~85 ㎜
・成虫体長: 26~33 ㎜

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ツクツクボウシ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. 144-145.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

活動時期

成虫出現時期(日本国内):7月後半~10月前半(最盛期は8月後半から9月中旬にかけて)

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ツクツクボウシ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. 144-145.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

分布

北海道、本州、佐渡、能登島、舳倉島、伊豆諸島(大島、新島、式根島、神津島、利島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島)、淡路島、隠岐諸島、四国、九州、筑前沖島、壱岐、対馬、五島列島、男女群島、天草諸島、甑島列島、宇治群島宇治島(家島)、大隅諸島(黒島、硫黄島、馬毛島、種子島、屋久島、口永良部島)、トカラ列島(口之島、中之島、諏訪之瀬島、悪石島、横当島);朝鮮半島、中国、台湾

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ツクツクボウシ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. 144-145.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

人間との関係

夏の後半にツクツクボウシが鳴き出すと、夏休みも残り少なく感じられて、鳴き声も「つくづく惜しい」と聞こえる。

参考文献

  • 宮武頼夫 2008 セミと人間生活との関係, 大阪市立自然史博物館、大阪自然史センター(編) 鳴く虫セレクション. 東海大学出版会. 150.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

形態

成虫の形質

胸背は黒色地に暗緑褐色の紋をもつ。額頭楯はやや膨出し、頭頂と等長。雄腹弁は三角形で、先端は尖り、ときには外方を向くことがある。前翅の第1、2横脈上には暗色紋があり、個体によってはほかの横脈上や各縦脈上(先端部)に現れることがある。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ツクツクボウシ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. 144-145.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

地理的変異

本種にも二三の変異型が記載されているが、いずれも区別する必要のないものである。背面の斑紋には差異がないが、雄腹弁が全体黒色となるものがあり、これはかつて変種 var. nigroventris Kato 1927 とされていた。胸部腹面が黒化する台湾産(亜種 subsp. formosana Kato 1925)をはじめとして、胸部腹面(腹弁をふくむ)や腹部腹面の黒色部が連続的に発達する。

また、前翅脈上の暗色紋が第1、2横脈上だけでなく、翅端付近も現れることがある(型 f. punctata Kato 1932)。前翅がやや長く、雄腹弁の先端が外側を向く特徴だけで区別されたハネナガツクツクボウシは屋久島からも記録されたが、いずれも個体変異に含まれるもので、同じ特徴をもつ個体は本州でも採集される。

(鳴き声)高潮音には2段階が認められるが、屋久島産の個体では第2段階を欠く。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ツクツクボウシ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. 144-145.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

生態

成虫の生息環境

平地から低山地。
サクラ、カキノキほか多くの樹木に生息する。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ツクツクボウシ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. 144-145.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

成虫の天敵

クモ、カマキリ、ヤブキリ、鳥類、タカラダニ、セミヤドリガ、ニクバエ、セミカビ

参考文献

  • 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. pp. 132-133.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

幼虫の天敵

セミタケ

参考文献

  • 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. pp. 132-133.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

発音(鳴き声)

“ジュージュクジュク⋯”という序奏は通常数秒と短いが、休息後初めて鳴くときには長くなる傾向があり、1分以上に及ぶことがある。序奏のあと“オ-シンツクツク”という単位を繰り返した後に単位を“オシオーシ(ツクリーヨーシ)”に変えて数回繰り返した後に後奏で終了するが、屋久島周辺の島(屋久島、口永良部島、黒島、硫黄島)に分布する個体では後半の“オシオーシ(ツクリーヨーシ)”の部分を欠く(青山 1987)。

また、台湾や朝鮮半島産は“オーシンツクツク”の部分から“オシオーシ”の部分に変化する途中で国内産には見られない全く別の音型をはさむため、全体ではさらに複雑な鳴き方をすることが知られている。

そばで仲間が鳴きだすと、それにこたえるように、ジューシュルルルルルというような、5秒くらいで終わる声を出すことがある。これは”あいづち”と呼ばれ、ツクツクボウシは顕著にみられる。”あいづち”には仲間の声を妨害するという説と、合唱の変型であるという説がある。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ツクツクボウシ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. 144-145.
  • 宮武頼夫・市川顕彦・初宿成彦 2008 鳴く虫の基礎知識, 大阪市立自然史博物館、大阪自然史センター(編) 鳴く虫セレクション. 東海大学出版会. 172-180.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

ライフサイクル

卵期は300~350日(1年)ほど。
卵は梅雨期にふ化する。木の上でふ化した幼虫は自発的に地上に落下し、土の隙間から潜り、根から樹液を吸って成長する。幼虫の齢期は5齢まであり、1~4齢の間は、体に見合った太さの根の下に、狭い部屋を作って潜む。4齢の後半になると垂直の坑道を掘り、その中で生活するようになる。終齢になると、夏の夕方に再び地上に現れる。地上を歩き、木に登り、適当な場所で羽化する。

飼育による推定では自然下での幼虫期間は2~3年だと言われている。ただし、アロエなど多肉性植物で飼育すると、幼虫期間が1~2年間と、短縮されることが知られている。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ツクツクボウシ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. 144-145.
  • 宮武頼夫・市川顕彦・初宿成彦 2008 鳴く虫の基礎知識, 大阪市立自然史博物館、大阪自然史センター(編) 鳴く虫セレクション. 東海大学出版会. 172-180.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

活動時間帯

早朝に鳴いた後、とぎれずに鳴き、10時すぎに小さなピークができる。最盛時間は午後で、日没前後がもっともよく鳴く。

参考文献

  • 宮武頼夫・市川顕彦・初宿成彦 2008 鳴く虫の基礎知識, 大阪市立自然史博物館、大阪自然史センター(編) 鳴く虫セレクション. 東海大学出版会. 172-180.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

孵化・脱皮・羽化

適当な場所(幹、枝、葉裏など)へ来ると、あしをしっかり固定し、羽化の準備をする。やがて、頭部から胸部にかけての背が縦に裂け、胸部→頭部→翅→あし→腹部前半の順で殻から出て、その段階でしばらくのあいだ静止する。次に、起き上がってあしで殻につかまり、腹部後半を殻から脱ぐ。翅がのびて屋根型にたたむと羽化は完了する。羽化の所要時間はおよそ1時間である。

参考文献

  • 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. pp. 132-133.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

生殖行動

交尾はV字型で行う。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ツクツクボウシ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. 144-145.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

産卵

桐のような産卵管で木に穴を開けてその中に卵を産む。

参考文献

  • 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. pp. 132-133.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

特徴的な行動

腹部を伸び縮みさせ自在に動かして鳴く姿はほかのセミには見られない本種の顕著な特徴で、この腹部の運動が複雑な鳴き声を生み出している。

参考文献

  • 林正美・税所康正 2015 ツクツクボウシ, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. 144-145.

最終更新日:2020-08-08 ひろりこん

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