- 解説一覧
- ナス(Solanum melongena)について

基本情報
- 生活形
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一年生低木。卵形の果実を収穫するために、野菜として育てる。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ナス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 209.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 原産地
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インド東部の原産で、有史以前から栽培化されたとみられている。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ナス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 209.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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ナス科
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ナス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 209.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
- 人間との関係
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野生種が自生していたインドで栽培化され、近東とアジアで人気が出た。
まろやかな味とスポンジ状の果肉が、ほかの材料とよく馴染んだからである。
ペルシア人がアフリカへ広め、アラブ人は8世紀にスペインに、13世紀にイタリアへ伝えたが、15世紀までは人気が出なかった。
1500年代にスペインとポルトガルの植民地開拓者たちが新世界へと伝えた。
日本では正倉院の古文書に、天平勝宝2年6月21日、藍園茄子を進上したとの記録があり、『延喜式』には栽培から漬物加工のことまで記されている。
『本草和名』(918)や『和名抄』(931)には「和名奈須比、温めると小毒があるので水で煮るとよい」などとあり、ナスは古代から重要な野菜の1つになっていたことが知られる。
江戸時代にはすでに品種の分化もかなり進んだものと見え、『農業全書』(1697)には「紫、白、青の三色あり、又丸きあり長きあり…」と記されている。
なお、ナスは古くから普及した野菜だけに茄子紺、茄子鐶、茄子錠、茄子歯などの熟語が生まれている。
また、旧暦7月の盂蘭盆会には、茄子に芋がらなどの足をつけてナスビの馬を作り、精霊棚に供えた。盆が終わると川に流したり三叉路においたりして、先祖の霊の迎え送りをする習慣が今でも残されている。このように茄子は種々の行事によく用いられた。
古来民間薬として用いられ、果汁やへた、茎、葉の煎汁などはいぼ、凍傷、にきびなどに外用として効果があるとされている。
茸の類と共に料理すると、解毒作用があるといわれる。
果皮の色素はナスニンと呼ばれるアントシヤンで、化学構造にはなお研究の余地があるが、色素の本体はデルフィニジンである。この色素は、鉄塩と青色の復塩を造りやすい。漬物に鉄釘やミョウバンを加えると、鮮やかな青色を呈するのはこの理由による。
【食べ方】
果実が大きくて古くない限り、塩をふる必要はない。しかし塩をふる方法は、ナスが吸い込む油の量を減らすためや、ピクルスの下ごしらえとして有効である。
アジアの料理では炒め物、煮込み、羊肉の煮込みやとろ火で似る料理に使われる。
インド、アフガニスタン、イランでは辛いピクルスに使われる。
イタリアでは前菜用にピクルスにされる。
地中海沿岸の多くの国々で好まれ、ギリシアのムサカ、フランスのラタトゥイユ、イタリアのメランザーネパルミジャーナ、シチリアのカポナータに使われている。
参考文献
- 青葉高 2013 ナス, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 33₋44.
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ナス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 209.
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形態
- 葉の形質
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葉は柔らかくて緑色をしている。綿毛があり、楕円形で浅い裂片がある。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ナス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 209.
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- 花の形質
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美しい星形のスミレ色から明るい青の、花弁が下垂した花が咲く。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ナス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 209.
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- 果実の形質
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果実は白から黒に近い紫で、直径が 20 cmまでになる。
品種によっては、小さい白、藤紫、オレンジがかった赤などの色の果実をつける。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ナス, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 209.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン
関連情報
- その他
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茄子紺という言葉があるように、日本で茄子の色といえば紫黒色ということになり、この色の濃く鮮やかな果実が好まれている。
この色はナスニンというアントシアニンが、果実の亜表皮組織などに形成されたもので、光、特に波長の短い光が当たらないとこの色素は形成されない。
そこで、果実のごく若いうちから黒い袋で果実を被っておくと、白い果実になる。茄子の果実はへたで被われる部分に生長帯があるため、その日に伸びだした部分は白く、何日も光に当たった部分ほど色が濃くなる。そしてへたに近い部分に何本かの縞模様ができる。
近年はハウス栽培が多いが、この場合直接光が当たらなかったりすると、果実の色が鮮やかに発色しない。そこで果実によく光が当たるように、葉を摘んで栽培している場合がある。
このアントシアニンの形成は品種の遺伝的特性によるもので、品種によって色のつき方は同様ではない。
金沢市近郊で古くから栽培されているへた紫と呼ぶ品種は、へた下の光の当たらない部分も赤紫色に着色する。このため、白い部分がないとして歓迎しない地方もある。しかし金沢市付近では、このへた紫は肉質が柔らかく皮が薄く、色つやがよくて日持ちのよい茄子として漬物や煮物用に喜ばれ、また各地で一代雑種の親に用いられた。
大阪府の泉州水茄は色が鮮やかでなく見栄えはしないが、肉質が柔らかいことから近年注目されている。
茄子のなかにはアントシアニンが形成されない品種もある。
この場合葉緑素が形成されると、淡緑色のいわゆる青ナスになり、葉緑素も形成されないと白色か黄色になる。
東南アジアなどの外国では、白ナスが多い。
我が国でも『農業全書』に記されているように、江戸時代から白ナスが存在しており、現在でも各地に少しずつ残っている。
有名なわが国で最初の一代雑種になった埼玉県の玉交茄は、白茄×真黒の組み合わせであった。
参考文献
- 青葉高 2013 ナス, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 33₋44.
最終更新日:2020-05-18 ハリリセンボン