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- オランダキジカクシ(Asparagus officinalis)について

オランダキジカクシ(Asparagus officinalis)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Asparagus officinalis L.
基本情報
- 原産地
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ヨーロッパ、アジア、北アフリカ
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 アスパラガス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 165.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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ユリ科 クサスギカズラ属
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 アスパラガス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 165.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 人間との関係
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ポーランドやロシアなどのヨーロッパ湿地帯に野生種が生えている。
品種改良によって肉厚の若芽ができるようになり、ごちそうとして長く珍重されてきた。
アスパラガスはローマ人の好物であり、現代の品種よりも芽をもっと大きく育てた。
アスパラガスのもつ薬効は高く評価され、中世のあいだもその評価は続いた。
アスパラガスの調理法は14世紀のイタリア語とカタロニア語の文献に含まれており、1488年にミラノで行われた結婚式では、メニューの中心になっていた。
イタリアでは大変好まれており、イタリアの民間伝承では、アスパラガスの根は避妊に効果があるとされる。
米国では18世紀後半まで商業的に生産されていなかったが、トマス・ジェファーソン大統領が大好きだった野菜である。
日本にはオランダ人によって1780年頃より前に長崎に伝わり、日本に野生するキジカクシに似ているので、オランダキジカクシと呼び、主に観賞用として栽培した。
その後明治4年には北海道開拓使がアメリカから導入し、札幌官園で栽培し、また明治16年には青森県でも試作し、松葉ウドと呼んだ。三田育種場でも3品種を導入し、野天門と呼び石勺柏の字が用いられた。
アスパラガスの本格的な栽培は、大正12年に北海道の岩内町で約40ヘクタール栽培したことから始まり、大正14年には缶詰加工も企業化した。アスパラガス栽培はその後順調に発展し、昭和15年頃は全国の作付面積が約2000ヘクタールになった。これらはほとんど全部缶詰用のホワイト・アスパラガスで、このように加工原料生産を主体とする野菜はほかに例がない。
しかし第二次大戦後になり輸出は途絶え、アスパラガスは贅沢品として消費は激減し、終戦頃の作付面積は全国で70ヘクタール程度になってしまった。
戦後諸事情は一変して、アスパラガスの栽培は復活し、グリーン・アスパラガスの消費が急増して、昭和40年頃は作付面積が5000ヘクタールを超し、昭和55年には6400ヘクタール、収穫量は2万6600トンになった。
このうち約6割は北海道で生産されるが、北海道では今もホワイト・アスパラガスの栽培が多い。そして全国生産高も約2割を生産している長野県では、グリーン・アスパラガスを栽培している。残りの2割は東北地方など、全国各地で生産している。
戦後はグリーン・アスパラガスの消費が増大したが、それでも全生産高の約5割は加工向けで、缶詰加工したアスパラガスは輸出もしている。しかし輸出量の数倍の約2000トンの製品が輸入されている。
【食べ方】
傷みが早く、できるだけ新鮮なうちに食べる方がよい。
若い茎は生で食べられるが、通常は加熱する。できればアスパラガスボイラーと呼ばれる専用の深い鍋で、茎を茹でながら繊細な先端を蒸すようにする。
まだ温かい状態のアスパラガスに溶かしバター、ビネグレットソース、オランデーズソース、などをかけるだけで食べるのが一般的である。加熱したアスパラガスを冷やして、おいしい軽食として出されることもある。
イタリアではだいたい、アスパラガスにパン粉やパルメザンチーズをふりかけてグリルで焼く。アスパラガスの芽を薄く切り、バターを塗ったパンで巻いてオーブンで焼いたものは、オードブルとして人気がある。
【効能・有効成分】
アスパラガスは薬効のある植物として、長い間評判が高かった。学名の officinalis は「調剤室から」という意味である。
アスパラガスは利尿剤および便秘薬である。目の病気、歯痛、けいれん、坐骨神経痛などにも効くと考えられていた。しかし副作用もあり、そのもっとも顕著なのは尿に特有の臭いがすることである。
これは18世紀の英国で、アン女王侍医であったジョン・アーバスノットによって初めて記録されている。
この特異な作用は、肥料として使われる、土壌に含まれた硫黄化合物に関係すると考えられる。
参考文献
- 青葉高 2013 アスパラガス, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 266₋269.
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 アスパラガス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 165.
- 柴田桂太 2001 アスパラガス, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 17₋18.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
形態
- 茎(幹)の形質
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茎はまっすぐ伸びて枝分かれし、先端は緑色の羽毛のようになる。
根茎は塊状で太い根を発出する。茎は高さ 1.5 mほどで円い。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 アスパラガス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 165.
- 柴田桂太 2001 アスパラガス, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 17₋18.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 花の形質
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小さく下垂する緑がかった白い花である。6花蓋片、6雄蕊を有し、雌花では雄花は退化する。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 アスパラガス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 165.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 果実の形質
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鮮やかな赤い実である。形は球状で硬く丸い。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 アスパラガス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 165.
- 柴田桂太 2001 アスパラガス, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 17₋18.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
関連情報
- 栽培方法
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アスパラガスは播種後2年目頃から収穫が始められ、6~7年で最盛期になり、20年もすると株が弱るので更新する。
同じ圃場に1年に数回作付けして、狭いところから多くの収入を得ようとする近郊園芸地帯には適した作物ではない。
北海道や長野県に産地が生まれたのは、気象条件や土質が適しているばかりでなく、アスパラガスが永年作物、宿根性の作物であることからきている。
アスパラガスには細めのイモのような多くの貯蔵根があり、その貯蔵栄養で萌え出た若芽が食用になる。
そこで収穫量をあげるためには、充実した根株を養成することが必要で、この点からいうとなるべく収穫を控えめにして、株立ちを多くし、葉の貯蔵栄養生成を盛んにすることが大切である。
一般には3年目の収穫期間は2週間程度、4年目は4週間、5年目以降は8週間ぐらいとし、その後出た芽は伸ばして葉を茂らせている。
出てきた新芽が光に当たり帯紫緑色となる、これがグリーン・アスパラガスである。
加工用のホワイト・アスパラガスをとる場合は、若芽に光が当たらないように高さ 25 cm程度、かまぼこ形に盛土し、春から初夏にかけて萌え出た芽が地上に出ないうちに根元から切り取る。
盛土の土の中の芽は光が当たらないので黄白色になり、幾分細く、収量はグリーンの場合より幾分少ない。
収穫した若芽は品質変化しないよう数時間のうちに加工場に運んで熱処理をする。缶詰用の場合は加工場の近傍で栽培することになり、たいていは加工業者との契約栽培を行っている。
グリーン・アスパラガスは土寄りはせず、芽が 20 cmほどに伸びた頃切り取る。この場合も切り取り時間がたつと品質は低下する。
アスパラガスの根株はよく張っているが、この根株を床に伏込んだり、養成した株の上にビニールで被覆するなどして早出しや遅出しも行われる。なおアスパラガスのカブには弱い休眠性があり、冬の低温を経過すると休眠から覚める。
参考文献
- 青葉高 2013 アスパラガス, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 266₋269.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン