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キボシカミキリ(Psacothea hilaris)の分類 Cerambycidae
キボシカミキリ(Psacothea hilaris)の概要 Psacothea

キボシカミキリ(Psacothea hilaris)

【 学名 】
Psacothea hilaris (Pascoe, 1857)

基本情報

大きさ・重さ

成虫体長:15~30 ㎜

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

活動時期

成虫出現時期(日本国内):八重山諸島では4月より、本州では6月頃より現れて晩秋まで見られる。

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

分布

本州の東北地域南部以南~沖縄、台湾、中国など

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

亜種

日本産は次の10亜種に分けられている。DNAの解析によれば、10亜種のうち、奄美・沖縄諸島のグループが大きく離れており、最も古い時代に種分化したことを示している。琉球列島の亜種群は、吐噶喇亜種の一部に中国の上海を加えたグループと、台湾から先島諸島や中国(福建省)の2グループに分かれ、さらに後者は原名亜種に相当する関西型のキボシカミキリグループと、関東型を含む台湾から先島諸島、伊豆諸島(三宅島、御蔵島)に分岐している。

近年、薩摩半島や伊豆諸島の八丈島に他地域の亜種が侵入し、薩摩半島では少なくとも数亜種が混棲して交雑し、複雑な状況を呈している。

キボシカミキリ
ssp. hilaris (Pascoe, 1857)
・出現時期:5~11月
・分布:本州、猿島、伊豆諸島(神津島)、粟島、隠岐、四国、九州、対馬、尖閣諸島(魚釣島);朝鮮半島、中国、台湾
・寄主植物:クワ類、コウゾ、イチジク、イヌビワ、ガジュマル、アコウなど(クワ科)、柑橘類(ミカン科)、ヤツデ、カクレミノ(ウコギ科)、クサギ(クマツヅラ科)、ムクノキ(ニレ科)
・特徴:体は黒色で、上翅端の内・外角がわずかに尖る。全体に灰白色の微毛で被われ、黄白色の密な微毛による斑紋がある。前胸背板両側の縦条が分断される型(関西型)と完全な型(関東型)が知られ、DNAの解析では、関西型が中国大陸の個体と、関東型が台湾の個体と同じ塩基配列を有しており、両者はそれぞれの地域からの移入由来と考えられる。この意味では両者は亜種の関係にあると考えられるが、最近では関西型も東北地方まで分布を広げて両者の交雑が起こっていると考えられ、識別が困難な個体もある。

ミヤケキボシカミキリ
ssp. miyakejimana Matsushita, 1937
・出現時期:6~8月
・分布:伊豆諸島(三宅島、御蔵島)
・寄主植物:ヤマグワ(シマグワ)(クワ科)
・特徴:体は黒色で、上翅端の内・外角がわずかに尖る。全体に灰白色の微毛で被われ、濃黄色の密な軟毛による斑紋がある。後頭部に黄条がなく、前胸背板両側の縦条が分断される。上翅の黄色斑は細かく、数も多い。

ヤクキボシカミキリ
ssp. insularis Hayashi, 1960
・出現時期:5~8月
・分布:大隅諸島(黒島)、種子島、屋久島、口永良部島
・寄主植物:ヤマグワ(シマグワ)、ガジュマル、アコウ(クワ科)
・特徴:体は黒色で、上翅端の内・外角がやや尖る。全体に暗褐色の微毛で被われ、白色の密な軟毛による明瞭な斑紋がある。前胸背板両側の縦条は分断される。上翅の白色斑はやや大きく、基亜種程度。

トカラキボシカミキリ
ssp. macronotata Hayashi, 1956
・出現時期:5~8月
・分布:吐噶喇列島(口之島、中之島、諏訪瀬島、悪石島、宝島)
・寄主植物:ヤマグワ、ガジュマル、アコウ(クワ科)
・特徴:体は黒色で、上翅端の外角がやや強く尖る。白色の密な軟毛による斑紋がある。前胸背板両側の縦条は分断される。上翅の白色斑はやや大きく、数は少ない。宝島産では全体に灰白色の微毛で被われるが、中之島産では暗褐色。DNA解析の結果で、宝島産は中之島産と異なるグループであることが示されている。

アマミキボシカミキリ
ssp. maculata Breuning, 1954
・出現時期:4~8月
・分布:奄美諸島(奄美大島、喜界島、徳之島)
・寄主植物:ヤマグワ、ガジュマル、アコウ(クワ科)
・特徴:体は褐色で、上翅端は外角が鋭く尖る。全体に淡黄色の微毛で被われ、灰白色の密な軟毛によるやや明瞭な斑紋がある。前胸背板両側の縦条は分断される。上翅の白色斑はやや大きく、基亜種程度。

オキノエラブキボシカミキリ
ssp. intermedia Breuning et Ohbayashi, 1966
・出現時期:4~8月
・分布:奄美諸島(沖永良部島、与論島)
・寄主植物:ヤマグワ、ガジュマル、アコウ(クワ科)
・特徴:体は褐色で、上翅端は外角が鋭く尖る。全体に淡黄色の微毛で被われ、白色の密な軟毛によるやや不明瞭な斑紋がある。前胸背板両側の縦条は分断される。上翅の白色斑はやや少なくて大きく、角ばる。

オキナワキボシカミキリ
ssp. teneburosa Matsushita, 1933
・出現時期:4~8月
・分布:沖縄諸島(沖縄島、久米島)、大東諸島(南大東島)
・寄主植物:ヤマグワ、ガジュマル、アコウ(クワ科)、ウラジロエノキ(ニレ科)
・特徴:体は褐色で、上翅端は外角が鋭く尖る。全体に淡黄色の微毛で被われ、白色の密な軟毛による不明瞭な斑紋がある。前胸背板両側の縦条は分断される。上翅の白色斑は目立たず、細かい。

ミヤコキボシカミキリ
ssp. miyakoana Ohbayashi et N. Ohbayashi, 1965
・出現時期:4~12月
・分布:先島諸島(宮古島)
・寄主植物:ヤマグワ、ガジュマル、アコウ(クワ科)
・特徴:体は黒色で、上翅端の外角が強く尖る。全体に灰色の微毛で被われ、淡黄色の密な軟毛による明瞭な斑紋がある。前胸背板両側の縦条は分断されない。上翅の淡黄色斑はやや小さく多い。

イシガキキボシカミキリ
ssp. ishigakiana Ohbayashi et N. Ohbayashi, 1965
・出現時期:4~10月
・分布:先島諸島(石垣島、竹富島、西表島)
・寄主植物:ヤマグワ、ガジュマル、アコウ(クワ科)
・特徴:体は黒色で、上翅端の内・外角がともに尖る。全体に黒褐色の微毛で被われ、淡黄色の密な軟毛による明瞭な斑紋がある。前胸背板両側の縦条は分断されない。上翅の淡黄色斑はやや小さく多い。

ヨナグニキボシカミキリ
ssp. yonaguniana Ohbayashi et N. Ohbayashi, 1965
・出現時期:4~10月
・分布:先島諸島(与那国島)
・寄主植物:ヤマグワ、ガジュマル、アコウ(クワ科)
・特徴:体は黒色で、上翅端の内・外角がわずかに尖る。全体に黒色の微毛で被われ、淡黄色の密な軟毛による明瞭な斑紋がある。前胸背板両側の縦条は分断されない。上翅の淡黄色斑は大きく少ない。

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

人間との関係

イチジクとクワの主要害虫であり、成虫は葉を食し、幼虫は樹幹に潜り込み、幹の内部を食害する。関東以西では1970年ごろまではイチジクでの発生が主であったが、その後、近畿地方から東北地方の南部まで、クワでの発生が顕著となった。

幼虫による樹幹内部での食害によって樹勢が弱まり、一部で枯死し、桑園やイチジク園を廃園にさせる。成虫による葉の食害被害は少ない。

対策としては、飛来している成虫を捕殺することや、植物の樹勢が弱まると飛来が多くなるので、被害の大きい園では更新を行って樹勢を強くし、切り取った材は焼却すること、幼虫孵化の多い夏場の成虫飛来時期に薬剤を散布すること、樹幹に塗布するペースト状の薬剤、天敵糸状菌に感染させる薬剤も市販されている。

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

形態

成虫の形質

前胸背板は縦長で、弱い横しわ状に彫刻され、両側の突起は小さく円錐状、前肢基節孔は後方が開く。普通、前頭に2本、後頭部に3本、前胸背板に2本の縦条、上翅には数対のやや大きい紋と多くの小さな斑紋がある。体下面にも頬から前胸側面、中胸から後胸に至る側条と、腹板両側に2対が並ぶ紋がある。

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

幼体の形質

全体に乳白色で頭部は茶褐色。

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

生態

成虫の食性

クワ類やイチジクなどの生木に集まり、その枝や葉をかじって葉に不定形の穴を開ける。

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

幼虫の食性

イチジク、クワ、アコウ、イヌビワ、ガジュマル(クワ科)の生木

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

ライフサイクル

早期に産卵された個体はその年の秋に成虫となって、年2回の発生型となる。

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

生殖行動

交尾を行う前、雌雄の接近にフェロモンは使われない。雄による雌の認知と交尾行動の解発は、雌の体表全体に存在する接触刺激性の性フェロモンによるもので、体表ろう(蝋)成分と類縁の物質がフェロモンとして見つかっている。

参考文献

  • 岩渕喜久男 1998 カミキリムシ類の配偶行動とフェロモン, 日高敏隆(監修) 石井実、大谷剛、常喜豊(編) 日本動物大百科10:昆虫Ⅲ. 平凡社. p. 146.

最終更新日:2021-03-27 ひろりこん

特徴的な行動

灯火にもしばしば飛来する。

参考文献

最終更新日:2020-09-06 ひろりこん

種・分類一覧