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- イチョウ(Ginkgo biloba)について
イチョウ(Ginkgo biloba)
【IUCN】近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
- 【 学名 】
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Ginkgo biloba L.
基本情報
- 人間との関係
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イチョウ科の植物(裸子植物)は中生代ジュラ紀(約1億9千万年前)に多くの種が繁栄したが、イチョウだけが生きた化石として残り、一科一属一種を成している。
日本では室町時代にはすでに栽培されていたといわれるが、渡来時期は不明。
1690年(元禄3)、平瀬作五郎が種子植物に初めて精子の存在を発見し世界の学者を驚かせた。現在でも小石川植物園にこのイチョウがある。
「銀杏返し」「銀杏崩」「銀杏曲」「銀杏頭」などの髪型や、大根の切り方の「銀杏大根」、膳の足の形を表す「銀杏脚」など、イチョウの名が日常生活の中に多く残っている。
イチョウを図案化した紋所に、三つ銀杏、中輪に立銀杏、対い銀杏菱、違い銀杏などがある。
東京都、神奈川県、大阪府の木に選ばれている
季題は「秋」銀杏散る。「冬」銀杏落葉。「銀杏散る遠くに風の音すれば 富安風生」「蹴ちらしてまばゆき銀杏落葉かな 花蓑」などの句がある。
中国名の鴨脚樹は、この葉形に由来する。
これを日本でヤーチャオと聞き、さらにイーチャオと転訛、のちにイチョウとなったといわれる。
中国原産で、現在、浙江省にわずかに自生するだけといわれる。
公園樹、街路樹、社寺林に植えられ、防火樹、防風樹ともされる。また盆栽づくりにもする。
材は辺材、心材の区別がない淡黄色を示し、緻密で光沢がある。気乾比重約 0.55。
耐朽性は乏しいが、早材、晩材の差が少なく均質で、加工性がよく狂いが少ないので建築材、器具材、彫刻材、天井板、床板、将棋駒、碁、将棋盤、算盤玉、まな板に用いる。
中国に留学した僧が持ち込んだといわれることから、寺院や神社の境内によく植えられる。
そのため各地に名木が残されており、天然記念物に指定されているものに、青森県十和田湖町「法量のイチョウ」や岐阜県高山市「飛騨国分寺の大イチョウ」などがある。
葉を本に挟むと紙魚よけになるという。
薬用として、咳止め、去痰薬などに用いられる。
ギンナンは茶碗蒸しの具剤には欠かせず、酒のつまみなどにも食されるが、多食すると中毒を起こす。
種子を土中に埋め、外層を腐らせ、硬い種皮中層が露出したものが「ぎんなん」。
食用部分は、白く硬い内種皮の中にある黄緑色の胚乳で、おもな成分は糖質34.5%、タンパク質4.7%、脂質1.7%など、ほかにカロチン、ビタミンCを比較的多く含んでいる。
内種皮のまま炒ったり、割ってから加熱して食べる。
酒のさかな、茶碗蒸し、ほうろく焼き、なべ物のあしらいなどに用い、独特の風味と歯ざわりが喜ばれる。
また中医方では白果と呼び薬用とされ、咳や喘息、頻尿や淋病などの泌尿器の病気に用いられる。
最近、西ドイツで葉が抗炎症、血小板活性化まどの作用を有することが見いだされ、内出血など血管障害用の製剤がつくられる。
イチョウは病害虫に強いだけでなく、火熱にも耐えることができ、長命である。
「銀杏」は「ぎんあん」の転訛した語で、近世にはイチョウそのものをもいったが、今はイチョウの種子を指す。
参考文献
最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ
形態
生態
関連情報
- 栽培方法
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殖は実生、さし木、接木による。実生は果肉を除去し、水洗い生干しし、土中に埋蔵して、春に播種する。発芽率は高い。
自然に樹形が整うので手入れの必要はないが、根もとからのヤゴはかきとる。
施肥は改めて必要ないが、施す必要のある場合はリン酸、カリ肥料を主とする。
枝葉が充実し黄葉が美しくなる。チッソ過多では黄葉が美しくあがらない。
参考文献
最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ