- 解説一覧
- ノビル(Allium macrostemon)について

ノビル(Allium macrostemon)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
-
Allium macrostemon Bunge
基本情報
- 和名の解説
-
野にある蒜というので、ノビルの和名があるが、蒜はニンニクのことで、これは野になくて、古代日本でも栽培されたものであった。
地下の鱗茎を噛むとヒリヒリと口の中を刺激するので、ヒルの名が自然にできたという。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ノビル, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 759.
最終更新日:2020-05-29 ハリリセンボン
- 人間との関係
-
中国では古くから「小根蒜(しょうこんさん)」とか「薤白(がいはく)」と呼んで、薬用に使われており、日本のように食用にはしていないようである。
日本では、薬用よりもむしろ、山菜として親しまれており、『古事記』の応神天皇の条に「野蒜つみに蒜つみに」とあることを見ても、既に古代の日本で、食用にされていたことを物語っている。
まだ花が咲かない若い全草をとって、ぬた、雑炊、炒め物などにする。
春の遅い北国秋田では、残雪にちらほらと出てくる新葉を最も珍重し、サシビルと呼んで、秋田名物しょっつるに入れたりする。
またノビルの球茎は生で味噌をつけたり、野原で遊んでいるときなどそのまま食べられる。
ほかにも、ニラと同じように卵とじにするのもよく、ネギの代わりにも使用することができる。
【成分】
成分はまだ詳しく精査されていない。
【薬効と用い方】
・毒虫に刺されたかゆみに用いる
鱗茎を潰してその汁を塗る。
・はれものの痛みに用いる
鱗茎、葉をつけた全草を、金網の上で黒く焼いて、粉末にしてゴマ油で練り合わせて患部に塗る。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ノビル, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 759.
- 山田卓三 1992 ノビル, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 418.
最終更新日:2020-05-29 ハリリセンボン
形態
- 葉の形質
-
葉は茎の下部に2~3枚互生し、茎と同質で細長い。もとのほうは鞘になり、真ん中へんから先はほぼ三角状、内面は溝状にくぼむ。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ノビル, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 263.
最終更新日:2020-05-29 ハリリセンボン
- 茎(幹)の形質
-
地下の白い玉(鱗茎)で盛んに繁殖する。茎は淡緑色で白粉をおび、中空、柱状で 60 cmぐらいになり、柔らかである。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ノビル, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 263.
最終更新日:2020-05-29 ハリリセンボン
- 花の形質
-
普通茎頂に2~数個以上、珠芽の間から散形にのびた柄の先につくが、往々珠芽だけのものがある。
珠芽は小球状で紫褐色、総苞葉は膜質で2枚にわかれ、開花前は全体を包む。花被片6は類白色で背に紫色の線があり、雄しべ6は花被より長く突出する。
花粉粒を入れる葯は淡紫色で、雌しべ1である。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ノビル, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 263.
- 伊澤一男 1998 ノビル, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 759.
最終更新日:2020-05-29 ハリリセンボン
生態
- 生育環境
-
日本全土の日の当たる道端、空き地、野原、畔、低い山、土手などに生える。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 ノビル, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 263.
最終更新日:2020-05-29 ハリリセンボン
- 種子散布様式
-
花後、球芽がつくものが多く、これは無性芽で地に落ちて繁殖する。
参考文献
- 山田卓三 1992 ノビル, 山田卓三(著) 山田卓三(監修) 野草大百科. 北隆館. 418.
最終更新日:2020-05-29 ハリリセンボン
- その他生態
-
ノビルの花は花茎の先に花穂をつけるが、正常な花は開かず、ほとんどがムカゴになって、花は一部しか咲かない。
開花が少ないため、ムカゴが秋に自然に落ち、これからノビルが発芽していく。
参考文献
- 伊澤一男 1998 ノビル, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 759.
最終更新日:2020-05-29 ハリリセンボン