- 解説一覧
- キハダ(Phellodendron amurense)について
基本情報
- 分布
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種小名のもとになったアムール地方から、ウスリー地方、中国東北部、朝鮮半島と、北海道から九州までの日本に分布する。
参考文献
- 御影雅幸 1997 キハダ, 八尋洲東(編) 植物の世界3,種子植物 双子葉類3. 朝日新聞社. 182-184.
最終更新日:2020-05-28 ハリリセンボン
- 亜種・変種・品種
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【変種】
・ヒロハノキハダ(var. sachalinense)
北海道や本州北部に生え、キハダに比べて小葉の幅はやや広く、樹皮は薄い。
参考文献
- 御影雅幸 1997 キハダ, 八尋洲東(編) 植物の世界3,種子植物 双子葉類3. 朝日新聞社. 182-184.
最終更新日:2020-05-28 ハリリセンボン
- 人間との関係
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肉皮を乾燥させて、生薬の黄柏とするが、今日でも『日本薬局方』に入っている重要な医薬品の1つである。この水製エキスで「陀羅尼助」、「お百草」、「煉熊」などの健胃整腸薬が作られ、古くから販売されている。中でも陀羅尼助は奈良県吉野郡桐川のものが有名である。
江戸時代の狂歌作者大田蜀山人は『一話一言』(1820)でこれを取り上げ、「ここに陀羅尼助と言へる薬あり。それを調じぬる所にいたりて見るに、黄檗のなまなましき皮を煮つめたものなり。大峯にて焚ける香のけぶりのたまれるに百草をまじへて加持したるものなりなどいへるはよしもなきことなり」とある。
大和大峯山竜泉寺の修験場で、長年たきつづけた香の煙がたまって、黒い膏薬のようになったものと、大峯山特産の薬草百種を調合し、陀羅尼のお経で加持祈祷してあるから、効き目は確かという。これはおかしいと蜀山人の実地探訪となり、その結果、単なる黄柏エキスであることが公にされた。
信州木曽のお百草も、山蔭地方の煉熊も、みな同じ黄柏エキスである。
生薬名は黄柏(おうばく)
【成分】
アルカロイドのベルベリンを主成分とし、その他多量の粘液質を含む。黄柏から塩化ベルベリンが医薬品として市販されている。
下痢止め薬の合成医薬品キノホルムは、下痢止めにはよく効いたが、スモン病のような薬害が出て、生産は禁止された。しかし、黄柏のベルベリンは腸内の殺菌作用によって下痢が止まるため、キノホルムがなくなっても心配はない。
また、この塩化ベルベリンは素人が直接使用できるものではない。
【薬効と用い方】
・健胃、下痢止めに用いる
黄柏の粉末を1回 1 g、1日3回、食後に服用する。
・打撲傷に用いる
黄柏の粉末に食酢を加え、パスタ状によく練り、患部に直接塗ってガーゼを当て、乾いたら取り換える。
参考文献
- 伊澤一男 1998 キハダ, 伊澤一男(著) 薬草カラー大事典:日本の薬用植物すべて. 主婦の友社. 383.
最終更新日:2020-05-28 ハリリセンボン
形態
- 葉の形質
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葉は対生で奇数羽状複葉、小葉は卵状楕円~長楕円形で、先はやや尾状にとがる。
裏側は白味を帯び、隆起した主脈(裏側)のもとのほう(葉柄)は無毛である。へりは細鋸歯状で縁毛がある。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 キハダ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 239.
最終更新日:2020-05-28 ハリリセンボン
- 茎(幹)の形質
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幹は直上し、20 mぐらいになり、外側は灰色じみた色のコルク質である。
縦に溝があり、一皮むいた内皮は鮮黄色をしている。よく茂り、若枝は有毛である。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 キハダ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 239.
最終更新日:2020-05-28 ハリリセンボン
- 花の形質
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新しく伸びた枝先や、葉腋から伸びた軸に円錐状に群がってつき、黄緑色で小さい。がく片5~8、花弁5~8、子房は5室ある。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 キハダ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 239.
最終更新日:2020-05-28 ハリリセンボン
- 果実の形質
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果実は球形で直径 1 cm程であり、緑から黒色に熟す。
参考文献
- 伊沢凡人 1980 キハダ, 伊沢凡人(著) 原色版日本薬用植物事典. 誠文堂新光社. 239.
- 御影雅幸 1997 キハダ, 八尋洲東(編) 植物の世界3,種子植物 双子葉類3. 朝日新聞社. 182-184.
最終更新日:2020-05-28 ハリリセンボン