- 解説一覧
- ミカドアゲハ(Graphium doson)について
目次
基本情報
- 亜種
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・日本本土亜種 G. d. albidum (Wileman, 1903)
…後翅裏面中央帯外側の斑紋が橙黄色のものと、赤色のものがあり、前者を黄斑型、後者を赤斑型と呼ぶ。九州産は全て黄斑型、四国では両型を混産し、対馬産、紀伊半島産は全て赤斑型である。屋久島産は後翅外縁の白色縁毛が著しく目立つものが多い。
・沖縄・八重山亜種 G. d. perillus (Fruhstorfer, 1908)
…雄の斑紋が奄美大島以北のものに比べて強い青緑色を帯びる。稀に黄白色型も出現する。
そのほか、対馬産はやや小型で前翅およびその中央白帯が幅広く、後翅裏面の赤斑は本土産よりも発達が悪いため、tsushimanum Fujioka, 1981 という亜種名が用いられることもある。
参考文献
最終更新日:2020-05-06 鍋
- 分類学的位置付け
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昆虫綱 (Insecta) チョウ目 (Lepidoptera) アゲハチョウ科 (Papilionidae) アゲハチョウ亜科 (Papilioninae) アオスジアゲハ族 (Graphiini) アオスジアゲハ属 (Graphium) ミカドアゲハ (Graphium doson)
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形態
- 成虫の形質
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大型で、翅形は細長い。表は黒色で、中央に淡青緑色 (あるいは黄白色) の帯が目立つ。裏も同様だが、後翅の外中央と基部に赤色〜橙黄色の斑がある。中央の青緑色 (黄白色) 帯は春型では幅広いが、夏型ではそれより狭い。
アオスジアゲハと似ているが、本種には前翅表裏の亜外縁および前縁に斑点列があるのに対し、アオスジアゲハにはないことで区別できる。
翅形、色彩斑紋は雌雄でほぼ同じであり、雌雄の判別は野外では困難だが、オスでは後翅内縁部が上に反り返って袋状に膨らむことで区別される。
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- 蛹の形質
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蛹は多くは緑色で、稀に褐色のものもいる。中胸背面突起が体軸に対して鋭角をなして前方に突出する。アオスジアゲハではこの突起が体軸とほぼ直角になるので、その点で区別される。
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- 幼体の形質
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終齢幼虫の体色は緑色。後胸部背側に円錐状の突起が2つあり、突起の表面には中心が黒色の黄色眼状紋をあらわす。アオスジアゲハに似ているが、前述の突起を結ぶ黄色条がない (アオスジアゲハでは顕著) ことで区別される。3齢幼虫はビロードのような黒褐色をしている。
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生態
- ライフサイクル
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発生回数は九州北部では最大年3化で、第1化 (春型) はふつう5月上旬ごろから、第2化 (夏型) は6月下旬ごろから、第3化は8月上旬ごろから発生する。しかし全てがこれに従うわけではなく、第2化を生ずべき蛹がそのまま越冬し翌春に羽化するケースが頻繁に見られる。また、第2化を生ずべき蛹が2ヶ月以上休眠して8〜9月に羽化する場合もある。春季にはあらゆる経過のものがほとんど全部一斉に羽化すると考えられ、1年のうち春季に最も多くの個体数が見られる。蛹で越冬し、2冬越した記録もある。
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