- 解説一覧
- セミ上科(Cicadoidea)について
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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成虫全長:9〜120 mm
卵の大きさ:約 2.1 mm (アブラゼミ)
参考文献
- 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. p. 132.
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 22.
最終更新日:2020-06-18 鍋
- 活動時期
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主として3月〜11月の間 (種によって異なる)
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 20.
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- 分布
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熱帯や亜熱帯に多くの種が分布。
参考文献
- 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. p. 132.
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- 分類学的位置付け
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昆虫綱 カメムシ目 頸口亜目 セミ型下目 セミ上科
世界に2科約2000種が知られており、ムカシゼミ科とセミ科に分類される。ムカシゼミ科にはオーストラリアに分布する2種のみが含まれ、一般的に「セミ」というとセミ科を指す。
参考文献
- 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. p. 132.
- 林正美 2015 分類, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 10.
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- 人間との関係
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イワサキクサゼミはサトウキビの害虫とされた。
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 18.
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形態
- 成虫の形質
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頭部にある単眼は3個で、三角形上に並ぶ。中胸背は大きく発達し、後方の小楯板はX隆起と言われる。翅は一様に膜質で、透明なものが多く、一部の種は赤、緑、黄、橙、茶などの色彩を持つ。前翅に対して後翅は明らかに短い。雄の腹部第1〜2節は発音器となっており、発音筋、発音膜、腹腔内の共鳴室によって大きな声を出す。腹部第2節には1対の聴器 (耳) がある。雌の産卵管は太く頑丈で、ノコギリのようなギザギザがある。
口器は吸収性の口吻となり、大顎と小顎からなる口針とそれを取り囲むガイド役の下唇から構成される。
参考文献
- 林正美 1996 セミ科 (日本産同翅類科名表), 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. p. 150.
- 林正美 2015 セミの体制 (形態), 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 15.
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- 幼体の形質
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前脚は太く、土を掘るのに適した形になっている。光の届かない地中生活に特化した2齢から4齢の間は機能的な目を持たないが、終齢である5齢になるとはっきりとした複眼が形成され光に対して感受性を持つようになる。前脚跗節も齢期によって変化し、地上部で活動 (歩行) する1齢と5齢では顕著であるが、地中生活のみを送る2〜4齢期においては跗節は退化し、脛節先端付近の内側にこぶ状に認められる程度である。また、5齢幼虫の表皮はそれまでの齢の白く柔軟なクチクラとは異なり、硬く褐色となる。
参考文献
- 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. p. 133.
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 23.
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- 卵の形質
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卵は細長い米粒状の形をしており、前の方がやや鋭角にとがっている。卵殻はほぼ透明であり、産卵直後の卵は中の卵黄が透けて乳白色をしている。
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 22.
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生態
- 成虫の生息環境
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多くの種は樹木に生息するが、一部草に住むものがあり、東南アジアに広く分布するクサゼミ類は主としてイネ科草本に寄生する。
参考文献
- 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. p. 132.
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- 幼虫の生息環境
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地中
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 23.
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- 成虫の食性
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植物の樹液 (導管液) を吸う。一般に広い範囲の植物の樹液を吸うことができるが、種ごとに好みの樹種がある。クマゼミはセンダンやホルトノキに多数集合して摂食している。サクラやケヤキは平地性のセミに広く好まれている。一方で、ハルゼミのように寄主範囲が狭く、マツ林でしか生息できない種もいる。
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 20.
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- 幼虫の食性
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成虫同様、植物の樹液 (導管液) を吸う。
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 20.
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- 成虫の天敵
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セミの捕食者は脊椎動物から無脊椎動物まで様々な生物が知られている。
クモ、カマキリ、ヤブキリ、鳥類などに捕食されるほか、タカラダニやセミヤドリガ、ニクバエなどに寄生される。またセミカビに感染することもある。
参考文献
- 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. p. 133.
- 林田直哉 2015 Ⅱ 天敵, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 24.
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- 幼虫の天敵
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羽化のため地上に出たセミの幼虫をヒキガエルが捕食することが知られているほか、アリは地中に潜る前のセミの1齢幼虫を頻繁に捕食する。また、冬虫夏草菌が寄生することもある。
参考文献
- 林田直哉 2015 Ⅱ 天敵, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. pp. 25-26.
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- 発音(鳴き声)
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雄のみが鳴くが、羽化後すぐには鳴くことができず、正しい発音ができるようになるまでは数日かかる。鳴き方には以下のような種類があり、それぞれ異なる役割を持つと考えられる。
・主鳴音
配偶行動のために雄が雌を誘うための鳴き声で、通常セミの鳴き声といえばこれを指し、種独自の周波数やリズムとパターンを持つ。
・交尾誘導音 (誘い鳴き)
セミの種類によっては、近くに雌が飛来したことに気づいたときに鳴き声の調子を変化させるものがある。このように接近した雌を交尾に誘うために主鳴音と変化させて鳴く声は交尾誘導音と呼ばれる。
・休息音
休息中や夜間などに「ギギッ!」「ジーッ!」等と突然一声二声鳴く声。アブラゼミに顕著であるが、ヒグラシやハルゼミ等にも聞かれる。このような鳴き声を出す理由は未解明である。
・呼び交わし音
あちらこちらにとまっているセミどうしが「ギッ!」「ギッ!」「ギッ!」と互いに呼び交わすように鳴くことがある。アブラゼミでしばしば観察される。
・合の手
近くで鳴く同種の雄の鳴き声に合の手を入れるように鳴く声。ツクツクボウシ、ミンミンゼミ等で聞かれる。他の雄の鳴き声を妨害するという説と、合唱の変形であるという説がある。
・悲鳴音
危害が加えられたり、危険を感じて逃げる時の鳴き声。基音に近い音で、腹弁との隙間を広げてボリュームアップする。
参考文献
- 税所康正 2015 Ⅲ 鳴き声の種類・分類, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. pp. 28-29.
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- ライフサイクル
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不完全変態の昆虫である。幼虫が地中で長い時間をかけて成長することがよく知られている。木の上で孵化した幼虫は自発的に地上に落下し、土の中で1齢から5齢 (終齢) へと齢を経るごとに脱皮を繰り返しながら大きくなり、何年かたった夏の夕方に再び地上に現れて羽化する。
日本のセミの場合、卵期には1〜2ヶ月タイプと300〜350日タイプがある。ニイニイゼミ、ヒグラシ、ハルゼミは前者のタイプで、アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、エゾゼミ、ツクツクボウシなどが後者である。
北アメリカに広く分布する周期ゼミは種によって集団ごとの幼虫の成長期間が同調しており、決まって13年後または17年後に羽化する。
一般的に成虫の寿命が非常に短いと認識されているが、実際はそれほど短いわけでもなく、条件がよければ2週間から1ヶ月半は生存できるとされる。
参考文献
- 林正美 1996 セミ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. p. 133.
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 22.
最終更新日:2020-06-18 鍋
- 活動時間帯
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鳴く時間帯は種によっておおよそ決まっており、クマゼミは午前中、アブラゼミは午後〜夕方、ヒグラシは早朝と夕方の薄明の頃によく鳴く。しかし、多くのセミでは、鳴く時間帯は絶対的なものではなく天候や他種との関係あるいは生息密度によって大きく変化する。照度が鳴く時間を決める一つの重要な要素であるとされているが、鳴く時間が体内時計に従うと考えられているセミも知られ、沖縄のクロイワゼミや太平洋諸島に分布する数種では、明るさに必ずしも関係なく1日の中で鳴く時間帯が決まっている。
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. pp. 20-21.
最終更新日:2020-06-18 鍋
- 孵化・脱皮・羽化
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孵化は雨によって引き起こされる。幼虫は湿度の上昇を感知して孵化行動を開始する。まず、前幼と呼ばれる状態で卵殻から抜け出る。前幼では全身が透明な膜に包まれており、まだ脚が自由に動かせない。イモムシのように体全体を蠕動させて前進し、産卵孔の出口に到達した前幼は頭部から透明な膜を脱いで、ようやく触覚や6本の足を備えた1齢幼虫になる。出てきた幼虫は産卵孔付近で1〜2分静止した後、地面に落ちて土の割れ目や小さな隙間を探して、そこから地中に潜る。
羽化を控えた終齢幼虫は地表近くの太い根につくことが多くなり、アブラゼミやツクツクボウシなどでは地上に向かって掘られた細長い坑道型の部屋で生活することが知られている。羽化の準備が整った幼虫は地表付近で待機し、暗くなるのを待って地上に現れ、木の幹などに登り羽化を行う。幼虫は羽化に適した足場を見つけ、そこで静止して脱皮に備える。まず、幼虫の頭部・胸部の背面が正中線に沿って裂開し、成虫の胸部。頭部、脚、翅が順に出る。腹端部を殻に残したまま反り返り、その状態で足が固まるまでしばらく静止する。その後、体を起こして脱皮殻を新たな足場として掴まり、腹部を抜いて、翅を完全に伸展させ、最終的には両翅を屋根形に畳んで羽化が完了する。脱皮直後の体は柔らかく白色をしているが、時間の経過とともに硬化し、その種固有の色彩・斑紋が現れる。脱皮に要する時間は温度や湿度などに左右されるが、概して45分から1時間半ほどである。
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 18.
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 23.
最終更新日:2020-06-18 鍋
- 生殖行動
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セミの配偶行動は、樹上で本鳴きをする雄に雌が誘引されることで始まる。沖縄本島南部でのイワサキクサゼミの配偶行動の観察によれば、サトウキビの葉上で本鳴きをする雄に雌が誘引され、雄から 40 cm ほど離れたところに飛来して止まったのち、雄に自分の存在を認識されるまでさらに歩いて雄に接近する。雄は雌が 20〜30 cm の距離まで接近したときに雌を認識して鳴き方を本鳴きから誘い鳴きに変える。雄の鳴き方が変わると雌は静止し、次に雄が誘い鳴きをしながら近づいてくるのを待つ。静止している雌に近づいた雄は主に右前脚で雌の前翅の先端を軽く叩く。軽く数回叩いて雌が逃げなければ、雄は雌の体に乗り、交尾に至る。
多くのセミは雄と雌が腹部末端にある生殖器を接合させ「V字型」に並んで交尾を行うが、ニイニイゼミ類やヒグラシなどでは雄と雌が反対を向いた「反向型」で交尾する (V字型交尾も稀に観察される) 。交尾状態は10〜30分ほど維持される。
参考文献
- 岩井洋一 1996 セミ類の配偶行動, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科8:昆虫Ⅰ. 平凡社. p. 134.
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 21.
最終更新日:2020-06-18 鍋
- 産卵
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交尾を終えた雌は植物に錐のような産卵管で穴を開けて、そこに産卵する。国内の多くのセミは木についたままの枯れ枝や樹皮など、植物の枯死した組織に産卵する。産卵前には枝に口吻を挿す行動がしばしば観察され、枯れ枝かどうかを確認していると考えられる。産卵の際には、腹部末端にある産卵管を組織に突き立て、産卵管全体を左右にひねる動きと、中心片と側片を交互に押し出す動きを組み合わせて巧みに穴を開けていく。産卵管が根元まで入ると、今度は産卵管を引き抜きながら卵を挿入していく。1孔の産卵が終わると数歩移動して立て続けに次の産卵に取り掛かる。1孔の卵数は種によって異なっており、アブラゼミでは2個前後、ニイニイゼミで4〜6個、クマゼミでは10〜14個の卵が2列で挿入されている。メス1匹あたりの総産卵数は300〜800個と言われている。
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. pp. 21-22.
最終更新日:2020-06-18 鍋
- 特徴的な行動
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種の性質や生息密度にもよるが、同じ場所で1回から数回鳴いた後に他の木へと飛び立つ「鳴き移り」がしばしば見られる。鳴き移りは個体数がまだ多くない出現初期に頻繁に見られることがある。
余剰な水分を尿のように排泄する。体温をなるべく理想的な温度付近に保つために、気温が低いときは日向へ移動し体温を上昇させたり、胸部の筋肉を動かして発熱したりする。逆に気温の高いときには日陰の涼しいところに移動する。
幼虫は根の脇に小部屋 (幼虫室) を作り、そこに定着して根から導管液を吸って成長する。室の内壁は常に湿った状態に保たれており、幼虫は成長に伴って空間を拡張したり、より太い根へと移動したりする。
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 20.
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 21.
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 23.
最終更新日:2020-06-18 鍋
- その他生態
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胸部や腹部のクチクラに微小な孔があいており、そこから人間の汗のように水分を蒸発させることによって体温を下げることが海外のセミにおいて報告されている。
参考文献
- 森山実 2015 Ⅰ 生態一般, 林正美、税所康正(著) 改訂版 日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図. 誠文堂新光社. p. 21.
最終更新日:2020-06-18 鍋