- 解説一覧
- ヤマアジサイ(Hydrangea serrata)について
目次
基本情報
- 人間との関係
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庭園樹。葉は甘味料、薬に用いる。
葉を蒸して、よく揉み乾燥させたものが「甘茶」で、甘味があり香がよいことから、4月8日の灌仏会ではこれを釈迦の生誕像に注ぐ習慣がある。
この汁には功徳があるとされ、参詣者は競って家に持ち帰ったという。
アマチャの甘味成分はフィロズルシン phyllodulcin とイソフィロズルシンであるが、新鮮な葉の中には配糖体として含有されていて甘くない。
酵素作用で分解され甘くなり、乾燥葉は甘味の原料とされ、また甘味、矯味薬として、家庭薬原料、口腔清涼剤として用いられる。
甘茶は甘葛との区別が古来明確でなかったから、文献には見られぬが、砂糖が普及するまでは甘味料として飲食に供されていたと思われる。
4月8日の灌仏会には各所の寺院で花御堂をつくり、誕生仏に甘茶を注ぐ。
また、参詣者は甘茶をもらって持ち帰り、それで墨をすって(千早振る卯月8日は吉日よ神さけ虫を成敗ぞする)という歌を書いて便所などに貼り、虫よけのまじないとした。
しかし『中右記』の1094年(寛治8)4月8日の条には「例によって御灌仏あり…まず仏を礼し花を散じ、五色水のを灌ぐ」とあり、また、甘茶を注ぐとする記事がみられるのは『秇苑日渉』『守貞漫稿』など19世紀に入ってからのものになるので、灌仏に甘茶を用いるようになったのはあまり古いことではないようである。
季題は「春」。「和尚云う甘茶貰ひにまた来たか 虚子」などの句がある。
参考文献
最終更新日:2020-05-13 キノボリトカゲ
形態
- 葉の形質
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葉は対生、有柄。葉身は長楕円形で先端は鋭く尖って、縁にはきょ歯がみえる。
質はやや薄く、紫赤色を帯びる。生葉は甘くないが、乾燥した葉は甘味がある。
参考文献
最終更新日:2020-05-13 キノボリトカゲ
- 花の形質
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雌雄同株で、枝先に多数の花を散房花序につける。周囲には数個の装飾花がある。
がく片は3~4個で、やや円形で先は丸く、浅く2裂する。色は、はじめ青く、のちに赤くなる。
参考文献
最終更新日:2020-05-13 キノボリトカゲ
生態
- その他生態
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繫殖は実生、さし木、株分けによるが、主としてさし木、株分けを行う。
さし木は前年枝を3月、新枝を6~7月にさす。株分けは7月がよい。移植は開葉前の3月か梅雨期頃がよい。
古くなると樹形が乱れるので、3~4年たった古枝を根元から切り、新しい枝を育成する。枝抜き、整姿は花後の6~7月に行う。
参考文献
最終更新日:2020-05-13 キノボリトカゲ