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- Panulirus japonicusについて
Panulirus japonicus
【IUCN】評価するだけの情報が不足している種
- 【 学名 】
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Panulirus japonicus (Von Siebold, 1824)
目次
基本情報
- 生息状況
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イセエビ漁は、近年の乱獲がたたり、漁獲が振るわなくなっている。各地でそれぞれ漁獲時期や漁場、網の使用枚数などに制限が加えられているが、資源は減少する一方である。また、体形も小型化し、体長が 40 ㎝近いものはきわめて稀になっている。
参考文献
最終更新日:2020-09-28 En
- 人間との関係
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季題は<冬>
「伊勢海老の 月にふる髭 煮らるると 加藤楸邨」
「生きて着く 伊勢海老に灯を ともすべし 清水径子」
ほかのエビにくらべて甲羅が硬く、その姿が具足を付けた武士のように立派なので、古くから縁起物として祝儀の膳に用いられてきた。
『和漢三才図会』に、指は毛のようで尾の端は花びらのようであり、これを海老と称して賀祝の際の肴とすると記される。また、サザエが変じてイセエビとなるという俗信もある。
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形態
- 成体の形質
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体はやや縦偏しており、強く硬い甲殻を持つ。頭胸部はやや円筒状で、大小多数の棘が散在する。頭胸部の前方上部には強い眼上棘を2本備えるが、額角を欠く。
頭部前方に長短2組の触角をもち、下側に位置する第2触角は強く長い。第2触角の基部には発音器がある。
胸脚は歩行に適しており、よく発達している。胸脚の先端は尖っているが、雌の第5脚の先は不完全な鋏状になっている。
腹部はよく発達する。第6腹肢は尾節とともに大型の尾扇を形成する。
生時の体色は赤茶色。
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生態
- 生息環境
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成体は浅海の岩礁域に生息する。生息水温は20〜26℃。
夜行性で昼間は岩礁や人工魚礁、防波堤の亀裂や穴、転石の間隙に入っており、夜間に周辺を歩いて餌を探す。
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- 食性
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浮遊生活をするフィロゾーマ幼生期には動物プランクトンを餌とするが、稚エビ以降は貝類やカニ、ヨコエビ、ウニなどを捕食する。また、老成した大型個体は、フジツボ類や貝類を多く摂食するようになる。
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- ライフサイクル
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産卵期は春から夏で、産卵水温は22〜26℃。千葉では6〜8月、三崎で7〜8月、和歌山で5〜9月が産卵盛期となる。
産卵から孵化するまでの期間は、水温21℃で約50日、25℃で32日前後。この間、孵化するのは日没後から1〜2時間後であることが多い。
孵化直後の幼生は体長 1.5 ㎜前後で、フィロゾーマ(phyllosoma)幼生と呼ばれる。半透明の薄板状で、左右に4本ずつの長い付属肢をもち、クモのように見える。
フィロゾーマ幼生が多く出現するのは、三浦半島で7〜9月、南伊豆で6〜8月、徳島で7〜8月。フィロゾーマ幼生は沿岸・沖合域で8〜11ヶ月の間、浮遊生活をしながら脱皮と成長を繰り返す。
体長 3 ㎝弱の大きさになると海底に沈降し、成体によく似た体形のプエルルス(Puerulus)幼生に変態する。プエルルス幼生は、体が透明であることからガラスエビとも呼ばれる。出現時期は春から秋で、伊豆では4〜5月と8〜10月に多い。変態初期のプエルルスは遊泳行動も示すが、成長とともに他物に付着したり海底の岩礁間で生活するようになる。数回の脱皮をしたのちに体長 25〜30 ㎜の稚エビとなる。
稚エビの出現時期は夏で、和歌山や五島列島では7〜9月に多い。その後1年で体長 9〜12 ㎝、2年で 15〜18 ㎝、3年で 19〜22 ㎝に成長する。体長 15 ㎝前後から成熟し始める。
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- その他生態
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通常の移動速度は18〜23日間で100〜600 mである。しかし、ときに長距離を移動することもあり、房総半島では標識放流した個体が16日後に 29 km離れた場所で再捕獲されたことがある。
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関連情報
- 採集方法
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刺網やイセエビ籠、素潜りで漁獲する。また、三浦半島や伊豆地方では、イセエビを好んで捕食するタコを利用した見突漁も行われている。タコを棒の先に付け、イセエビが潜む岩礁間隙に差し入れ、慌てたイセエビが飛び出してくるところをタモ網で捕獲する。この漁法は、かつては伊勢地方でも行われていた。
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- 味や食感
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身は高タンパク質、低脂肪でカリウムやリンが比較的多く、ビタミンB群、ナイアシンなどが含まれる。
頭部のミソは味噌汁に入れると風味があり、塩辛にしてもうまい。
ボイルして洋風ソースをかけたり、フライ、クリーム煮、また中国料理にして食べても美味である。
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