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ヤブツバキ(Camellia japonica)の分類 Theaceae
ヤブツバキ(Camellia japonica)の概要 Camellia

ヤブツバキ(Camellia japonica)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Camellia japonica L.

基本情報

草丈・樹高

・樹高:6~18 m
・幹径:30~50 ㎝

参考文献

最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ

生活形

広葉樹、常緑高木

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最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ

花期

2~4月

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分布

北限は青森と秋田。それより以南の日本全国に分布し、植栽分布も同様である。

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最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ

亜種・変種・品種

変異は多く、ヤエツバキやシロバナヤブツバキ、ナガバヤブツバキ、その他園芸品種としての栽培種が多くある。

現在、国内では1300品種、欧米で1万を越える品種がある。

参考文献

  • 石沢進@箱田直紀@堀田満@緒方健@岩浅潔@松下智@梅原郁@片山耕三@飯島吉晴@桐野秋豊 1989 Camellia L. ツバキ属, 堀田満、緒方健、新田あや、星川清親、柳宗民、山崎耕宇(編) 世界有用植物事典. 平凡社. pp. 197-205.

最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ

別名・方言名

椿、山茶

ツバギ(青森、岩手)、カタイシ(静岡、山口、佐賀、熊本)、カタシ(島根、山口、四国、九州)、カタギ(大分)、ヤマツバキ(香川、熊本)

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分類学的位置付け

ツバキ科 ツバキ属

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最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ

人間との関係

鑑賞用庭園樹や防潮および防風林とする。材は楽器や木槌、薪炭材にも利用する。果実から油を取る。

材は堅く緻密で、木槌、木魚、印鑑、楽器、道具類の柄などの細工物に用いられ、屈曲していない部分はツゲやサクラなどの材の代用とされる。

薪炭材としてもすぐれ、灰は漆器研磨にも使われる。

茎葉の灰は山灰と呼ばれ、釉薬や紫染の媒染剤に利用される。

種子はオレイン酸などの油分をふくみ、しぼった油は椿油として、化粧用、食用、工業用とする。

油かすは害虫やミミズ駆除に使うほか、粉末にして髪の洗浄に用いる。

『万葉集』にはツバキを詠み込んだ歌が9首見られる。古代の人々にとって、ツバキは観賞用だけではなく、重要な有用植物であった。

『万葉集』に「紫は灰さすものそ海石榴市の八十の街に逢へる児や誰」(12・三一〇一)とあるように、ツバキの木灰は、ムラサキの根で紫色に染める時の媒染材として利用された。

古代には、冬に葉を落とさないのは魔力をもつためと信じられ、ツバキは神聖な木とされ、また天皇の権威の象徴とされた。

かつて東北地方の巫女であるイタコはツバキの木でつくった槌を使った、とあるもの、ツバキの木の霊力を信じたっことを象徴する。

なお、この槌が床下に置かれると霊界との交流が絶たれるという。また、ツバキを神木とする神社も各地に見られる。

大仏開眼供養が開かれた天平勝宝4年(752)に始まったとされる東大寺二月堂の修二月会では、お水取りなどの儀式に先立って、花揃えと呼ばれるツバキの造花が木に結び付けられ飾られる。

ツバキは花弁の基部が互いにくっついており、花が落ちるときには花弁が散らずに花弁と雄しべが一緒にぽとりと落ちる。

このように花の首が落ちるのに結び付けて忌み、屋敷内に植えないという地方も多い。

病人の見舞いに持って行かないというのも同じ意味からと考えられる。

「わが門の片山都婆伎まこと汝わが手触れなな土に落ちかも」(万20・四四一八・物部広足)に見られるように、すでに万葉の時代から、特徴のある花の散り方は注目されていた。

およそ380年ほど前の元和時代(1615~24)、二代将軍秀忠がツバキを愛好し、その頃から江戸でツバキの栽培が流行していたという。

ツバキには「椿」の字をあてるが、これは国字で、漢名は山茶。中国では「椿」はセンダン科のシンジュを指す。

ツバキにまつわる伝説も多い。若狭の小浜の寺に八百比丘尼と呼ばれる女性の木像があり、手に白玉椿の小枝を持っている。

同地方に伝わる伝説では、この八百比丘尼は800年も生き、全国を広く遍歴し、行く先々ではツバキの苗を植えたとされる。

ツバキが広く分布する事実と、ツバキの霊力に対する信仰がつくり上げた伝説といえる。

『椿姫』はデュマ・フィスの代表作。1848年に発表されて人気を呼び、その後ベルディによりオペラ化された。

フランスでは19世紀に、紅白のツバキがコサージュとして非常にもてはやされた。

表を蘇芳、裏を紅、赤とする襲の色目の名の一つで、五節から春まで用いる。

ツバキは寒暖地の植物であるが、東北地方の海沿いには点々とツバキの自生地が分布し、椿山などとよばれ神聖視されている。

椿山のツバキを折ると暴風雨が起こって祟るとされ、ここに近づくのさえ忌み、椿山明神などの神が祭られたり、椿山の由来を語る伝説が伝えられていることもある。

東北の羽黒山伏の峰入りでも、ツバキは供花とされるなど神聖視されており、ツバキを門松にするところもあった。

平安時代に宮廷で正月につくられた卯杖や卯槌にもツバキが用いられた。『日本書記』景行紀には、ツバキの槌で土蜘蛛を討伐したとある。

子供のはしかや災難除けにツバキでつくった槌を腰につけさせる風習もあった。

岩手県胆沢郡沢町の於呂閉志神社の5月19日(もとは旧暦4月19日)の祭礼には、参詣者にササとツバキの枝に神符を添えたものを授け、ツバキと神符は田植終了時に水口に挿して虫除けにするという。

ツバキを神木とする神社は各地に見られ、また寺院や墓にも植えられ、広島県大竹市ではツバキは幽霊の木と言われている。

昔話のなかではツバキは人影花として、人間の数だけ花をつけ生命の指標とされた。

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最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ

形態

葉の形質

葉は互生、楕円形か長楕円形で長さ 5~12 ㎝、幅 3~7 ㎝、厚皮質で細きょ歯があり、急鋭尖頭、円脚が多いが変化は多い。

表面は光沢があり濃緑色、裏面は淡緑色。

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最終更新日:2021-04-24 キノボリトカゲ

茎(幹)の形質

樹形は長楕円形か半球形に繁茂し、幹は灰白色で平滑、枝は無毛。

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最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ

花の形質

無柄、大形で頂生かえき生で一重咲、花弁は5~9弁ぐらいで、花径 5~6 ㎝。

雄しべは多く、葯は黄色、花糸は白色で子房は無毛、花柱は3頭裂。花色は紅色。

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果実の形質

9~10月にさく果が熟し、球形で果肉は厚い。

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最終更新日:2020-05-15 キノボリトカゲ

種子の形質

種子は3~5個の大形で暗褐色。

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関連情報

栽培方法

繁殖は実生による。花を賞するものは園芸品種が多いが、暴風樹、生垣用、目隠用などは実生品でもよい。

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病害虫

害虫としてはチャドクガがある。防除は5月と8月中旬~9月上旬の2回、殺虫剤の散布が必要である。

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種・分類一覧