- 解説一覧
- アオバアリガタハネカクシ(Paederus (Heteropaederus) fuscipes)について
アオバアリガタハネカクシ(Paederus (Heteropaederus) fuscipes)
- 【 学名 】
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Paederus (Heteropaederus) fuscipes Curtis, 1826
目次
基本情報
- 生息状況
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かつては関東や九州でも本種が局地的に多数発生し、多くの被害を出して社会問題になったことがあった。しかし、現在では水田が減ったり河川改修が進んだためか、都市近郊ではめっきり少なくなった。
参考文献
最終更新日:2020-08-22 ひろりこん
- 人間との関係
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水田の害虫を捕食したという記録が古くからあり、農業上では益虫といえる。
本種と同属のアリガタハネカクシ類はすべて有毒とされるが、実際の被害はほとんどが本種によると考えられている。これは、ほかの種類は分布が限られていたり、人と接触する機会が少ないことなどによる。
有毒物質は体液中に含まれるペデリン(Pederin)で、体液が皮膚につくと数時間後にその部分が赤く腫れる。ついで小さな水ぶくれの集合となり、赤いミミズ腫れのような皮膚炎(線状皮膚炎)になる。通常、体液は虫体を払いのけた際に皮膚に付着するが、虫体を刺激しなくても体液は分泌されるという。
被害の多くは本種が灯火に誘引されて室内に侵入したときに起きるが、自転車やオートバイに乗っていて目の中に虫体が入り、目に炎症を起こしたという例も少なくない。ちなみに、本種や本種の同属種による被害は北米を除く世界中から知られている。
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形態
- 成虫の形質
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上翅は藍緑色、胸部と腹部(腹端を除く)は黄赤色、頭部や腹端は黒い。
頭部はほぼ円形、平滑な複眼間の中央を除いて大型点刻が散在する。前胸背板は後方わずかに狭まり、微小点刻を散在する。上翅は長方形で大型点刻を密布し、白色細毛を装う。後翅は完全。
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生態
- 成虫の生息環境
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水田の周囲や湿潤な草地などに棲息する普通種。
本種は主として低地にすみ、山地では同属のエゾアリガタハネカクシ P. parallelus にとってかわられる。
参考文献
- 海野和男 1998 石の上に止まったアオバアリガタハネカクシ, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. p. 102.
最終更新日:2020-08-22 ひろりこん
- ライフサイクル
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年1~3世代をくり返し、卵期間は3~13日、夏がもっとも短い。幼虫期間は平均25日、個体差が大きく、長いものは1齢24日、2齢36日となり、とくに秋の個体は幼虫期間が長い。蛹の期間は早いもので3日、遅い個体は12日で羽化し、平均1週間で成虫となる。成虫は集団で土中越冬し、春3~4月ごろより活動をはじめる。
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- 孵化・脱皮・羽化
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幼虫期間は約3週間。通常は2回目の脱皮で蛹化するが、その場所は土壌中である(地表から 3~4 ㎜のところ)。そして約1週間の蛹期を経て成虫となる。
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関連情報
- その他
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体液中にぺリジン(Pederin)という毒物質を含んでおり、虫をはらいのけるとき、その体液が人の皮膚に付着すると、数時間後にぴりぴりする痛みがおこり、粟粒大紅色小丘疹または小水疱が生じる。全体として線状のミミズ腫れとなり、これを線状皮膚炎と呼んでいる。眼に入ると強い結膜炎・角膜炎をおこし、重症例では角膜腫瘍や虹彩毛様体炎などがおこる。
治療は抗生物質を含んだステロイド軟膏を塗布する。放置すると治癒に2週間以上かかる。
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最終更新日:2020-08-22 ひろりこん