- 解説一覧
- Dorcus hopeiについて
目次
基本情報
- 分類学的位置付け
-
本種は、クルビデンスオオクワガタの亜種として扱われることが多く、分布はお互いに異所的であったが、水沼 (2000) は中国の広西壮族自治区·大瑞山において、1本のアカガシ亜属の木から両方の種が採集された例をもとに、両者を同所的に分布する別種と考えて本種を独立種とした。
参考文献
最終更新日:2020-05-20 瀬戸内味わいにぼし
形態
- 成虫の形質
-
雄は黒色で鈍い光沢がある。
頭部前縁側方には小さい三角形状の突起があり、 複眼後方の側縁は角ばって弱くふくらむ。
大あごは長く、弓状に湾曲し先端の内側には鏃状のふくらんだ部分がある。
中央付近から斜め前方を向いて突出する大きい内歯があり、大型の雄ほど前方に出て斜め前方を向く。
大きな内歯の基部基片寄りから大あごの基部外側にかけては稜線があり、その内側は平たくくぼむ。
前胸背板の前角は丸味をおび、その後方で小さく湾入して、側縁の中央部は小さく尖り、後角もわずかに突出する。
上翅は、中央部から側方にかけて、1~数本のごく弱い条溝がある。
小型の雄と雌は体の光沢が強く、上翅には6~7本の点刻列による浅い条溝があって、側縁部は点刻におおわれる。
基亜種
雄の大あごと体はやや幅広く、頭部前縁側方の三角形状の突起は鋭くとがり、大あごの内歯はより前方を向き、背面から見て大あごの本体と重なってくる個体も出現する。
亜種 binodulosus
雄の大あごと体は原名亜種に比べてやや細長く、 頭部前線側方の三角形状の突起は原名亜種ほど鋭く尖らず、大あごの内歯は、背面から見て大あごの本体と重なるほど前方を向かない。
朝鮮半島北部の個体群は全体に小さく、特大の個体でも 70 mmを超えない。
日本産の個体群は北方の寒冷地では大あごと体がやや細長く、南方の温暖な地では大あごと体がやや幅広くなる傾向があるが、個体変異も多い。
参考文献
最終更新日:2020-05-20 瀬戸内味わいにぼし
- 幼体の形質
-
幼虫の頭部は赤味が強く、頭骸の1対の毛穴は互いに離れ、さらにその上部を小さな毛穴がアーチ状に囲む。
体色は乳白色で、腹節末端の毛群はY字状だが、平行部はごく短く幅広い。
参考文献
最終更新日:2020-05-20 瀬戸内味わいにぼし
生態
- ライフサイクル
-
夏から秋にかけて孵化した1齢幼虫は、腐朽材を食べて初冬までに2~3齢に成長し、1回目の越冬をする(越冬幼虫の齢は産卵時期によって異なるため、秋遅くに孵化したものなど1齢幼虫で越冬することもある)。
再び摂食活動を始めた幼虫は、3齢幼虫で2回目の冬を越し、孵化から2年目の夏に材内に蛹室を作って蛹化し、蛹期間約3週間をへて羽化する。
羽化した新成虫は、このまま蛹室にとどまって3回目の冬を越し、羽化から3年目の初夏に材外に脱出し、活動を開始する。
成虫寿命は長く、活動後に越冬する個体も少なくない。
冬季はクヌギやブナなどの広葉樹の倒木や立ち枯れに、幼虫と成虫が見られる。
参考文献
最終更新日:2020-05-20 瀬戸内味わいにぼし
- 生殖行動
-
雑木林においては、クヌギ、アベマキ、カシ類 (以上ブナ科)、 ヤナギ類(ヤナギ科)など、樹液を分泌する大木の洞や樹皮下の空洞部などを縄張りとして占有し、やがて訪れる雌と交尾を行う。
交尾形態は雄が雌の横に並んで交尾器を挿入するV字型である。
参考文献
最終更新日:2020-05-20 瀬戸内味わいにぼし
- 産卵
-
交尾を終えた雌は、大木の立ち枯れ上部や生木の腐朽部などに飛来し、坑道を掘って、その内壁に産卵孔をあけて産卵する。
産卵材は白色腐朽で、雌は、雑木林ではカワラタケやニクウスバタケによって朽ちたクヌギ(ブナ科)やエノキ(ニレ科)の立ち枯れ、ブナ林ではツリガネタケなどによって朽ちたブナ(ブナ科)の立ち枯れに好んで産卵する。
通常雌は、水分含有量の多い腐朽材には産卵しないため、接地材や根部などから幼虫が見つかることはほとんどない。
参考文献
最終更新日:2020-05-20 瀬戸内味わいにぼし