- 解説一覧
- ジャガイモ(Solanum tuberosum)について

基本情報
- 原産地
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南アメリカのアンデス地方
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ジャガイモ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 162.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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別名:ジャガタライモ、バレイショ
参考文献
- 青葉高 2013 ジャガイモ, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 359-365.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン
- 人間との関係
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ジャガイモの近縁種は現在中南米に数多く自生している。
栽培種のジャガイモは四倍体種で、南米のペルーとボリビアの両国にまたがるアルティプラノ高原のチチカカ湖周辺が発祥地と考えられ、我が国の田中正武氏らも栽培種の祖先と思われるものの自生を発見している。
ペルーやチリの古墳からはジャガイモの形の描かれた土器が出土し、この付近では六世紀より以前から栽培され、インカ文明のエネルギー源になったと考えられている。
栽培種はその後周辺に伝わり、コロンブスの新大陸発見当時はメキシコからチリの南部でも栽培されていた。
ヨーロッパへのジャガイモの伝搬はスペイン人によるもので、スペインのメキシコ征服の1521年以後、またはインカ征服の1540年以後といわれ、1568年にはイギリスにも伝わった。
ヨーロッパでは最初は珍奇な植物として栽培した程度であったが、やがて食用作物として価値の高いことが認められ、北ヨーロッパでは特に重要な作物になり、品種の改良も進められた。
アメリカへは17世紀、インドには16世紀に伝わり、東南アジアにも次第に広まった。
我が国には、オランダ人によって、ジャワ島のジャガトラ(ジャカルタ)から長崎に入った。
その年代は1603年(慶長8)とされたり、『長崎両面鏡』に1576年(天正4)南京芋長崎に来るというのが最初であるなど諸説がある。
またこれとは別に北海道には寛政年間(1790年頃)、ロシアからサハリン経由で伝えられた。
我が国では当時嗜好に合わずあまり栽培されなかったが、少しは飼料に用いられ、宝永の頃(1704年頃)からは食用にも供された。
その後天明3、6年と天保年間の何回もの凶作年に救荒作物として価値が認められ、また高野長英が『救荒二物考』(1836年)を著して、ソバとジャガイモの栽培、利用、効能などを記述したこともあって次第に普及し、普通の作物として栽培されるようになった。
ジャガイモの我が国内での伝播については地方名と共に多くの言い伝えが残っている。
『二物考』では馬鈴薯、和名ジャガタライモとし、甲州イモ、チチブイモ、アップラ、清太夫イモ、八升イモ、テイゾウイモなどと別名をあげている。
清太夫薯については、「甲斐国に於いて明和年間(1770年頃)代官中井清太夫の奨励によりて早く該地に藩植し、今に至るまで清太夫薯の名あり、是より信濃、飛騨、上野、武蔵等にも伝わりしにや、信州にて甲州薯と呼び、飛騨にては信州薯と唱う」と記されている。
また飛騨高山の代官幸田善太夫は寛延元年(1748年)信州からジャガイモを導入して栽培を奨励し、その後天保飢饉に大いに役立った。そこで住民はジャガイモを善太夫薯、お助け薯と呼んだという。
【食べ方】
ラセットまたはベーキングポテトはデンプンの含有量がもっとも多いので、焼く、揚げる、オーブンでの調理に最適である。
幅広い用途に使われるジャガイモはスープ、煮込み、マッシュポテトに向く。
赤いジャガイモや新しいジャガイモはデンプンが少なく、茹でる、クリーム状にするほか、冷たいサラダに最適である。
冬に心地よく体を温める料理は、皮をつけたままオーブンで温めたジャガイモに、サワークリームとチャイブを添えたもの、または拍子木切りにしてつくるフレンチフライやウェッジという人気料理である。
パン、ゆでだんご、コロッケ、ニョッキにも使われる。
【その他の用途】
ジャガイモはデンプンを含み栄養価が高く、周年出荷されて単価は比較的安く、和洋各種の料理に用いられて、大衆的必需食品になっている。
また青果としてばかりでなく、デンプン製造など加工原料としても需要が高く、現在我が国の収穫量の半分以上が加工用に向けられている。
店頭に並んでいる片栗粉は皆ジャガイモデンプンと思われる。カタクリから作ったものはない。
ジャガイモはこのほか飼料用などにも用いられ、輸入もされている。
参考文献
- 青葉高 2013 ジャガイモ, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 359-365.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン
生態
- その他生態
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ジャガイモには休眠性があるので掘取り後数ヶ月間は室内においても芽が出ない。
このため初夏どりの内地産のものは秋まで、秋どりの北海道産のイモは翌年春まで芽が出ないで市場に出回り、利用者にしてみれば一年中若々しいイモが食べられる。
そして休眠から覚めると、植え付けなくても芽が伸び出す。
ソラニンという有毒物質を微量含み、特に新芽の部分に多い。
参考文献
- 青葉高 2013 ジャガイモ, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 359-365.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン
関連情報
- 栽培方法
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塊茎と切って、よく耕した土壌に最後の霜が下りる直前に植えて繁殖させる。
植物が成長するにつれ、塊茎の生成を促進するように、うねのまわりに盛り土をする。
品種によっては種子で繁殖させることもできるが、通常、種子は新しい品種を開発するか、品種改良のためにとっておく。
ほとんどのジャガイモの品種は、生育時期の最後に植物が枯れてから収穫する。
イモは湿度が低く、気温も低い条件のところで保存しなければならない。保存に適した温度は7.2℃以上である。
低温にすると、ジャガイモはデンプンを糖に変えるため、味と食感が変わる。
参考文献
- バーバラ・サンティッチ/ジェフ・ブライアント 2012 ジャガイモ, バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(著) 世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理. 柊風舎. 162.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン
- その他
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北ヨーロッパや北海道が主産地になり、北海道では4〜5月に植え付けて、10月に収穫する。
内地では夏を避けて春植えて初夏どりか、初秋植え晩秋どりの栽培が行われる。後者がいわゆる二期作である。
ジャガイモは開花するが、通常結実しない。そこでタネイモを植え付けて栽培する。
近年種子で増殖する品種もあり、シード・ポテトなどと呼ばれている。
そしてジャガイモ栽培の天敵となるウイルス病はタネイモから伝染することが多い。
そこでウイルスの心配の少ない北海道の採種圃で生産されたタネイモが内地の春作に用いられている。
参考文献
- 青葉高 2013 ジャガイモ, 青葉高(著) 日本の野菜文化史事典. 八坂書房. 359-365.
最終更新日:2020-05-19 ハリリセンボン