イエバエ(Musca domestica)の解説トップに戻る
イエバエ(Musca domestica)の分類 イエバエ科(Muscidae)
イエバエ(Musca domestica)の概要 Musca

イエバエ(Musca domestica)

【 学名 】
Musca domestica Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

成虫体長:4.0~8.0 ㎜

参考文献

  • 2003 日本のイエバエ科 A Monograph of the Muscidae of Japan - 書籍全体, 篠永哲(著) 日本のイエバエ科 A Monograph of the Muscidae of Japan. 東海大学出版会. .

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

活動時期

成虫出現時期(日本国内):5~9月に多いが、条件がいい場所では一年中繁殖する。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

分布

世界各地

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

生息状況

戦後、下水道の整備や生活環境の改善、種々の殺虫剤の開発などによってイエバエは都市部を中心として減少した。一方、最近では各地で豚舎・鶏舎・牛舎、ゴミ処理場、ビニールハウス内などで大発生して問題になることもある。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

亜種

アジア産のものは欧米産のものと比べ、雄の両複眼間隔が狭いため別亜種 ssp. vicina Macquart とされている。ただし個体変異が大きいため完全に区別はできない。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

人間との関係

世界共通種で、衛生上重要な種。本来、野生動物の糞に発生していたものが人の食物や廃棄物を利用するように適応したと考えられ、屋内侵入性がある。日本では、牛舎・厩舎・豚舎・鶏舎、芥溜め、ゴミ処理場などに多い。

1999~2000年に腸管出血性大腸菌O157がイエバエの体表や排泄物から分離されイエバエがO157の伝播にかかわっている可能性が報告されており、今後も新たな感染症を媒介する潜在能力をもつ衛生上重要種といて注目していく必要がある。

一方で有機廃棄物を分解するすぐれた能力をもち、発育が早く累代飼育が容易なため、特に鶏糞の分解処理とそれによって得られるイエバエ幼虫・蛹をニワトリの餌として供与するという試みがなされている。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

形態

成虫の形質

灰褐色で胸背には4本の黒縦線がある。前胸側板に微毛を有することで他のイエバエ属(Genus Musca)と区別できる。腹背の第2、3節に黄色紋がある。複眼は両性とも離れているが、雄ではその幅がより狭い。腹部腹面は、雌では先端まで黄白色だが、雄では腹面先端近くに黒斑がある。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

地理的変異

暖かい地方のものほど胸背の橙黄部が広いが、個体変異が著しい。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

似ている種 (間違えやすい種)

ノイエバエ M. hervei Villeneuve は本種に似るが、雄の複眼は接し、腹部背板は雌雄ともに黒色であることから区別できる。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

生態

成虫の生息環境

人家内や家畜小屋

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

幼虫の生息環境

堆肥、家畜の寝藁、ごみだめなど

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

幼虫の食性

各種動物の糞、生ごみ、動植物性の腐敗物。特に牛糞では敷き藁などが混じった堆肥に発生し、ブタ、ニワトリでは堆積した糞そのものに発生する。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

ライフサイクル

卵期間は20℃で約1日。20℃、25℃、30℃における幼虫期間はそれぞれ約9日、6.5日、4.5日。同じ温度での蛹期間はそれぞれ約10日、6.5日、4.5日。成虫の寿命は1か月~70日ぐらいで、雌のほうが長生きする。
越冬態は地域によって異なるが、成虫または蛹の場合が多いとされる。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

孵化・脱皮・羽化

土中で蛹化することが多い。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

産卵

好条件では1回に120~150卵を3~4日間隔で6回産む。

参考文献

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

関連情報

その他

殺虫剤の大量使用とともに殺虫剤抵抗性をもつイエバエがたびたび出現している。
第2次世界大戦後のDDTやBHCの使用で、1950年代初めから有機塩素薬剤抵抗性イエバエが問題になった。
次いで1950年代半ばから、ダイアジノン抵抗性を皮切りに有機リン剤抵抗性が問題化した。
1965年には塩素系のDDTやBHCだけでなく、リン系のマラソンやダイアジノンにも抵抗性のあるイエバエなどが東京都夢の島で大量発生した。
塩素剤の使用停止でリン剤が多用されるにつれ、1970年代にはフェニトロチオンやフェチオンなどのリン剤抵抗性が日本各地から報告された。
さらに、ピレスロイド剤の使用量の増加につれ、1980年代以降はピレストロイド剤抵抗性が報告されるようになった。

参考文献

  • 今井長兵衛 1997 イエバエの殺虫剤抵抗性と個体群置換, 日高敏明(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科9:昆虫Ⅱ. 平凡社. p. 153.

最終更新日:2020-08-11 ひろりこん

種・分類一覧