- 解説一覧
- ヤマハギ(Lespedeza bicolor)について
目次
基本情報
- 和名の解説
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①ハエキ(生芽)の意味。毎年古い株から芽を出すことから。『万葉集』でも「芽」、「芽子」の字を用いてハギと読ませる歌が多い。
②ハヘクキ(延茎)の意味。
③養蚕に用いる雑木の小枝を束ねたものをハギと呼び、それに似るため。
④ハヤクキバム(早黄)の意味。
⑤ハリキ(葉黄)の意味。
⑥ハリキ(刺生)の意味。キ(生)は草の意。
⑦ハキ(葉期)の意味。
⑧アキ(秋)の転。
参考文献
最終更新日:2020-04-28 キノボリトカゲ
- 人間との関係
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庭園樹、生垣、鉢植え、切り花など観賞用のほか、砂防用などとして斜面などに植栽される。
また、牧草として家畜の餌となる。枝は束ねて萩箒とされたり、小屋の屋根葺、茶室の萩天井に利用した。
新芽は萩茶とし、種子は粉にして粥や飯に混ぜて食用とした。
ハギは秋の花の代表として最も親しまれた植物で、『万葉集』にはハギの花を詠み込んだ歌が141首見られ、草本類では最も多い。
山上憶良の「萩の花雄花葛花罌麦の花女郎花また藤袴朝顔の花」(8・1538)により、秋の七草として知られる。
万葉の人々は、秋、ハギの花を開くのを心待ちにした。「わが待ちし秋は来たりぬ然れども芽子の花そもいまだ咲かずかる」(10・2123)。待ちに待ったハギの花が咲くと、人々はハギの花見に野山へと出かけて行った。
「秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな芽子が花見に」(10・2103)。『万葉集』に詠まれる141首のハギの歌のうち、25首は栽培されているハギを歌ったもの。
「秋さらば妹に見せむと植えし芽子露霜負ひて散りにけるかも」(10・2127)のように、ハギには恋に関係する歌も多い。恋が栽培のきっかけとなり、そして歌になった。
『万葉集』にはハギとシカ、ハギと露を取り合わせた歌が多く、ハギには鹿鳴草、玉水草の雅名がある。
平安時代以降、ハギは衣類、調度品などに絵模様に描かれた。とくに蒔絵の文様にしばしば使われた。ハギを散りばめた蒔絵、螺鈿や友禅染は、高級な美術工芸品となっている。
「萩」は国字。秋に花が咲く秋草の代表として草冠に秋の字をあてた。「萩」という字がはじめて使われる文献は『和名類聚抄』で、平安時代以降、萩の字を用いるようになったと思われる。
ぼた餅の別名を「萩の花」「萩の餅」、または略して「おはぎ」と呼ぶ。色や形をハギの見立てたもの。
萩襲は襲の色目の名。秋の萩の襲は表が青で裏が赤または紫、秋の萩の襲は表が蘇芳で裏は萌葱である。
ハギを図案化した紋所に、抱き萩、萩の丸、束ね萩などがある。
季題は「秋」。「いづくにかたふれ臥とも萩の原 曽良」「ほろほろと秋風こぼす萩がもと 召波」「萩刈りて虫の音細くなりにけり 虚子」などの句がある。
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形態
- 葉の形質
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葉は3出複葉で互生し、長さ 1~5 ㎝の細長い葉柄がある。小葉は広楕円形~広倒卵形で先端は円形または多少へこむ。
若い枝から出た葉の先端は鋭形。基部は円形でごく短い柄がある。表面は緑色で初め微毛があるが、のちに無毛。裏面は白色を帯び、微毛かときに無毛のこともある。
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- 花の形質
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花は新梢の上部の葉えきから多数の長い総状花序を出し、紅紫色の蝶形花を開く。花弁は長さ 1 ㎝ぐらいで翼弁は色が濃い。がくは深く4裂する。
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生態
- その他生態
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繫殖は実生、さし木、株分けによる。さし木は当年枝では3月中旬、前年枝では6月下旬から7月上旬に行う。
枝がよく伸長するので、地上部を切り取り新梢を萌芽させる。とくに施肥の必要はない。
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