- 解説一覧
- トウモロコシ(Zea mays)について

基本情報
- 生活形
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1年生の壮大な単茎草本である。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 トウモロコシ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 228₋229.
- 柴田桂太 2001 トウモロコシ, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 489₋492.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 原産地
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中米
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 トウモロコシ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 228₋229.
- 柴田桂太 2001 トウモロコシ, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 489₋492.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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北海道や東北地方、北関東、九州、四国の一部では「トウキビ」、北海道と東北地方では単に「キビ」と呼ぶ地域が多い。
西日本では「ナンバンキビ」と呼ぶ地域が多く、関西、中国、四国では単に「ナンバ」と呼んでいる。
ほかにもコウライキビ、マメキビなどと各地で呼ばれている。
参考文献
- 青葉高 2013 トウモロコシ, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 142₋147.
- 柴田桂太 2001 トウモロコシ, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 489₋492.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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イネ科
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 トウモロコシ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 228₋229.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 人間との関係
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トウモロコシは、先史時代に消滅した祖先野生種から進化したものである。
穂軸の小さい野生種は、紀元前5,500年ごろにメキシコ、プエブラ州テワカンに棲んでいた人々が、意図的に種子を蒔いていたようである。
同様の証拠がニューメキシコのバットケイプでも見つかっており、これは紀元前4,400年頃のものと推定されている。ほかにも、紀元前1,000年頃のものがペルーで見つかっている。
この頃まで南アメリカ大陸には、数多くの民族が移動して暮らしていた。そのため、トウモロコシは人間が意図して選び、広めたと考えられる。
長い間トウモロコシは、コロンブスにとってアメリカ以外の地域に伝えられたとされていたが、最近になって言語学的、考古学的証拠から、アジア、アフリカ、ヨーロッパでもそれよりずっと早い時期から栽培されていたのではないかという議論が起きている。
日本には1595年(天正7年)、ポルトガル人が長崎に伝えたのが最初で、江戸時代にある程度広まった。
『農業全書』には記述がないが、『成形図説』には紫紅色でねばるもの、黄白色でねばらぬもの、紫赤色ではぜるものの3種類のあることと、食べ方や菓子、焼酎の原料になることなどを記述している。
明治初年には穀しゅく類の1つとして種実が導入され、また別にアメリカから北海道に入り、北海道で盛んに栽培された。
トウモロコシは、乾燥した種実を穀物として食用や飼料にしたばかりでなく、穀物用の品種の未熟の雌穂を収穫して、焼いたり茹でたりして食べることも多かった。
第二次大戦後、未熟トウモロコシ用の甘トウモロコシ(スイートコーン)の優れた新品種がアメリカから導入され、昭和25~26年から未熟トウモロコシ用の栽培は急激に増加し、昭和50年代の収穫量は戦前の2倍半以上になっている。
【食べ方】
主に野菜として食されるスイートコーン以外では、大きく2つの利用法がある。穀粒をまるごと使う方法と、挽いて使う方法である。
まるごと使う方法としては、ポップコーンがもっとも人気があり、アメリカのスナック文化に深く刻み込まれている。また粒をそのまま灰汁に浸したり、灰汁で加熱したりして、みっちりと歯ごたえのあるホミニーにしたり、揚げてコーンナッツにすることもある。
挽く場合は、乾燥させた状態でも湿った状態でも粉にできる。乾燥させて挽いたトウモロコシは、粒の粗さによって分類される。
グリッツはもっとも粗く、アメリカ南部で人気の朝食用オートミールに加工される。
コーンミールは中程度の粒で、マッシュ、ポレンタ、ジョニーケーキ、コーンブレッド、そのほか焼き菓子など、焼いて料理するものに使う。
コーンフラワーは細かい粉末にして、パンやケーキなどに使う。
湿らせて挽くトウモロコシは、まずアルカリ溶液で加熱してからふやかし、冷ましてから石臼で引いてマサという生地にする。マサは焼いて薄いトルティーヤにしたり、揚げてコーンチップにしたり、トウモロコシの皮に包んで蒸してタマレスにしたりする。
トウモロコシはアメリカ大陸以外でも、近年多くの料理に使われるようになっている。
例えば、イタリア料理でおなじみのコーンミールを使ったポレンタ、ガーナ料理のケンキーなどがある。ケンキーは、発酵させたトウモロコシを丸めて皮(またはバナナの葉)に包んで蒸し、魚や肉と一緒に出す。
【食用以外の利用】
茎からはときに糖密をとることがあり、また乾燥すれば燃料となり、火薬原料炭を供給する。
葉と共に製紙の材料として試験されたことがあり、屋根葺の材料ともなる。
雌花穂の芯の灰は加里に富むので、加里製造用及び肥料に用いられる。
またその苞葉は1種のマットの原料となり、椅子、寝台などに嗔充し、巻きたばこの巻紙代用にもなる。
飼料用には多く歯粒種が用いられる。種子用のものよりは密植して、花の終わる前に青刈して飼料に用いる。なおこれをサイロに入れ、飼料不足の冬期に備えて埋蔵飼料とする。
参考文献
- 青葉高 2013 トウモロコシ, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 142₋147.
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 トウモロコシ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 228₋229.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
形態
- 葉の形質
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葉には明瞭な中肋があり、両面には毛がある。
参考文献
- 柴田桂太 2001 トウモロコシ, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 489₋492.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 茎(幹)の形質
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アワやモロコシに似たタイプのイネ科植物であるが、雌の穂(雌性花序)は近縁種に比べて明らかに大きく、その穂軸は長さ 60 cmになることがある。
茎は中実で、節部では特に充実している。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 トウモロコシ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 228₋229.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 種子の形質
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各穂軸に1本あたり、1,200個もの穀粒つまり種子が偶数列に並ぶ。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 トウモロコシ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 228₋229.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
生態
- 送粉様式
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トウモロコシは茎の頂部に雄花の穂がつき、茎の中ほどの葉のわきに雌花の穂(これが食用に供される)がつく。雌花穂は開花期になると、花柱が伸びて穂の先に柱頭が出てくる。
トウモロコシの毛と呼ばれるのはこの花柱で、トウモロコシの一粒一粒から一本ずつ出ている。この毛の先の柱頭に、上の雄花穂の花粉がつくと、受精して種実ができる。
そこで、初めから一代雑種を作ろうとする二系統(仮にA×Bとする)を畑に隣りあわせて植えておき、雌親とするA系では雄花の開花前に雄花穂を切り捨てる。もちろんこの場合、AB以外の品種は近くに植えておかない。
このようにすると、雌花穂の柱頭には隣のB系の花粉が風によって運ばれ、受精してA×Bの性質をもった種実ができる。
このように、雌親の雄花穂を切る作業だけで、あとは風の働きで一代雑種の採種ができるので、労力が比較的高価なアメリカでも、実用的な採種ができる。
参考文献
- 青葉高 2013 トウモロコシ, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 142₋147.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
関連情報
- 栽培方法
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種子を晩春5~6月の間に播いて、間引きしつつ追肥を与え、土寄せして倒伏を防ぐ。
酸性土壌を忌み、生育期間の温度は25℃内外がよく、過湿を避ける。
早生は7~8月頃、晩生は8~9月頃熟し、北海道では約1ヵ月遅れる。
風のないときには、雄花を叩いて受粉を完全にすることもある。
肥料は多くても害を受けず、豊産となり、吸肥力が強いために、後作が肥料の欠乏のために害を受けるほどであるという。
収穫には穂を手でもぎ取り、苞を剥いで10本内外ずつ結んでさおにかけて乾燥する。
種子は早く発芽力を失うので、前年の新種子以外は播種に適さない。
自家受精で純粋に生殖を繰り返していると、生育力が著しく低下し、経済的な栽培が成り立たなくなる。
草丈に関しては2、3代の間に矮生となってしまう。逆に雑種1代の強制を利用して、栽培能率を挙げることができる。
これを実際に行うには、1畦ごとに2系統の種子を播き、一方からあらかじめ雄花を取り去り、他方から受粉をうけてこれを母本にする方法、そのほかの複雑な手数がかけられている。
花粉を与えた株の性質がすぐに胚乳の色に現れるため、しばしば遺伝の実験に用いられる。
参考文献
- 柴田桂太 2001 トウモロコシ, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 489₋492.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン