- 解説一覧
- ミンミンゼミ(Hyalessa maculaticollis)について
ミンミンゼミ(Hyalessa maculaticollis)
- 【 学名 】
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Hyalessa maculaticollis (Motschulsky, 1866)
目次
基本情報
- 分布
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北海道、奥尻島、本州、飛島、淡島、佐渡、能登島、伊豆諸島(大島、新島、利島)、淡路島、隠岐諸島、四国、九州、対馬、五島列島、天草諸島、甑島列島;朝鮮半島、中国、ロシア極東(アムール)
参考文献
最終更新日:2020-08-08 ひろりこん
- 保全の取り組み
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北海道では、道南には多いが、他地域では分布がきわめて局限され、札幌市周辺と弟子屈町和琴(屈斜路湖和琴半島)だけである。後者は北限の産地ということで国の天然記念物に指定されている。
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形態
- 成虫の形質
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胸背は緑色と黒色部からなり、黒地に緑色斑をもつもの、逆に緑色地に黒色斑をもつものなど、いろいろな段階が連続してみられる。
腹背も黒色から緑褐色まで、さまざまである。中胸背後縁、腹部基部、雄の第3腹背板前縁は白粉で厚くおおわれる。腹部は短く、後方で急に狭まる。前翅各横脈上および各縦脈の先端近くには顕著な暗色版を持つ。雄生殖器の肛鈎(uncus lobe)は1対となったへら状で、左右が接する。
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- 地理的変異
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本種の変異型でもっとも有名なのが、黒色部を欠いて体のほぼ全体が淡緑色(腹面は白色に近い)となる色彩変異型である。変種 var. mikado Kato 1925 と命名され、ミカド型あるいは“ミカドミンミン”という名前で呼ばれている。少数ながら各地で採集されているが、甲府盆地など場所によっては多産することもしられている。
なお、対馬産では、前胸背の暗色紋の入り方や中胸背が全体的に褐色を帯びることなど、本土産とはやや異なる。
本土産は“ミーーン・ミンミンミンミーー”を単位として鳴くが、対馬産はその頭の“ミーーン”の部分を欠く。これは朝鮮半島産と共通する特徴である。
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生態
- 成虫の生息環境
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東日本ではおもに平地に、西日本ではおもに低山地~山地に生息する。
本種が西日本で山地性になる要因はよくわかってないが、1つの要因として、基音が似ていることによるクマゼミとの音響的なすみわけが考えられる。クマゼミとミンミンゼミがともに多産する三浦半島先端近くの城ケ島では概して、前者は台地上部の平坦地が、後者は周辺の斜面がそれぞれの主生息地になっている。
ケヤキ、サクラ、アオギリなどの喬木を好む。対馬では、スギ・ヒノキ植林にも多数みられる。
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- 発音(鳴き声)
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鳴き声は“ミーーン・ミンミンミンミーー”の繰り返しからなるが、この単位を繰り返す回数は地域や個体によって大きく異なり、結果的に鳴き声全体の長さが大きく変化し、一回がおよそ1分から数分におよぶことがある。
通常は一回ごとに終止して移動する。この際“つぶやき”と呼ばれる弱い音を出す。
雄はほかの個体と同調せずに単独で鳴く。鳴いている雄の近くに雌が飛来すると、雄は鳴き声の調子を変えることが知られている。
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- ライフサイクル
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卵期は300~350日(1年)ほど。
8月に産んだ卵は翌年の6~7月にふ化する。木の上でふ化した幼虫は自発的に地上に落下し、土の隙間から潜り、根から樹液を吸って成長する。幼虫期に1齢から5齢(終齢)へと齢をへるごとに脱皮をくりかえしながら大きくなり、5年の幼虫期間をへて、夏の夕方に再び地上に現れる。地上を歩き、木に登り、適当な場所で羽化する。
羽化後5日間くらいで本鳴きをはじめ、交尾・産卵して、2週間~1か月の成虫期間を過ごし、死亡する。
なお、アロエなど多肉性植物で飼育すると、幼虫期間が3年間と、短縮されることが知られている。
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