- 解説一覧
- モモ(Prunus persica)について

基本情報
- 学名の解説
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学名のPrunus persicaは、紀元前1〜2世紀に中国からシルクロード経由でペルシャに渡ったことに由来し、「ペルシカ」という種小名は「ペルシャの」という意味である。
中国原産のモモが、ヨーロッパにはペルシャ(イラン)経由でもたらされたため、17世紀まではモモはペルシャ起源と推定され「ペルシャのリンゴ」とも呼ばれていた。 英名のPeachも'ペルシア’が起源である。
参考文献
最終更新日:2021-04-07 ハリリセンボン
- 亜種・変種・品種
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モモの品種群には、「欧州系」「華北系」「華中系」の3つがある。
夏乾帯で育成された品種群の「欧州系」「華北系」は日本での栽培に適さないため、国内品種の多くは「華中系」を母体としている。
また、果実の柔毛の有無によって「有毛(ケモモ、普通モモ)」と「無毛(油桃(あぶらもも)、ネクタリン)」とに分けられる。
「有毛」のほとんどは白桃系であり、国内に多く流通している。「無毛」は甘酸っぱく強く濃厚な風味があり、食生活の欧米化とともに需要が増えてきている。
江戸時代の在来品種はいずれも小果(25〜75 g)で硬く、さほど美味しくなくて、果物としての品質は優れなかったとされる。
現在栽培されている大果で軟肉の水蜜桃は、明治時代以降導入された上海水蜜桃などを日本で改良したものであり、大正時代に入ると多数の優良品種が育成された。 米国やヨーロッパでは黄肉腫が多いが、これらは輸送に強く、また肉料理のデザート用に合うためと考えられている。
園芸品種では、紅色の「寒緋」、桃色の八重咲きの大輪でひな祭りの切り花によく用いられる「矢口」白色で八重咲きの大輪の「寒白」、紅花と白花を咲きわけるシダレモモの「源平」鮮やかな桃色の八重咲き中輪で花弁数の多い「菊桃」、鉢植え用の「寿星桃」、枝がほうき状に伸びる性質を持つ「照手姫」などがある。
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- 人間との関係
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モモは日本の果樹の中では収穫期が早く6月中旬にできる品種が多い。
モモの栽培の歴史は古く、紀元前には原産地の中国からペルシャ経由でギリシャ、ローマに伝わった。日本にも弥生時代には渡来していたと考えられるが、果樹として栽培されたのは、江戸時代に入ってからである。
明治時代には、欧米と中国から多数の品種が導入され、品種改良が進んだ。果実は、そのまま食べる以外にも、缶詰、ジャムやジュース、ドライフルーツなどに加工し利用されている。
日本の主要産地は、山梨県、福島県、長野県、山形県など東日本の諸県に多く、上位3県だけで全国収穫量の68%を占める。西日本では、和歌山、岡山、香川などの各県が知られる。
中国・黄河上流域に広がる標高 700〜2,000 mの高原地帯で、栽培歴は6000年以上とされる。
中国では、美しい花を咲かせ、果実も美味しく、タネや葉は薬にもなることから、不老不死を授ける薬とされている。「平和で豊かな理想郷」という意味の「桃源郷」の語源でもある。
8世紀に著された日本最古の歴史書『古事記』にも、イザナギノミコトが鬼女にモモを投げつけて退散させるという記述がある。弥生時代初期(紀元前2〜3世紀)以降の遺跡からも、桃の核が多数出土しており、日本での栽培は大陸文化の渡来とともに始まったと考えられている。
『万葉集』にはモモの花を詠んだ歌があり、『延喜式』には桃仁(とうにん)(核)を薬用として献上したという記載が認められる。
平安時代末期には食用にも利用され、江戸時代にはさまざまな在来品種が存在していたことが記録に残っている。
モモの花が添えられるひな祭りも、'女の子の節句'として定着したのは近世のことで、元々は邪気を払う魔除けの儀式だったと考えられている。
モモの果実になぜこうした効能があるとされたのか、漢字の意味からの一つの解釈として、「桃」の字が「逃」に通じること、また「刀」と同音であること、「兆」の字から多産の象徴であることなどが挙げられている。
【効能・有効成分】
果実は柔軟多汁で糖などの炭水化物を豊富に含むほか、カリウム、リンなどの無機質も含み、風味もよいが、日もち性に問題があり、丁寧に扱う必要がある。そのため、生食用以外に缶詰やジュースにも利用される。
中国医学では、実際の治療薬としてモモの仁(核の中の種子)を「桃仁(とうにん)」と称して、駆瘀血(くおけつ;血液の浄化)薬として使用する。また、モモの葉を浴湯に入れると、あせもに効用があると言われる。
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形態
- 花の形質
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日本のモモはほとんどが、花弁が大きく雄しべと雌しべが花弁に隠れている普通咲きだが、欧州系の品種には、花弁が小さく雄しべと雌しべが露出している、しべ咲きが多い。
モモは普通、葉が展開する前に花が開く。通常、花は枝の1節に1つずつつ木があり、太く短い柄がある。花の直径は 2.5〜3.5 cm、花弁は長楕円形または倒卵形、紅色で枝に対して斜めまたは水平に咲く。雄しべは20~30本である。
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- 果実の形質
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ウメやスモモなどとともに核果類と呼ばれ、中果皮が発達した柔らかい果肉と、内果皮が硬化した核を持つのが特徴である。
扁平で普通大きなくぼみが入り、コルク質で厚い。核を持つ果実は石果と呼ぶが、核の部分はまだ果実の一部(内果皮(ないかひ))で、種子は核の中にある。
また、夏の果実なので天候の影響を受けやすく、果実間の味のばらつきが大きい。一般に、収穫前1ヶ月前後が晴天続きで雨が少なければ、おいしい果実ができると言われる。
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関連情報
- 栽培方法
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モモは1本でも実をつけるが、品種によっては花粉がほとんどないものもある。そういう場合は「あかつき」「大久保」などの花粉の多い品種を受粉樹にする。
通気が悪いと根腐れを起こしてしまうので、鉢底石を多めに入れて、土の中の通気性を保つ。7号鉢以上のサイズの鉢に植え付け、根詰まりしやすいので2年に一度は鉢上げする。赤玉土と腐葉土を1:1で混ぜた用土に植える。 植え付け時に幹を70度くらい斜めに植えて支柱で支え、Y字形の開心自然形に枝が開くように仕立てるとよい。
若木で樹勢が強い場合は、間引き剪定をし、軽く切り戻す。成木となって樹勢が衰えたら、強く切り戻して若返らせるとよい。
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- 病害虫
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「縮葉病」 新葉が縮れ膨れ上がる。春先に低温が続くと発生しやすい。発病した葉を見つけ次第、焼却または土に埋めるなどの処理が必要である。
「黒星病」 剪定で日当たりや風通しを良くして予防する。
「灰星病」 袋掛けをして予防する。
せん孔細菌病には風除け、アケビコノハなどの果実吸ガ類や、シンクイムシ類には袋がけなどが効果的である。アブラムシ類、モモハモグリガ、シンクイムシ類、コスカシバ、モモノゴマダラメイガなどは見つけ次第、駆除する。薬剤散布による防除効果は、幼虫の食入が進むと低下する傾向にある。その手間、フェロモントラップによる雄幼虫の誘殺消長などを参考に、産卵〜孵化の盛期に合わせて防除を実施する。
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- 味や食感
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美味しいモモを見分ける目安としては、果底部までよく着色し、豊円形で、手に持つと見掛けより重く、また特有の甘い芳香を放つものがよい。
1個の中で、特に甘みが強い部分は、果頂部や表皮近くで、軸の近くや溝(縫合線)の部分はやや甘みが劣る。また冷えずぎると食味が落ちるので、冷蔵庫で冷やして食べるときは、その1時間くらい前に入れるようにするのがよい。
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