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- サトイモ(Colocasia esculenta)について

サトイモ(Colocasia esculenta)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Colocasia esculenta (L.) Schott
基本情報
- 草丈・樹高
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大きな葉をつけ、1.8 mを超えるほどの草丈になる。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 タロイモ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 150.
最終更新日:2020-05-21 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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サトイモ科 コロカシア属 サトイモ類
参考文献
- 青葉高 2013 サトイモ, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 371₋382.
最終更新日:2020-05-21 ハリリセンボン
- 人間との関係
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・歴史
インドやマレーシアの低湿地で、最初に栽培された植物の1つであった。イネや雑穀よりも以前から栽培されていたかもしれないという説がある。
柔らかい植物は、考古学的な証拠になる状態で保存されることがほとんどないために、正確な年代を突き止めることは難しい。
その後エジプトに伝わり、またギリシアとローマで重要な主食として使われた。ローマ帝国の崩壊とともに、ヨーロッパでタロイモが広く使われる時代は終わった。
アジア諸国をはじめ、アフリカ、トルコ、キプロス、米国、ポリネシア諸島の一部では、その後もよく使われている。
サトイモは古くから農耕儀礼や儀礼食に多く用いられている。
例えば坪井洋文氏は『イモと日本人』の中で、正月料理にサトイモを用いる習慣が、全国各地に残っていることを多くの事例を挙げ述べている。
また本間トシ氏は、サトイモが正月あるいは8月15日に、儀礼食として用いられる習慣が関東以西に多く残っていることを報告している。
8月15日にサトイモを月に供える習慣は全国的にみられ、これは畑作行事としてのイモの収穫儀礼であったといわれる。
このように正月やハレの日の儀礼食として、また秋の収穫儀礼に広く用いられることは、サトイモが古来コメと並んで重要な作物であったためばかりではなく、わが国に稲作文化よりもむしろ古くから、雑穀とイモ文化ともいうべき照葉樹林文化が伝わっていた、その名残とも考えられている。
【食べ方】
タロイモの全ての部分が有毒であり、扱いには注意が必要である。皮膚の炎症を防ぐために、根の外皮を剥く時には手袋をするとよい。
タロイモの根は酸化しやすいため、使うまで水につけて変色を防ぐ。
根と葉にはシュウ酸のカルシウムの結晶が含まれており、生で食べると粘膜に付着する。このような結晶を中和させるために、長時間火を通すことが欠かせない。
根は食用可能になるまで、少なくとも1時間は茹でる必要がある。または、スープや煮込みに加えるものとして、弱火で煮込んでもよい。
葉はそれだけを、またはスープや煮込みに加えて、少なくとも45分は弱火で煮込む。
おかゆのようなハワイのポイは、加熱して発酵させたタロイモのペーストからつくる。
中国のパン屋では、タロイモのペーストをケーキやロールパンなどに利用している。
【成分】
タロイモの中のデンプン粒は非常に小さく消化しやすいので、特に幼児やアレルギーをもった人によい。
参考文献
- 青葉高 2013 サトイモ, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 371₋382.
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 タロイモ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 150.
最終更新日:2020-05-21 ハリリセンボン
形態
- 葉の形質
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葉身は広く厚く、卵形、やや鈍頭、基部は深くわん入し、葉柄はわん入部のやや内方に楯状につき、幼時には巻物状に一端から捲き畳まれている。
成葉では葉面にろう質を分泌して水滴をその上に転ずる。
高さは 80~120 cm程度、まれに10月頃数茎の仏焔状花序を葉柄の間に出して、葉の高さの半分に達する。
花序の仏焔苞は中央部でくびれ、上方は淡黄色披針形で葉と同質、下方は緑色で厚く、捲いて長卵状円筒形をなす。
この内部の中央に肉穂花序を直立して、くびれより上半には黄色微小な雄花、下半には雌花を多数密生して開く。
生育するに従って分枝を側方に生じて、子芋や孫芋を発生する。
参考文献
- 柴田桂太 2001 サトイモ, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 283₋286.
最終更新日:2020-05-21 ハリリセンボン
- 茎(幹)の形質
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太い根茎から多孔髄質で軟らかく太い葉柄を多数発し、その基部は互いに捲き重なっている。
栽培品種では地下茎はほとんど伸びず、デンプンを蓄えて肥大して塊茎(芋)となる。
野生型の地下茎は栽培品種のものとは異なり、芋にはならない。
参考文献
- アリステア・ヘイ 1997 サトイモ, 八尋洲東(編) 植物の世界11,種子植物 単子葉類3. 朝日新聞社. 89₋91.
- 柴田桂太 2001 サトイモ, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 283₋286.
最終更新日:2020-05-21 ハリリセンボン
- 果実の形質
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匂いのない鮮やかな色の果実をつける。
参考文献
- アリステア・ヘイ 1997 サトイモ, 八尋洲東(編) 植物の世界11,種子植物 単子葉類3. 朝日新聞社. 89₋91.
最終更新日:2020-05-21 ハリリセンボン
生態
- 送粉様式
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鳥によって食べられて種子が散布される。
参考文献
- アリステア・ヘイ 1997 サトイモ, 八尋洲東(編) 植物の世界11,種子植物 単子葉類3. 朝日新聞社. 89₋91.
最終更新日:2020-05-21 ハリリセンボン
- その他生態
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南国のジャガイモとよく呼ばれるタロイモは、背が高く成長する。
湿生または畑で栽培されるデンプン質の球茎をもつ植物である。
デンプンの含有量はジャガイモと同じくらいだが、タロイモは高いタンパク質と栄養価を誇る。
中央の球茎は 4 kgまで重くなり、周りの小さな球茎はそれぞれ 55~115 gほどの重さになる。
湿性であるため、水田で育てるほか、畑作物としても栽培できる。しかし畑に植えたタロイモは、湿性のものと同じようには育たない。
十分な収穫を上げるには、畑用の品種であっても多量の水分を必要とする。
温暖湿潤の気候を好み、浸水によって害を受けることは少ないが乾燥には弱く、粘質多肥の壌土を好む。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 タロイモ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 150.
- 柴田桂太 2001 サトイモ, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 283₋286.
最終更新日:2020-05-21 ハリリセンボン
関連情報
- 栽培方法
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タロイモは、でんぷん質の球茎とやわらかい若葉を収穫するために栽培される。
球茎の先端に小さな葉柄を残したものを植えて繁殖させる。栽培期間は約7ヶ月である。
春4月の初めに十分堆肥をほどこして麦などの間に植えこみ、発芽生長するに従って、土を寄せ肥料を多量に与え、夏期には敷草などをして乾燥を防ぐと、8~11月の間に収穫することができる。
また直接に植えこむほかに、床で催芽させてから本植することもある。
貯蔵用には霜を1、2度経てから収穫し、親芋から子芋、孫芋を切り離すことなく温暖に保てば、春に至って植え込みのときまで安全に越冬できる。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 タロイモ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 150.
- 柴田桂太 2001 サトイモ, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 283₋286.
最終更新日:2020-05-21 ハリリセンボン