- 解説一覧
- ケガニ(Erimacrus isenbeckii)について
目次
基本情報
形態
- 成体の形質
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甲はやや縦に長い円みを帯びた四角形で、あまり硬くない。
額の中央部はV字形に切れ込み、その左右にそれぞれ2棘が並ぶ。その両側から側縁に向かって、三角形で先端の尖った5棘が鋸状に並ぶ。左右の第1脚(挟脚)は、ほかの歩脚のいずれよりも短い。
甲や各脚の表面には、尖った顆粒と短毛が密生している。
雄の腹部は幅が狭いが、雌の腹部は幅広く、簡単に区別できる。
体色は黒みがかった赤橙色。
参考文献
最終更新日:2020-08-25 En
- 似ている種 (間違えやすい種)
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北海道南部から東北地方沿岸には、近縁種のトゲクリガニ Telmessus acutidens が生息しており本種に似る。
しかし、本種に比べてトゲクリガニは甲が横に広く、菱形を呈しているので簡単に識別できる。
参考文献
最終更新日:2020-08-25 En
生態
- ライフサイクル
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交尾期は夏から冬で、釧路沖では8月から翌年の1月の間。
産卵は交尾の約1年後の秋、または翌年の春に行われる。したがって、雌の産卵間隔は早くとも2年間となる。北海道での産卵盛期は10〜11月。
産出されるときに雌の体内に保管されていた精子によって受精した卵は、雌の腹部内の内肢に付着して卵塊となる。産卵数は甲長 60 ㎜前後の個体で4万〜6万粒。産卵から孵化するまでの期間は1年から1年半と長い。
孵化直後の幼生は全長 2〜3 ㎜のゾエア幼生で、4回の脱皮をして全長 6〜7 ㎜に成長したのち、5回目の脱皮でメガロパ幼生に変態する。メガロパ幼生は全長 7〜8 ㎜。
北海道周辺でケガニのゾエア幼生が出現するのは3〜6月、メガロパ幼生は6月以降に出現する。
ゾエア・メガロパ幼生は沿岸近くで浮遊生活を行い、昼間は表層から中層にかけて分散するが、夜間は表層近くに浮上して集まる。
メガロパ幼生は6〜7月ごろに脱皮し、甲長 5 ㎜前後の稚ガニに変態して底生生活へ移行する。稚ガニの着底場所は、沿岸の水深 20〜50 mの砂泥底に多い。
その後、生後2年までは3〜6回脱皮する。雌は3歳以降は2〜3年間隔で脱皮を行うため、雄よりも成長が悪くなる。脱皮の間隔は複数年に渡り、次第に成長量が少なくなっていく。
着底後1年で甲長 2〜3 ㎝、2年で 4〜5 ㎝に達する。その後、雄は3年で 5〜7 ㎝、4年で 7〜9 ㎝に達し、雌は3〜5年で 5〜6 ㎝、6〜8年で 6〜7 ㎝になる。
参考文献
最終更新日:2020-08-25 En
- 生殖行動
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交尾期の雄は、雌が脱皮して軟甲になるまで、歩脚を用いて雌を背後から抱える。雌は雄に抱えられたまま脱皮を行う。やがて雌が脱皮すると雄は雌を仰向けにして上に乗り、歩脚で雌を抱えながら交尾針を雌の生殖孔に射し込んで精莢を雌の体内に送り込む。それに続いてセメントのような物質で雌の生殖孔を塞ぐ。
参考文献
最終更新日:2020-08-25 En
関連情報
- 味や食感
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肉は柔らかく、北海道ではもっとも美味とされる。脚やハサミの欠落がなく、持ってみて重い感じのするものがよい。冷凍物は自然解凍した後、塩と酢をわずかに加えた湯で茹で直すか、蒸し直すと水っぽさがなくなる。
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最終更新日:2020-08-25 En