- 解説一覧
- ヤブコウジ(Ardisia japonica)について
目次
基本情報
- 亜種・変種・品種
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品種には、日の司、峰の雪、御代錦、白斑縮緬、亀の子、君が代、八州、三保の松、舞衣、東雲、松島、御所錦、御所車、帝、三笠山、宝冠錦、宝冠、花車、糸覆輪など。変種にはホソバヤブコウジがある。
参考文献
最終更新日:2020-05-01 キノボリトカゲ
- 別名・方言名
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ヤマタチバナ、ヤブタチバナ、アカダマノキ、フカミグサ、シシクワズ/イチモンナシ(新潟)、マンリョー(静岡)、フカゴ(和歌山)、トッパンピーヨロ(高知)、ヤマリンゴ(長崎、宮崎)
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- 人間との関係
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古くから日本庭園の下草として利用される。園芸では斑入りや白果品が盆栽として珍重させた。
冬でも葉が緑で実が赤く美しいため、正月の床飾りや婚礼の際の酒樽の飾りに使われる。
漢方では、煎汁を咳止めや去痰など呼吸器系の病気、利尿剤、解毒剤に用いる。
『万葉集』や『古今和歌集』で詠まれている「山橘」は、ヤブコウジのこと。
「我が恋をしのびかねてはあしひきの山橘の色に出でぬべし」(古今集・恋3・668・紀友則)は実の美しいことを踏まえたものである。
園芸種として人気を集め、江戸寛政年間(1789~1801)に流行した。
明治中期には新潟県でヤブコウジの栽培ブームが起こり、1幹3000円もの価格で取引されるほど過熱したため、新潟県知事は「やぶこうじ売買取締規則」なるものを出した。
武家の元服の髪そぎのときに、山菅に添えられた。
季題は「冬」。「初雪や実は降りのこすやぶこうじ 青蘿」「塀外に側女の墓や藪柑子 むさし」などの句がある。
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形態
- 葉の形質
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葉は茎の上部にふつう輪生状に集まり、長楕円形、長さ 4~13 ㎝、幅 2~5 ㎝、細鋸歯縁。
革質で、ほとんど無毛。5~8対の側脈がある。
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生態
関連情報
- 栽培方法
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ヤブコウジの増殖は挿木法がよい。6月中旬、長さ5~6㎝に切った穂木を水あげし、川砂または鹿沼土に挿し、フレームに入れ、日覆いをする。
灌水に注意すれば発根するので、水苔で巻いて鉢などに植え込む。年間2回ほどごく少量のマグアンプKなどを施す。耐寒性は強いといわれている。
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- その他
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園芸的には野生種が栽培されることは少なく、覆輪葉や変形葉のものが好まれる。
とくにヤブコウジの園芸品種は葉の奇形が著しく、葉縁が不規則に切れ込んだり波うつものが多い。
こうした奇形葉の縁の突出した部分を「コンペ」と称し、観賞の対象のひとつとしている。また古典園芸を「コウジ」と呼ぶことがある。
歴史的には、18世紀末から19世紀の初めにかけて刊行された『草木奇品家雅見』や『草木錦葉集』をはじめとする園芸書に本種の園芸品種についての記録がある。
下って明治年間には新潟県地方を中心に栽培熱がこうじたといわれ、かつては愛好者の多かったことがうかがわれる。
しかし、現在では同属のマンリョウやカラタチバナに比べると、その園芸的利用は少なく、ごく特殊な古典園芸植物として維持されているだけである。
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