- 解説一覧
- ヒメスズメバチ(Vespa ducalis)について
目次
基本情報
- 亜種
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・原名亜種 V. d. ducalis (Smith, 1852)
中国・インド東北部・ネパール・ミャンマー・ロシア沿海州・朝鮮半島に分布。
・日本本土亜種 V. d. pulchra (Buysson, 1905)
本州・四国・九州および周辺の島嶼に分布。
・対馬亜種 V. d. esakii (Sonan, 193)
対馬に分布。腹部末端節が黒色ではなく、他のスズメバチ同様に黄色となっており、腹部全体的にも黒色の部分が減退している。通称ツシマヒメスズメバチ。
・琉球亜種 V. d. loochooensis (Bequaert, 1936)
石垣島・西表島に分布。全体的に黄色部が発達しており、腹部の黄色部および頭部は本土亜種より明るい黄色になる。腹部前半部の第2節の黒い帯が欠如しているが、腹部後半 (尾端から3節分) は常に完全な黒色となる。また、前胸背板や後胸背板に褐色部が発達している。通称リュウキュウヒメスズメバチ。
ほかベトナムに1亜種が産する。
参考文献
最終更新日:2020-05-01 鍋
- 分類学的位置付け
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昆虫綱 ハチ目 スズメバチ科 スズメバチ属 ヒメスズメバチ
本土産ヒメスズメバチ V. d. pulchra はかつて原名亜種 ducalis とともにネッタイヒメスズメバチ Vespa tropica の1亜種とされ、学名は Vespa tropica pulchra だったが、その後の分類学的な研究により、ducalis は亜種から独立種に昇格し、それに伴って同種と見なせるが亜種程度の違いがある pulchra が ducalis の亜種へと移された。
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形態
- 成虫の形質
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オオスズメバチに次ぐ大型種だが体は細長く、女王バチ、働きバチ、オスバチの大きさの差があまりないことが特徴。腹部先端部が真っ黒 (対馬産を除く) であることから、他のスズメバチと容易に区別できる。腹部の斑紋には個体変異があり、黒化の程度が強いものから、綺麗な黄色と赤と黒の縞模様になるものまで変異する。また雄では、前胸背板や中胸背板に黄色部分が発達する傾向にある。
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生態
- 成虫の食性
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アシナガバチ類をもっぱら好んで狩りの対象にするが、成虫は狩りの対象ではなく、幼虫や蛹を獲物にし、巣にいるアシナガバチ成虫そのものを殺したり激しく攻撃することはあまりない。肉団子は作らない。樹液や花の蜜にも集まる。
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- ライフサイクル
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短期営巣型で、越冬女王の活動開始時期はスズメバチの中では最も遅く、また営巣期間はもっとも短い。女王バチは6月上・中旬に巣を創設する。働きバチは7月より羽化し、8〜10月には10〜50頭となる。オスと新女王は8〜9月に羽化・交尾し、新女王のみが成虫で越冬する。
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- その他生態
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巣は下部開放型で釣鐘状、模様は波型。営巣規模は日本産のスズメバチ中で最も小さく、育房数は 200〜300 (800 を超える例も知られている)。
毒性はあまり強くなく、毒量も日本産スズメバチの中で最少である。
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