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ノコギリカミキリ(Prionus insularis)の分類 Cerambycidae
ノコギリカミキリ(Prionus insularis)の概要 Prionus

ノコギリカミキリ(Prionus insularis)

【 学名 】
Prionus insularis Motschulsky, 1857

基本情報

大きさ・重さ

成虫体長:20~38 ㎜

参考文献

最終更新日:2020-08-28 ひろりこん

活動時期

成虫出現時期(日本国内):5~9月

参考文献

最終更新日:2020-08-28 ひろりこん

分布

北海道、千島、利尻島、奥尻島、本州(ヤブツバキ帯~ブナ帯)、佐渡、隠岐、猿島、答志島、淡路島、家島本島、宮島、見島、四国、竹ヶ島、愛媛県中島、高知県沖ノ島、九州、対馬、壱岐、加唐島、馬渡島、平戸島、五島列島、西彼高島、上・中甑島、種子島、屋久島、黒島、伊豆諸島

参考文献

最終更新日:2020-08-28 ひろりこん

亜種

日本産は次の3亜種に分けられる。

ssp. insularis Motschulsky, 1857
・成虫体長:24.6~47.7 ㎜
・出現時期:5~9月
・生息状況:もっとも普通。
・分布:北海道、利尻島、奥尻島、千島列島、本州、伊豆諸島(大島、利島、新島、式根島、三宅島、御蔵島、八丈島)、佐渡、隠岐、四国、九州、壱岐、五島列島(宇久島、野崎島、中通島、福江島)、甑島列島(上甑島、下甑島)
・特徴:体は通常黒褐色だが、褐色の個体や黄褐色の個体も稀に見られる。鹿児島県大隅半島では、頭部と前胸背は黒褐色で、上翅は屋久島亜種のような赤色味がかった褐色の個体も採集されている。
雌の大あごは雄よりもやや細長い。前胸背には光沢があり、雄の前胸背中央部前方には広い光沢部があり、点刻を欠くかまばら。雌は光沢部がより大きく広がる。前胸背側縁の2番目の突起の前方には角ばりのある個体が多く、雌ではより目立つ。雄雌共に触角は12節で、12節目は細長くて先端は尖る。上翅はニセノコギリカミキリに比べてやや長く、後脛節の上面に2本の角稜がある。

ssp. yakushimanus Ohbayashi, 1964
・成虫体長:23.9~48.9 ㎜
・出現時期:6~8月
・生息状況:やや少ない。
・分布:種子島、屋久島、口永良部島
・特徴:原名亜種に比べて、雄の体は赤色味がかった褐色の個体が多いが、黒褐色の個体も見られる。触角が長いことが特徴とされてきたが、大型の個体では原名亜種と変わらないほど短く、小型個体では触角は非常に細長くなって、体長にほぼ等しいほどになる。伊豆諸島の個体群同様に、前胸背側縁の2番目の突起の前方には小さな角ばりがない。雄の前胸背の点刻は密。

ssp. tetanicus (Pascoe, 1867)
・成虫体長:22.7~39.0 ㎜
・出現時期:7~8月
・生息状況:やや少ない。
・分布:対馬;朝鮮半島、中国東北部、ウスリー
・特徴:日本では対馬のみに分布する亜種。体は黒色味がかなり強く、前胸背側縁の突起はやや短いとされているが、差異は軽微である。
また、小宮次郎・Alain Drumont(2004)は、日本および大陸の本種とその近縁種を検討した結果、雄交尾器側片の特徴から日本産の本種を北海道~九州およびその周辺離島産、伊豆諸島産、対馬産、屋久島産の4グループに区別できるとし、対馬産は朝鮮半島の亜種 tetanicus に含まれ、屋久島産は亜種 yakushimanus とし、伊豆諸島産は未命名としている。ただし、この4グループの中の交尾器の形態も、地域による微妙な差異や同一地域内での個体変異が認められるという。

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最終更新日:2020-08-28 ひろりこん

形態

成虫の形質

褐色~黒褐色で、ときに前胸は暗赤褐色、腹面は常に暗赤褐色かそれに近い色を呈する。大腮は額とほぼ水平方向に伸び、雄では触角第1節と同長、雌ではいくぶん長い。

触角は12節、雄では上翅端をわずかに越えるものから上翅の半分を越える程度のものまで変化し、3~11節は明らかな鋸歯状で外角は鋭角状。雌では上翅の2分の1に達するかやや達しない長さで、雄よりも各節はひどく小さく細めで、末端節はわずかに偽節を形成しかかる。

前胸背は通常強い光沢を有し、側縁の後角はまったく突出しないか、突出しても鈍い。小楯板の端は尖る個体が多く、中・後脛節の上縁は通常は溝状にえぐられるが、雌ではしばしば明らかではない。

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地理的変異

ノコギリカミキリ類は体型や点刻、前胸背の形などに個体変異の幅が大きく、地域特有の変異が捉えずらい。

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似ている種 (間違えやすい種)

ニセノコギリカミキリ

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最終更新日:2020-08-28 ひろりこん

生態

幼虫の食性

各種の針葉樹および広葉樹、タケ類などの根茎。

多くのカミキリムシ類の幼虫は栄養価の高い辺材部を食べるが、ノコギリカミキリ幼虫は衰弱木や枯死木の根ぎわから根部を食べる。

参考文献

  • 窪木幹夫 1998 カミキリムシ類, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. pp. 142-145.

最終更新日:2020-08-28 ひろりこん

活動時間帯

少なくとも ssp. insularis と ssp. yakushimanus は夜間、雄は灯火によく飛来する。雌は灯火に飛来することが少ない。

夜行性の種と思われがちだが、雄は意外と昼間に飛翔している個体が見られ、大型種なのでよく目立つ。また雌は地面を歩行中の姿もよく見かけるので、純粋な夜行性とは言い難い。

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産卵

大宮文彦(1997, 月刊むし(314):39)は、大阪府で本種の雌がマツの切り株から 2 mほど離れた地表に、周囲を頻繁に移動しながら、そのつど小石や落ち葉交じりの地中に尾端を挿入して、産卵行動をとったことを2枚の写真とともに報告している。また、孵化した幼虫は、切り株から地中に張り巡らされた根にたどり着くことを目標としているのではないかとも推察している。

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最終更新日:2020-08-28 ひろりこん

関連情報

その他

屋久島では高標高地に本亜種が多く、低標高地にはニセノコギリカミキリが多くいて、混棲する地域では両種の交雑個体と考えられるものが少なからず採集されるという。

すなわち、ノコギリカミキリの雌は触角12節で後脛節に2本の角稜があり、ニセノコギリカミキリの雌は触角11節で後脛節に角稜がないが、屋久島ではこれ以外に触角12節で後脛節に角稜がない型、触角11節で後脛節に2本の角稜がある型の、併せて4つの型が現れるという。

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最終更新日:2020-08-28 ひろりこん

種・分類一覧