- 解説一覧
- ホウレンソウ(Spinacia oleracea)について

基本情報
- 草丈・樹高
-
高さ 30 cm
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ホウレンソウ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 187.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン
- 人間との関係
-
ホウレンソウの野生種は、コーカサスからイランに渡る地域に見られ、ペルシア(今のイラン)で栽培が始まったものとされている。
その後イスラム教徒により東西に伝えられ、ヨーロッパではまずスペインに11世紀までに伝わり、やがてヨーロッパ全域に広まった。
アメリカに渡ったのは1806年以後であるが、アメリカでは重要な野菜の1つとなった。
特に20世紀の初め、缶詰加工がおこり、ホウレンソウ缶詰の栄養価値の高いことが一般に認められ、消費が増加した。これに伴って栽培が大規模化し、1920年代には10年間に作付面積が6倍にも増加した。
ホウレンソウ缶詰を握ったポパイの漫画は、わが国でもホウレンソウの認識を高めた。
中国にはヨーロッパよりも古くから伝わっていたことは確実で、シルクロードを経て漢の時代に渡来したとの説もある。
『本草鋼目』には劉禹錫の『嘉話録』に「此の菜西域頗陵国より来る。今誤って菠稜と呼ぶ」とあり、また10世紀頃の『唐会要』には唐の太宗の647年に尼婆羅国(ネパール)から献じられたことが記されている。
その後中国各地に広まり、特に華北で盛んに栽培されるようになり、この間に東洋種が成立した。
わが国では『多識編』(1612)に「菠藐、今案加良奈」とあるのが最初といわれ、すでにカラナの名で知られていた。
また俳書『毛吹草』(1638)に肥前と薩摩では鳳蓮草と呼ばれ、和え物に用いられたことが記され、当時九州では栽培していた。
なおホウレンは菠稜の唐音とか訓音の誤りとか訛りとか言われている。
『本朝食鑑』や『大和本草』、『菜譜』では菠薐としているが、『農業全書』では菠薐草、ほうれん草として栽培法などを述べ、ホウレンソウは月初めに播種したら月半ばに発芽したと試作の結果を記している。
また『大和本草』には「性冷利なので多食すべからず、人を益せず微毒あり、婦人がカネで歯を染めて其の日ホウレンソウを食えば死す」などとあり、当時はまだ大衆的な野菜ではなかったことが知られる。
このようにして中国から渡米した東洋種が日本に土着したが、それほど重要な野菜にはならず、品種もほとんど分化しなかった。
西洋種は文久年間(1862年頃)にフランスから導入されたのが最初で、明治初年にはアメリカから4品種が導入された。しかし西洋種は日本人の嗜好にあわず、普及しなかった。
その後大正末期から昭和初期に愛知県中島群稲沢村治郎丸で、在来の東洋種と洋種のホーランジアとの間の自然交雑品種「治郎丸」が育成され、これが豊産で日本人にも合い、愛知県下から全国各地に普及し、この頃から洋種も次第に栽培されるようになった。
昭和に入り、ホウレンソウが栄養価の高い野菜であることが認識され、消費が増加し、昭和16年からは農林省統計表にも載るようになった。
また中国から導入した品種「禹城」から夏用の品種が育成されるなど、品種の改良も進められた。
【食べ方】
水をほんの少量または加えずに(水洗いして葉に残った水で通常は十分である)茹でるが、加熱するうちにかなりかさが減る。500 gの葉が1カップほどの量に減るので、多めに用意する。
スープ、タルト、パイ、スフレ、チーズと卵を使った料理などに使われる。
イタリアではパスタの色づけに使われる。
フランス料理の用語(ア・ラ・フロランティーヌ)は、通常ホウレンソウを使う料理を意味する。
エッグズフロランティーヌは、ホウレンソウを敷いた上にポーチドエッグをのせ、オランデーズソースをかけたものである。冷凍や缶詰もある。
【成分】
ホウレンソウはビタミンA、Cやミネラルを多く含み栄養価値が高い。
シュウ酸を含み結石の原因になる恐れがあるといわれ、特に洋種の場合はゆで汁は流した方がよい。
参考文献
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン
形態
- 葉の形質
-
鮮やかな緑色の大きな葉の形は楕円形から三角形で、滑らかなものとしわの寄ったものがある。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ホウレンソウ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 187.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン
- 花の形質
-
小さく目立たない黄緑色の花が咲く。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ホウレンソウ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 187.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン
生態
- その他生態
-
ホウレンソウは元来冷涼な気候を好む野菜なので、夏期の栽培では高冷地などで雨よけ栽培するなど特別の工夫が必要である。
ホウレンソウはまた酸性土壌では生育が劣る野菜としてよく知られ、栽培の場合はこの点の配慮が必要である。
べと病菌や斑点病に弱い。
参考文献
- 青葉高 2013 ホウレンソウ, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 237-241.
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ホウレンソウ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 187.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン
関連情報
- 栽培方法
-
栽培するには、長く伸びる主根を支えるために深く肥えた土壌が必要である。窒素を追肥すると成長が速い。
成長期は常に水やりを十分にする。この葉菜は涼しい季節に最適なので、春と秋に育てる。暑い季節は倒立しやすい。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ホウレンソウ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 187.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン