アゲハ(Papilio xuthus)の解説トップに戻る
アゲハ(Papilio xuthus)の分類 Papilionidae
アゲハ(Papilio xuthus)の概要 Papilio

アゲハ(Papilio xuthus)

【 学名 】
Papilio xuthus Linnaeus, 1767

基本情報

大きさ・重さ

開長:68〜96 mm
幼虫体長:約 55 mm (終齢)

参考文献

  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 6.
  • 安田守 2010 アゲハ (ナミアゲハ) , 安田守(著) 高橋真弓、中島秀雄(監修) いもむしハンドブック. 文一総合出版. 16.

最終更新日:2020-05-01

活動時期

4〜10月

参考文献

  • 長谷川大・永幡嘉之・中村康弘・須田真一・矢後勝也 2019 アゲハ キアゲハ, 日本チョウ類保全協会(編) フィールドガイド 増補改訂版 日本のチョウ. 誠文堂新光社. 67.

最終更新日:2020-05-01

分布

北海道・本州・四国・九州・南西諸島・小笠原諸島。国外では朝鮮半島・中国・ロシア南東部・台湾・ミャンマー北部・ルソン島・グアム島に分布。

参考文献

  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 6.

最終更新日:2020-05-01

亜種

以下の4亜種に分けられる。
・原名亜種 P. x. xuthus (Linnaeus, 1767) … 日本に分布。
・台湾亜種 P. x. kokinga (Fruhstorfer, 1908)
・チベット亜種 P. x. neoxanthus (Fruhstorfer, 1908)
・アムール亜種 P. x. xanthus (Bremer, 1861)

参考文献

  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 7.

最終更新日:2020-05-01

別名・流通名・方言名

ナミアゲハ

参考文献

最終更新日:2020-05-01

分類学的位置付け

昆虫綱 (Insecta) チョウ目 (Lepidoptera) アゲハチョウ科 (Papilionidae) アゲハチョウ亜科 (Papilioninae) アゲハチョウ族 (Papilionini) アゲハチョウ属 (Papilio) アゲハ (Papilio xuthus)

参考文献

  • 白水隆 2006 アゲハチョウ科の分岐図, 白水隆(著) 日本産蝶類標準図鑑. 学習研究社. 13.

最終更新日:2020-05-01

人間との関係

食草となるミカン類が人家の庭に植えられることが多いため、我々が最も親しみのあるアゲハチョウの代表と言える。

参考文献

  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 7.

最終更新日:2020-05-01

形態

成虫の形質

大型のチョウ。表は黄白色〜黄色で、翅脈に沿って黒色の模様が見られ、後翅には、亜外縁に青色の斑紋列や肛角部に橙〜赤色の斑紋がある。裏もほぼ同様。キアゲハに似るが、本種の前翅基部はキアゲハのように黒色部で埋められることはなく、地色が薄い傾向になる。
顕著な季節型を示す。春に生じる個体、すなわち春型は、小型で外縁の黒帯の幅は狭く、また後翅前縁中央の黒色斑は全く、あるいはほとんどない。一方、夏に生じる個体、すなわち夏型は、大型で外縁の黒帯の幅は広く、雄では後翅前縁中央に鮮明な黒色斑がある。
雌雄の違いに関しては、春型ではほとんど認められないが、夏型では雄は全体的に白みが強く、後翅前縁中央部に明瞭な黒斑があり、後翅肛角部の橙色斑は消失して地色と同じ黄白色になる、という点で異なる。

参考文献

  • 長谷川大・永幡嘉之・中村康弘・須田真一・矢後勝也 2019 アゲハ キアゲハ, 日本チョウ類保全協会(編) フィールドガイド 増補改訂版 日本のチョウ. 誠文堂新光社. 67.
  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 6~7.

最終更新日:2020-05-01

蛹の形質

緑色型と褐色型がある。キアゲハよりも中胸背面の突起が長い。

参考文献

  • 安田守 2010 アゲハ (ナミアゲハ) , 安田守(著) 高橋真弓、中島秀雄(監修) いもむしハンドブック. 文一総合出版. 16.

最終更新日:2020-05-01

幼体の形質

幼虫は1〜4齢においては鳥の糞状で、終齢 (5齢) になると鮮やかな黄緑色になり、胸部に眼状紋が生じる。終齢幼虫は腹脚上部に顕著な白色斑を並列するため、他のアゲハチョウ属の終齢幼虫とは容易に区別できる。臭角は橙色。

参考文献

  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 7.
  • 安田守 2010 アゲハ (ナミアゲハ), 安田守(著) 高橋真弓、中島秀雄(監修) いもむしハンドブック. 文一総合出版. 16.

最終更新日:2020-05-01

卵の形質

卵は底面が平らな球形。

参考文献

  • 安田守 2010 アゲハ (ナミアゲハ) , 安田守(著) 高橋真弓、中島秀雄(監修) いもむしハンドブック. 文一総合出版. 16.

最終更新日:2020-05-01

地理的変異

小笠原諸島では黒色部が発達し、また八重山諸島では尾状突起が太いとされる。

参考文献

  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 7.

最終更新日:2020-05-01

似ている種 (間違えやすい種)

キアゲハ

参考文献

  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 6.

最終更新日:2020-05-01

生態

成虫の生息環境

平地から低山地にかけての日当たりの良い場所、人家周辺など

参考文献

  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 7.

最終更新日:2020-05-01

成虫の食性

フキ・ダイコン・ヒロバタンポポ・スミレ・ツツジ類・ユリ類 (ヤマユリなど)・ヤブガラシ・ヒメジョオン・コスモスなどの花に集まり、蜜を吸う。特にツツジ類・キク科・ユリ科を好む。オスは吸水行動を行うが、春型は集団になることは少ない。

参考文献

  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 7.

最終更新日:2020-05-01

幼虫の食性

カラタチ・サンショウ・キハダ・ナツミカン・ユズ・ウンシュウミカン・ダイダイ・レモン・ハマセンダン・キンカン・カラスザンショウ・ミヤマシキミなど各種のミカン科の葉が食草。クスノキ・マリーゴールド・パセリなど他科の植物で全幼虫期飼育できた例もある他、タチバナ・ホウセンカ・ボタンで幼虫が見つかった例もある。

参考文献

  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 7.

最終更新日:2020-05-01

ライフサイクル

日本産アゲハチョウ属 Papilio の中では最も春早くから発生し、秋遅くまで姿を見かける。関東から九州北・中部にかけての平地から低山地では年4〜5回発生し、第1化は3月下旬〜5月にかけて、第2化は5月下旬〜6月上旬にかけて出現し、以降秋季まで連続的に発生を繰り返す。北海道のような寒冷地では年2化であり、5〜6月に第1化が、7〜9月に第2化が出現する。幼虫齢数は通常5齢で、蛹で越冬する。

参考文献

  • 白水隆 2006 アゲハ, 白水隆(著) 日本産蝶類標準図鑑. 学習研究社. 30.
  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 7.

最終更新日:2020-05-01

活動時間帯

日中

参考文献

  • 長谷川大・永幡嘉之・中村康弘・須田真一・矢後勝也 2019 アゲハ キアゲハ, 日本チョウ類保全協会(編) フィールドガイド 増補改訂版 日本のチョウ. 誠文堂新光社. 67.

最終更新日:2020-05-01

生殖行動

交尾しながら飛翔する際は、雌が飛んで雄を連行する。

参考文献

  • 白水隆 2006 アゲハ, 白水隆(著) 日本産蝶類標準図鑑. 学習研究社. 30.

最終更新日:2020-05-01

産卵

通常食草の葉裏に1卵ずつ産卵する。記録された最大産卵数は約300個。

参考文献

  • 白水隆 2006 アゲハ, 白水隆(著) 日本産蝶類標準図鑑. 学習研究社. 30.
  • 矢田脩 2007 アゲハ, 矢田脩(監修) 新訂 原色昆虫大圖鑑Ⅰ(蝶・蛾篇). 北隆館. 7.

最終更新日:2020-05-01

特徴的な行動

日中、明るい樹林の周囲のやや高所を飛翔する。雄はチョウ道を形成する。

参考文献

  • 長谷川大・永幡嘉之・中村康弘・須田真一・矢後勝也 2019 アゲハ キアゲハ, 日本チョウ類保全協会(編) フィールドガイド 増補改訂版 日本のチョウ. 誠文堂新光社. 67.

最終更新日:2020-05-01

関連情報

飼育方法

ここでは主に幼虫の飼育方法を説明する。同じ Papilio 属のほとんどのチョウは似たような方法で飼育可能である。
まず幼虫を入手する方法としては、卵や幼虫を採集してくるか、成虫を採集してきて採卵する方法がある。採卵する場合、水に入ったビーカーに若い芽のあるカラスザンショウなどの枝を挿した物を用意する。これを交尾後丸一日たった雌とともにある程度の広さを持つ容器に入れ、ガーゼやラップなどで蓋をし、明るい場所に置いておくと産卵する。回収した卵には霧吹きで湿り気を与える。卵は普通4日で孵化する。
幼虫の餌としては新鮮なミカン科の植物の葉を与える。幼虫を飢えさせると成長が遅れ、成虫が小型化したり、病気にもかかりやすくなってしまうので、こまめに餌は補充するようにする。
特に気をつけたいのは病気の発生である。餌の食いが悪く成長が遅かったり、体色が若干色あせたり、体の張りがなくなってきたりした幼虫は病気に罹りやすい。もし病死した個体がいた場合、同じ容器にいた個体にも感染している可能性が高いので、感染の拡大を防ぐために、容器を開けずにすべて廃棄した方が良い。
5齢になり1週間ほど経つと大量の水っぽい排泄物を出した後に、吐き出した糸で壁面や枝葉に体を固定し、前蛹と呼ばれる状態になる。前蛹になっていたら背中を支えている糸をハサミで切り、前蛹は平らな場所に広げたペーパータオルに互いに接しないように置く。翌日には脱皮し蛹になる。
非休眠蛹は、羽化用の容器(例えば幅 30 cm × 奥行き 20 cm × 高さ 20 cm 程度の発泡スチロールの箱など)に移し、霧吹きで適度に湿り気を与えておくと約10日後に羽化する。休眠蛹 (越冬蛹) は、蛹化後、1ヶ月ほど室温で保管した後にプラスチック製の容器に移し、4℃の冷蔵庫に3ヶ月以上置く。その後、羽化させるときには非休眠蛹と同様にすれば良い。低温に置く期間が6ヶ月を過ぎると羽化率は著しく低下するので注意が必要。

参考文献

  • 若桑基博 2012 ナミアゲハ, 日本比較生理生化学会(編) 研究者が教える動物飼育 第2巻 昆虫とクモの仲間. 共立出版. 180~185.

最終更新日:2020-05-01

種・分類一覧