- 解説一覧
- キリ(Paulownia tomentosa)について
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目次
基本情報
- 和名の解説
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①切るとすぐに芽を出して生長し、最初よりも栄えるためキル(切、煎、伐)の名詞形から。
②木目が美しいためキリ(木理)の意味から。
参考文献
最終更新日:2020-05-19 キノボリトカゲ
- 人間との関係
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材は白色で木目が美しくつやがある。
また耐湿・耐乾性に富みやわらかく軽いので、箪笥や長持ちなどの和家具、琴などの楽器、下駄などに広く用いられる。
特に「桐の箪笥」といえば高級家具の代名詞といえるほど知られ、静岡県藤枝市、埼玉県春日部市、新潟県加茂市が三大生産地といわれる。
樹皮は染料、葉は除虫薬にも用いられる。桐炭はデッサン、眉墨、黒色火薬に用いられる。
キリが中国より渡来したのはかなり古く、「桐」の名が最初に見られるのは『万葉集』810。
題詞に「梧桐日本琴」とあるが、これはアオギリを指すという説もある。
『枕草子』には美しい花としてキリが記述されている。『源氏物語』の「桐壺」は宮中にこの木が植えられていたことに由来する。
生長が早く、良質な家具材となるため、かつては女の子が生まれるとキリを植え、嫁ぐときにそれで箪笥をつくった。
キリは鎌倉時代に後鳥羽上皇により皇室の紋章とされたといわれ、花の数によって「五七の桐」「五三の桐」といった。
この桐紋が臣下に下賜されたが、豊臣秀吉の「五三の桐の太閤紋」はとくに有名。明治時代に正式に皇室の紋章になった。皇室の紋章は「五七の桐」で民間では「五三の桐」を選ぶのが慣例となっている。
桐紋は日本の代表的な紋章で、最近までパスポートの地紋に使われていた。
岩手県の県花。昔から雪国の寒さのなかで育ったキリは質が良いといわれ、とくに岩手県の「南部桐」はその質・量ともに秀逸で、全国的によく知られている。
キリは19世紀ごろに北米へ移入された。また南米でも日本人移民によって栽培されている。
1989年現在、日本のキリ材年間需要は約 15万 ㎥であるが、国内生産量は1960年ころから急速に減少し、1989年現在で約90%を中国、台湾、北米、南米から輸入している。
とくに北米産のキリは材質がよく、今津桐、南部桐にも匹敵するといわれる。
桐は中国で鳳凰のすむ木として貴ばれてきた。
日本でも、この思想から天皇の袍の模様に桐竹鳳凰をつけ、その他の調度や器物の模様にもこの模様が多く用いられた。
紋章としての桐文はこうした文様が多く用いられた。紋章としての桐文はこうした文様が固定したものと思われ、皇室では菊花と並んで桐も紋章として用いられていた。
足利氏、豊臣氏の桐の紋も皇室から与えられたといわれ、これがさらにその一族または家臣のあいだに広がったので、武家のあいだにこの紋を用いる家は多い。
紋の種類は、三つ葉に五七または五三の花をつけた大内桐、嵯峨桐、鬼桐などのほか、これを円形に扱った割桐や桐車、桐丸の類から、桐菱、桐蝶、蝙蝠桐などのような変わったものまで、130~140種に及んでいる。
季題は「夏」桐の花。「秋」桐一葉、桐の実。「桐一葉空みればはるかなり 万太郎」「曇日の空のまぶしや桐の花 播水」などの句がある。
参考文献
最終更新日:2020-05-19 キノボリトカゲ
形態
- 花の形質
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花は、葉より先に円錐花序を直立し、がくは広鐘形で5裂し、長さ 20~30 ㎝。
花冠は唇形で径 5~6 ㎝。花色は紫色。個体により濃淡がある。
参考文献
最終更新日:2020-05-19 キノボリトカゲ
生態
- その他生態
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繫殖は実生、根伏せによる。せん定は切口から腐れが入るのでできない。
キリは生長が早く、切ってもすぐに芽を出す。そのため植えて2.3年目に幹の根元から台切りして強い萌芽を育てる。
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最終更新日:2020-05-19 キノボリトカゲ