- 解説一覧
- シキミ(Illicium anisatum)について
目次
基本情報
- 和名の解説
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①果実が重なってつくことから、シキミ(重実)の意。
②果実に毒があることから、アシキミ(悪実)の転。
③シはクシ(臭)の約で、クサキミ(臭実)からの転。
参考文献
最終更新日:2020-05-12 キノボリトカゲ
- 別名・方言名
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ハナノキ、花柴(花柴)、コウシバ(香柴)、コウノキ、ブツゼンソウ(仏前草)/コーパ(茨城)、オハナ(静岡、愛知)、コハナ(三重、和歌山)、ハカシバ(山口)、ハナエダ(岡山、広島、高知、愛媛)、ヨシビ(熊本)
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- 人間との関係
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寺社、墓地に植栽され、材は器具材、鏇作材、鉛筆用材に用いる。
生枝は仏事や葬式に用い、しばしば神社や墓地に植栽される。
樹皮や葉は抹香や線香、果実は牛馬の寄生虫駆除薬に使う。
ただし、シキミは全木に有毒成分アニザチンを含み、とくに果実の味は甘いがハナノミンという有毒成分は食べると死ぬこともあるほどの猛毒。
材は心材が淡紅褐色の緻密な散孔材で、気乾比重約0.67、木が小さいので重要な用途はなく、細工物(寄木細工、象嵌細工)や念珠に使われる。
樹皮からは繊維がとれる。
『閑窓瑣談』にも害獣避けに新しい墓や山の畑に、香りが強いシキミを植えたことが記されている。
仏事や葬式と関わりをもつため、屋敷に植えるのは忌まれている。
野生のものが葬式用に採取され、近年絶滅した地方も多い。
死臭に敏感なカラスは、シキミのにおいを嫌い、寄り付かないといわれる。
サカキが神事に使われるのに対し、シキミは花柴、花榊ともよばれ、仏前に供えたり棺に入れるなど、おもに仏事や葬式に用いられる。
シキミは墓などによく植えられ、葉や樹皮からは抹香や線香もつくられる。
しかし、平安中期の神楽歌のなかに「榊葉の香をかぐわしみ求めくれば…」とあるように、シキミも古くは神事用の常盤木であるサカキの一1つであって、神仏両用に使われ、独特の香りをもつために、香の木、香の花、香柴ともよばれた。
中世に入ると、シキミは神木としており、また愛知県北設楽郡などでは門松にシキミを使うように、少数ながら仏事以外に用いる例もある。
死者が出ると、一本花といってシキミを1本枕もとに供える風があり、ふだんは一本花を忌む。
また死水をとる際にも、シキミの葉に水をつけてとらせる。
シキミは果実に毒があり、香りも強いため、新しい墓や山の畑に植えて、害獣の被害を防ぐことも行われる。
墓に植えたシキミが芽を出し生長するのを、死者が冥界で幸福であるしるしとみる所もある。
シキミは民間療法でも用いられ、いぼや眼病にはシキミを浸した水をつけ、船酔い除けにはシキミの葉をへそに乗せるとよいという。
シキミの木でてんびん棒をつくると肩が痛まないといい、病人の布団の下にシキミの枝を入れておくと治るともいう。
季題は「春」。「古桶や二文樒も花の咲く 一茶」などの句がある。
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形態
- 葉の形質
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葉は互生、短柄で葉身は長楕円形、倒卵状皮針形、鋭頭で長さ 4~10 ㎝、幅 2~5 ㎝、縁は全縁、無毛で光沢がある。
葉には香気がある。
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- 花の形質
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花は小枝の葉えきから短い花柄を出し、淡黄白色で 2.5~3 ㎝の花を開く。
がくと弁は円形、各6片、肉質で皮針形、長さ 1.8~3 ㎝、心皮は8~20個で環状に並ぶ。
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