- 解説一覧
- サンショウ(Zanthoxylum piperitum)について
目次
基本情報
- 人間との関係
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山地、丘陵などの林内に自生するほか、人家にも植栽される。
材は淡黄色で、気乾比重約 0.75。堅くて折れにくいため、すりこぎなどにされる。
小細工物に用いられ、また強靭で折れにくく摩滅しないので、すりこぎに賞用されるが、これはまた材からの浸出物が魚毒を消す効果をもつためともいわれる。
なおサンショウは芳香性健胃剤、漢方で駆虫剤(カイチュウ)とする。
ちなみに、その香りはテルペン系のフェランドレイン、オイゲノール、シトロネラ―ル、辛味はサンショオールによるものである。
新芽と若葉を木の芽と呼び、木の芽味噌、木の芽田楽などに使う。京都鞍馬の木の芽漬けは有名。
花を花ザンショウ、青い果実を実ザンショウと呼び、蒲焼、焼き鳥をはじめとする料理の風味づけに用いる。辛味成分はサンショ―ル、サンショアミドなど。
漢方では、果皮を蜀椒(しゅくしょう)と呼び、健胃・整腸・回虫駆除剤に、種子を椒目と呼び利尿剤に用いる。
栽培品種に、兵庫県朝倉に産するアサクラザンショウがある。
サンショウは古くから食用、薬用とされてきた。
初めは「はじかみ」とよばれたが、同じように辛辣味をもつショウガが伝来すると、それを「くれのはじかみ」とよび、サンショウは「なるはじかみ」「ふさはじかみ」とよんで区別するようになった。
暖地では3月ころから新芽を吹くが、この新芽や若い葉を「木の芽」と呼び、煮物の香付けや汁物の吸口に用いる。
木の芽みそ、サンショウみそはみそにすり混ぜたもので、木の芽和えはこれでたけのこやイカを和えたもの、木の芽田楽は豆腐などにこれを塗った田楽である。
『庭訓往来』には木の芽漬の名がみえるが、これは洛北鞍馬山の名物として有名であった。
4~5月ころになるとアワ粒ほどの緑黄色の花をつける。これを花ザンショウといい、つくだ煮ふうに煮て付け合わせなどにする。
そのあと結実した青い実が実ザンショウ、完熟した実を粉末にしたのが粉ザンショウで、実ザンショウはつくだ煮などにし、粉ザンショウは蒲焼、焼き鳥その他の薬味にする。
なお、これも鞍馬の名物とされたものに辛皮がある。
若い枝の樹皮をあく抜きしたもので、細かく刻んでしょうゆで煮たり、塩漬けやかす漬けにし、茶漬けの菜などにして喜ばれたものであった。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」は身体が小さくても才能が鋭くすぐれていることのたとえ。
江戸時代の『毛吹草』に「さんせうは小粒なれどもからし」とあることから、以前からつかわれていたことがわかる。
季題は「春」山椒の芽・山椒の花。「山椒をつかみ込んだる小なべかな 一茶」「夕刊をとりて山椒の芽をとりて 富士子」などの句がある。
参考文献
最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ
形態
- 葉の形質
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葉は互生し、奇数羽状複葉で長さ 5~15 ㎝、葉軸下面に曲がった小刺がある。
小葉は5~9対あり、卵状長楕円形で鈍頭または凹頭、長さ 1~3.5 ㎝、縁に低い鈍きょ歯があり、くぼみに透明な油点がある。
上面に短毛が散生する。葉をもむと特有の強い芳香がある。
参考文献
最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ
- 茎(幹)の形質
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よく分枝する。若枝は淡緑色。短毛があり、葉柄基部に対生する長さ 0.5~1 ㎝のとげがある。
次年枝は灰黒色で、皮目が目立つ。心材は黄色。
参考文献
最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ
- 花の形質
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短い新側枝に長さ 2~5 ㎝の小さい円錐花序をつけ、多数の黄緑色小花をつける。
花被片(がく片)は広皮針形で長さ 0.2 ㎝、雌雄異株で、雄花は雄しべ5~6個。雌花には2~3個の離生した子房がある。
参考文献
最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ