- 解説一覧
- ナンテン(Nandina domestica)について
目次
基本情報
- 人間との関係
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庭園樹、盆栽、花材、薬用(果実、枝葉、根皮、材)に利用する。
果実は苦く、ドメスティン、イソコリディンなどのアルカロイドを含み毒性があるが、漢方では熟果を干したものを南天実といい、咳止め、喘息、百日咳に用いる。
薬を干したものは南天葉と呼び、扁桃炎のうがい薬や、浴湯料として湿疹やかぶれに用いる。
赤飯の重箱や魚を贈るのに掻敷としてナンテンの葉を敷くが、これは葉の薬用性から来ているとも考えられる。
ナンテンの音が「難転」に通じることから、昔から災難除けのまじない、縁起の木とされた。
妊婦が安産を祈願して床の下に敷いたり、武士が出陣の前に床に挿して勝利を祈願した。
また、正月の掛け軸にはスイセンとナンテンを描いた「天仙図」が縁起ものとして好まれた。
不浄よけともいわれ、厠のそばにこれを植えたり、手洗いに水がないとき、この葉で手を清めた。
これを「南天手水」という。火災よけに庭に植えたともいわれる。
文献に現れるのは藤原定家の『明月記』(1230)にさかのぼる。
桃山時代には生け花の花材に使われ、江戸時代になると大衆的な庭木となり、園芸品種も多彩になる。
明治時代の『南燭品彙』(1884)には120の品種が記されている。
ナンテンは中国と日本が原産地。イギリスに渡ったのは、1804年のことでウィリアム・カーが伝えた。
紋所として図案化したものに、三つ葉南天、丸に三つ葉南天、抱南天、南天菱、三つ割南天がある。
季題は「夏」。「南天のはな穂のごとき盛哉 巨計」「南天や米こぼしたる花のはて 也有」などの句がある。
参考文献
最終更新日:2020-05-18 キノボリトカゲ
形態
- 葉の形質
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葉は枝端に集まり、互生、有柄、大形の3回3出羽状複葉で長さ 45 ㎝、幅 30 ㎝、基部に関節がある。
小葉は無柄で対生し、広皮針形で先はとがり、長さ 3~7 ㎝、全縁、革質、濃緑色で光沢がある。
参考文献
最終更新日:2020-05-18 キノボリトカゲ
- 花の形質
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枝端に大形の円錐花序を直立し、20~40 ㎝、ときに葉えきから花序を出す。
花は径 0.6 cm内外で白色、多数のがく片が3個ずつ重なり、内側のものほど大きい。
花弁は6個、皮針形で光沢がある。蕾は球形で紅色を帯びる。雄しべ6個、子房1個、花柱は短く、柱頭は掌状。
参考文献
最終更新日:2020-05-18 キノボリトカゲ
生態
- 生育環境
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観賞用として常緑低木として庭や庭園などに広く植栽されるほか、暖地の山地に広く野性化する。
また石灰岩地にもよく生育するので、鳥による野生化か自生かの判断は難しい。向陽地、半日陰地、適湿の土質を好む。
参考文献
最終更新日:2020-05-18 キノボリトカゲ