- 解説一覧
- クロアゲハ(Papilio protenor)について
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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・成虫開張:春型は 90 ㎜前後、夏型 110 ㎜前後
・終齢幼虫体長: 55 ㎜ほど
参考文献
- 2012 昆虫好きの生態観察図鑑Ⅰ チョウ・ガ - 書籍全体, 鈴木欣司、鈴木悦子(著) 昆虫好きの生態観察図鑑Ⅰ チョウ・ガ. 緑書房. .
- 2011 庭のイモムシケムシ - 書籍全体, みんなで作る日本産蛾類図鑑(編) 庭のイモムシケムシ. 東京堂出版. .
最終更新日:2020-05-20 ひろりこん
- 活動時期
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低地では通常年3回の発生する。4月下旬より姿を見せ始め、夏型は7~8月に出現し9月中旬頃終息する。
九州南部では3~4回発生。
南西諸島では4~5回発生と考えられるが通年で成虫が見られる。
本州の中標高地では2化。
参考文献
- 矢田修 2007 クロアゲハ, 矢田修(監修) 新訂 原色昆虫大図鑑 第 I 巻(蝶・蛾 篇). 北隆館. 10.
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- 分布
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本州、四国、九州、南西諸島(東北地方北部では稀)。
国外ではチベット地方、インド北部、ミャンマー北部、ラオス、中国南部、朝鮮半島南部、台湾。
参考文献
- 矢田修 2007 クロアゲハ, 矢田修(監修) 新訂 原色昆虫大図鑑 第 I 巻(蝶・蛾 篇). 北隆館. 10.
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- 生息状況
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都市部でもふつうに見られる。
参考文献
- 日本蝶類保全協会 2019 クロアゲハ, 日本蝶類保全学会(編) フィールドガイド日本の蝶 増補改訂版. 誠文堂新光社. 62.
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- 学名の解説
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属の学名 papilio は「チョウ(蝶)」を意味する。
種小名 protenor の語源は、 Perseus の結婚式における神人である、神話の Prothoenor に因むと思われる。
参考文献
- 1987 蝶の学名 - 書籍全体, 平嶋義宏(著) 蝶の学名. 九州大学出版会. .
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- 亜種
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5亜種に分けられている。
・名義タイプ亜種:インド北部~中国大陸産に産する。
・日本本土亜種 demetrius Stoll, 1782
・沖縄・八重山亜種 liukiuensis Fruhstorfer, 1899:日本本土亜種に比べて尾状突起が短く赤紋の発達が非常にいい。
・台湾亜種 amaura Jordan, 1909
・インド亜種 euprotenor Fruhstorfer, 1908
台湾亜種とインド亜種はそれぞれ前翅裏面斑紋および後翅表鱗粉の相違から亜種とされているが、名義タイプ亜種の変異を記載した可能性が示唆されている。
参考文献
- 矢田修 2007 クロアゲハ, 矢田修(監修) 新訂 原色昆虫大図鑑 第 I 巻(蝶・蛾 篇). 北隆館. 10.
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形態
- 成虫の形質
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尾状突起がオナガアゲハに比べて太短く先端は曲がらない。
雄は翅全体が黒色で、後翅表前縁に黄白色の鮮明な横帯がある。
雌の前肢の地色は淡く、翅脈が黒く目立ち、後翅外縁の半月状赤斑は雄よりも発達する。
第2化以降の夏型は春型に比べ大型。夏型雌は後翅亜外縁の赤斑が顕著に発達する。
参考文献
- 矢田修 2007 クロアゲハ, 矢田修(監修) 新訂 原色昆虫大図鑑 第 I 巻(蝶・蛾 篇). 北隆館. 10.
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- 幼体の形質
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1齢幼虫は顕著な刺毛や突起を有する。
2~4齢幼虫は鳥糞状で中脈上に吐糸して葉柄のほうに頭を向けて静止していることが多い。腹節第2~4節の白紋が第4節背面で相接し、腹節7~9節の白紋に黒褐色部が含まれる。
5齢幼虫は青みを帯びた濃緑色。胸脚の付け根はうす茶色だが、腹脚の付け根は白い。驚かせたときにのばす臭角は紅色。
参考文献
- 矢田修 2007 クロアゲハ, 矢田修(監修) 新訂 原色昆虫大図鑑 第 I 巻(蝶・蛾 篇). 北隆館. 10.
- 2011 庭のイモムシケムシ - 書籍全体, みんなで作る日本産蛾類図鑑(編) 庭のイモムシケムシ. 東京堂出版. .
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- 地理的変異
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暖地産雌の赤斑列は発達する傾向にある。
また、台湾や中国大陸では無尾型のみとなる。無尾型は日本では八重山諸島を中心に記録があり、まれに日本本土でも記録されている。
参考文献
- 福田晴夫 2009 チョウ, 福田晴夫、山下秋厚、福田輝彦、江平憲治、二町一成、大坪修一、中峯浩司、塚田拓(著) 増補改訂版 昆虫の図鑑 採集と標本の作り方. 南方新社. pp. 14-57.
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生態
- 成虫の生息環境
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平地~低山地の森林。都市部の公園や人家、農地、森林などに幅広く見られ、樹木が茂ったやや日当たりの悪い場所を好む。
参考文献
- 日本蝶類保全協会 2019 クロアゲハ, 日本蝶類保全学会(編) フィールドガイド日本の蝶 増補改訂版. 誠文堂新光社. 62.
最終更新日:2020-05-20 ひろりこん
- 幼虫の生息環境
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幼虫は常に葉表で活動する。
参考文献
- 矢田修 2007 クロアゲハ, 矢田修(監修) 新訂 原色昆虫大図鑑 第 I 巻(蝶・蛾 篇). 北隆館. 10.
最終更新日:2020-05-20 ひろりこん
- 成虫の食性
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吸蜜植物はツツジ類、シャリンバイ、トベラ、タニウツボ、ネムノキ、オニユリ、ヒガンバナ、ヤブガラシ、クサギ、スイカズラ、ザクロなどである。
参考文献
- 矢田修 2007 クロアゲハ, 矢田修(監修) 新訂 原色昆虫大図鑑 第 I 巻(蝶・蛾 篇). 北隆館. 10.
最終更新日:2020-05-20 ひろりこん
- 幼虫の食性
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ミカン科植物を広汎に利用する。自然状態ではカラスザンショウが最も普通に利用される。その他イヌザンショウ、テリハザンショウ、ツルザンショウ、サンショウ、アハナセンダン、ミヤマシキミ、リュウキュウヤマシキミ、サルカケミカンなどが食草として記録されている。栽培種のダイダイ、ユズ、カラタチ、キンカンなども食べる。
参考文献
- 矢田修 2007 クロアゲハ, 矢田修(監修) 新訂 原色昆虫大図鑑 第 I 巻(蝶・蛾 篇). 北隆館. 10.
最終更新日:2020-05-20 ひろりこん
- ライフサイクル
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蛹で越冬する。
参考文献
- 矢田修 2007 クロアゲハ, 矢田修(監修) 新訂 原色昆虫大図鑑 第 I 巻(蝶・蛾 篇). 北隆館. 10.
最終更新日:2020-05-20 ひろりこん
- 活動時間帯
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日中
参考文献
- 日本蝶類保全協会 2019 クロアゲハ, 日本蝶類保全学会(編) フィールドガイド日本の蝶 増補改訂版. 誠文堂新光社. 62.
最終更新日:2020-05-20 ひろりこん
- 生殖行動
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食樹(産卵植物)のカラスザンショウのそばに翅やモデルを置き、雄の反応を調べる実験が行われている。
黒い翅のクロアゲハと黒い翅に白い紋を持つモンキアゲハの雄は、夏には10時ごろから夕方4時ごろまで雌を探して林のなかを飛んでいる。
しかし、クロアゲハもモンキアゲハも視覚的に雌雄を区別することができず、雄の翅にも雌の翅にもよく接近し前あしでふれる。モンキアゲハは紋を隠した翅にも近づくので、白い紋は、オスがメスを探すときには何の役にも立っていないと考えられる。
また、クロアゲハはモンキアゲハに、モンキアゲハはクロアゲハに接近し、ごく近くまで寄っていく。さらに、両種とも、ポスターカラーで黒く塗った紙モデルに接近し、ごくそばまで寄ってくる。つまり、黒い色という視覚的な刺激が重要なのである。
だが、近寄った雄は生きている雌にだけ交尾行動をとり、それ以外のものであれば飛び去ってしまう。おそらく、雄はごくそばに寄ったときににおいを感知するか、前あしで翅に触れた際に化学物質を感知し、同種の雌を識別するのだろう。
参考文献
- 山下恵子 1997 アゲハチョウ類の配偶行動, 日高敏明(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科9:昆虫Ⅱ. 平凡社. 32.
最終更新日:2020-05-20 ひろりこん
- 産卵
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卵は葉裏に1卵ずつ産付される。葉表や若い茎などにも産卵される。産卵部位は日陰の低い位置が好まれる。
雌成虫の前肢には「葉の味」を感じる感覚毛が生えていて、これで食草特有の化学成分を感じている。前肢で葉をたたくドラミングは、食草以外の葉の上でも頻繁に行われ、かなり試行錯誤的に食草を探り当てていると思われる。
食草であるミカンやカラタチの葉に含まれる産卵刺激成分はアルコールで容易に抽出でき、雌はこの抽出エキスをしみこませたろ紙にもためらうことなく産卵する。
ナミアゲハ、クロアゲハ、ジャコウアゲハなどで奇主植物に含まれる産卵刺激物質が明らかにされているが、いずれもアルカロイド、フラボノイド、糖類など複数の化合物が関与しており、その複合作用によって産卵が誘導されることがわかっている。
参考文献
- 矢田修 2007 クロアゲハ, 矢田修(監修) 新訂 原色昆虫大図鑑 第 I 巻(蝶・蛾 篇). 北隆館. 10.
- 西田律夫 1997 産卵行動, 日高敏明(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科9:昆虫Ⅱ. 平凡社. pp. 31-33.
最終更新日:2020-05-20 ひろりこん
- 特徴的な行動
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雄はチョウ道を形成し、同じ場所を巡回するほか、路上や河原で吸水する。
アゲハ(ナミアゲハ)よりもやや暗い場所を好んで飛翔する。
参考文献
- 日本蝶類保全協会 2019 クロアゲハ, 日本蝶類保全学会(編) フィールドガイド日本の蝶 増補改訂版. 誠文堂新光社. 62.
最終更新日:2020-05-20 ひろりこん