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ニンニク(Allium sativum)の分類 Amaryllidaceae
ニンニク(Allium sativum)の概要 Allium

ニンニク(Allium sativum)

【 学名 】
Allium sativum L.

基本情報

原産地

中央アジア

参考文献

  • バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ニンニク, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 144-145.

最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン

別名・方言名

漢名を葫、葫蒜あるいは大蒜といい、古い和名をオオヒルとも、単にヒルとも称えた。しかし、ヒルはニンニク、ノビルなどの総称でもあった。

ニンニクは、中世以降の称呼で、おそらく僧家より出た語であろうといわれる。江戸時代には俗にロクトウともいった。

参考文献

  • 柴田桂太 2001 ニンニク, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 547-548.

最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン

分類学的位置付け

ユリ科

参考文献

  • 伊澤一男 1998 ニンニク, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 762.

最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン

人間との関係

中央アジアの地域だけに野生種が分布している。

記録に初めて登場したのは古代サンスクリット語で書かれたもので、その後バビロニア語と中国語の文献にも登場している。

ニンニクが栽培されたのは、地中海地方とシリアと考えられている。

エジプトの墓ではニンニクの鱗茎の絵や彫刻が見られ、エジプト人がニンニクを崇敬していたことが分かる。

ニンニクは、ミイラへの処置にまで使われていた。

また、ギザの巨大ピラミッドを建設するときには、労働者たちの食料として 68万 kgのニンニクが使われたと推計されている。予想外の干ばつによってニンニクが不足したときには、労働者のストライキが起こった。

古代ギリシアとローマでは、ニンニクは保護、強さ、活力、勇気を与えるものと考えられていた。
ローマの将軍たちは、自分の軍が征服した国にニンニク畑を作り、戦場に勇気を送ろうとしたことが知られている。

強い臭いと、魔法や迷信の連想があるために、ニンニクを嫌う貴族は多かったが、下層階級、奴隷、軍隊用の食料としては広く使われていた。

やがてヨーロッパからアジアにかけて、ニンニクは香辛料や薬として受け入れられるようになった。

1400年代末には、スペイン人と共にアメリカ大陸へわたり、先住民にも急速に広まったが、一方で移民たちは臭いが強いこの鱗茎を食品庫に加えるのを躊躇した。

20世紀の初め、ヨーロッパ各地からの移住でアメリカの東海岸に、さまざまな民族料理がもたらされるようになった頃、やっと北アメリカの人々とニンニクとの親密な関係が始まった。

漢以後、西域から支那に伝わり、東漸してはやくわが国にも渡来した。

【食べ方】
生のニンニクの辛さと強烈な味を好む人もいるが、火を通すことで不安定な成分が和らげられ、より万人受けする味になる。

ニンニクは生のままドレッシング、サラダ、マリネ、ソースに使われる。

ピクルスにしたものは、薬味やほかの料理の材料として使われる。

加熱したニンニクはスープ、煮込み、野菜、肉、シーフードの香りづけに使われる。

丸ごとオーブンで熱してスプレッドにするほか、マッシュポテトの味を整える調味料にも使える。

ニンニクの愛好家は、アイスクリームやお菓子に加えるなど、風変わりな使い方もする。

ベアーズガーリックの葉はサラダで生食できるほか、ピューレにしてペストソースなどに使われる。加熱した葉も、野菜料理として利用される。

【効能・有効成分】
無臭結晶性のアリインを含み、一緒に入っている酵素のアノイリナーゼは細胞が壊されると、活性化してアリインに作用し、強臭のあるアリシンになる。

昔から言われていた、ニンニクがもつ数多くの薬効は、今でもその効き目が認められている。ニンニクは感染症を防ぎ、血糖値を正常にし、消化器官では強力な解毒剤として働く。

また十二指腸虫、そのほか腸内の駆虫に効果がある。

風邪を除き、鎮静、利尿、健胃の作用もある。

また腫物の初発に、鱗茎の切片を腫心に貼り、その上に炙点すると効果があるともいわれる。

参考文献

  • バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ニンニク, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 144-145.
  • 伊澤一男 1998 ニンニク, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 762.
  • 柴田桂太 2001 ニンニク, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 547-548.

最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン

形態

葉の形質

葉の下方は、円筒形の葉鞘をなして茎を包む。

長大な葉身ははじめ摺合し、線形で尖り、幅広い。

また平滑なへん縁を有し、蒼白色でかつ上向し、先端はしばしば反曲する。

参考文献

  • 前川文夫 2001 ニンニク, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 547-548.

最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン

茎(幹)の形質

鱗茎は、帯褐色の条のある汚白色の古鱗葉を著した、菊座形の大きな扁卵球体で、内部は数個の小鱗茎に分かれている。

小鱗茎は尖頭の半卵球形で、背面が広くて円い3稜域は4稜体をなし、濃紫の条を有する紫色、あるいは帯褐紫色の厚く硬い光滑な鱗葉で包まれ、質は硬実である。

これを横断して見ると、中心に白い葉鞘と、緑色の葉身とからなる4~5枚の葉が収まり、その周囲に著しく肥厚した鞘状部がある。白色の柔組織中には、淡緑色の維管束が散在する。

この鞘状部は、外側に位置する1枚の葉鞘が多肉になったものである。

小鱗茎の内部のさらに2分しているものが親になったときは、母茎の内部は各別の鱗葉に包まれた半円形の2箇所の分球で占められる。

各分球のうちに更に4、5箇所の新しい小鱗茎を生じ、色沢の褪せてかつ薄くなった母茎と分球との二重の古鱗葉を通して、新鱗茎の色が透いて見える。

中空の太い花茎は円柱形で、直立し 60~100 cm ばかりで、葉を互生する。

参考文献

  • 前川文夫 2001 ニンニク, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 547-548.

最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン

花の形質

6片の花被は、楕円状披針形あるいは披針形で、鋭尖頭、帯縁白色で紫暈があり平滑である。

黄やくを有する6本の雄しべは、花被よりも短く、花糸の基脚の両側に細く尖った1個ずつの歯片がある。

参考文献

  • 前川文夫 2001 ニンニク, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 547-548.

最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン

生態

その他生態

ニンニクは古い栽培歴をもつ作物であるわりには、品種の数がそれほど多くない。

ニンニクの品種を集めてみると、花茎を出す品種と花茎をほとんど生じない品種とがある。

ニンニクの球を収穫するためには、花茎はむしろ出ない方が好ましく、花茎を出す品種を栽培する場合は、花茎があまり伸びないうちに花茎を切り取って、地下の球の肥大を促している。

花茎を出す品種でも、花茎上に花をつける品種と、花をまったく着けない品種とがある。

花茎を生じない品種や、花をまったく着けない品種はもちろん種子ができないが、たとえ花を着ける品種でも種子ができない。

そして花茎上には花の代わりのように珠芽がつき、この珠芽を植えておくと翌年ニンニクの小さい球が得られる。

ニンニクは通常、地下にできる球を横断面が三角形のような1つ1つの球に分け、これをタネ球にして栽培している。いずれにしても種子繁殖ではないので、新しい品種の生まれる機会は少ない。

参考文献

  • 青葉高 2013 ニンニク, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 298-304.

最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン

関連情報

栽培方法

ニンニクは玉葱の仲間で、強い味の鱗茎を収穫するために栽培される。

それぞれの鱗茎は、白またはピンクがかった薄い被膜で包まれた小鱗茎が、いくつか集まってできている。増やすには、個々の小鱗茎をよく耕した砂質の土壌に植える。

鱗茎が育つように、花柄は摘み取る。

茎がしなびれて枯れたら収穫する。

土から掘り出したら、長く保存できるように乾燥させて、保存処置をする。

ニンニクは成長のどの段階でも食べられるが、ほとんどの栽培家たちは鱗茎が十分に大きくなるまで待つ。

わが国の普通のニンニク栽培では、9月頃タネ球を植え付けて、翌年の晩春から初夏に収穫している。

東北地方では冷涼地向きの品種を用い、西南暖地では暖地向きの品種を植えている。

冷涼地向きの品種は長い冬の期間を越した後、相当日長(昼時間の長さ)が長くなって、初めて球が肥大する特性をもつ品種である。

一方暖地向きの品種は、低温にあまりあわなくとも球が太り、また昼の長さが比較的短くとも球が肥大する品種である。

そこで冷涼地向きの品種を暖地で栽培すると、極端な場合には葉ばかり伸びて球ができない。

逆に暖地向きの品種を冷涼地で栽培すると、春先のまだ苗の生長しきらない間に球が太り始め、小さい球しかできない。

参考文献

  • バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ニンニク, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 144-145.
  • 柴田桂太 2001 ニンニク, 柴田桂太(著) 資源植物辞典. 北隆館. 547-548.

最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン

種・分類一覧