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スナメリ(Neophocaena phocaenoides)の分類 Phocoenidae
スナメリ(Neophocaena phocaenoides)の概要 Neophocaena

スナメリ(Neophocaena phocaenoides)

危急 (VU)

【IUCN】絶滅の危険が増大している種

【 学名 】
Neophocaena phocaenoides (G. Cuvier, 1829)

基本情報

大きさ・重さ

サイズ:最大体長は雄 194 cm、雌 180 cm。

参考文献

  • 白木原美紀 1996 ネズミイルカとスナメリ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 84₋85.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

分布

仙台湾から東京湾、伊勢湾・三河湾、瀬戸内海、有明海、橘湾、大村湾などに多い。水深 50 m以浅で海底が岩盤でないところを好む。ペルシア湾から、インド、東南アジア、中国、朝鮮半島西岸をへて日本近海まで分布している。

参考文献

  • 白木原美紀 1996 ネズミイルカとスナメリ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 84₋85.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

別名・方言名

ゼゴン、スザメ、ナミノウオ

参考文献

  • 白木原美紀 1996 ネズミイルカとスナメリ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 84₋85.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

分類学的位置付け

ネズミイルカ科

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 スナメリ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 183.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

形態

成獣の形質

スナメリは背びれがなく、鳥のくちばしのような吻をもたない。全身淡灰色から暗灰色のイルカである。背びれの代わりに、胸びれから尾びれ付け根付近にかけての背中側の正中線上に隆起部がある。

参考文献

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

幼獣の形質

新生子の体側には特有のしわがあるが、すぐに消える。上あごには数本の白い感覚毛があり、へその緒の断片が残っているが、これらもまもなく消失する。体長 90 cm程度に成長すると、上あごから先に歯が生えはじめる。上下の歯が出揃うころになると、ミルク以外に小魚、小イカを食べるようになる。その後、餌生物の種類が増加し、生後1年以内に離乳すると考えられている。

参考文献

  • 白木原美紀 1996 ネズミイルカとスナメリ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 84₋85.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

生態

生息環境

アラビア海、ベンガル湾、南シナ海、東シナ海などの沿岸地域に生息する。日本近海でスナメリの多い海域は、西九州、瀬戸内海、伊勢湾、三河湾、仙台湾周辺などである。瀬戸内海には4900頭、有明海・橘湾には3000頭のスナメリが生息すると推定されている。

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 スナメリ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 183.
  • 白木原美紀 1996 ネズミイルカとスナメリ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 84₋85.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

食性

餌はコノシロ、シログチ、テンジクダイ科、ハゼ科、イカ類、タコ類、クルマエビ類などである。

参考文献

  • 白木原美紀 1996 ネズミイルカとスナメリ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 84₋85.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

出産

雌は1年間の妊娠期間の後、体長 80 cmの子を1頭産む。有明海と瀬戸内海・太平洋沿岸域では周産期が異なっている。有明海では秋から春にかけて出産するが、瀬戸内海以北では4月をピークに春から夏にかけて出産する。

参考文献

  • 白木原美紀 1996 ネズミイルカとスナメリ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 84₋85.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

その他生態

スナメリは体長 2 m以下、背びれのない小型ハクジラである。背びれがないため、発見が難しい。東京湾以北では「スナメリ」、瀬戸内海沿岸では「デゴンドウ、ナメソ、ナメクジラ」、伊勢湾周辺では「スザメ、スンコザメ」、西九州では「ナミノイ(ウ)オ」などと呼ばれている。瀬戸内海や有明海では、フェリーから泳いでいる姿を見ることができる。岸寄りでの発見が概して多く、瀬戸内海では岸から1マイル以内に多い。同じネズミイルカ科のほとんどの種と同様、水中から飛び出すことはほとんどないが、多くのクジラのように、垂直に体を固定し、水面より上に頭を持ち上げるスパイホッピングを行う。イルカのものに似たふくらみが額にあり、噴気孔の後ろにくぼみがあり、わずかに突き出した口吻をもつ。 船には無関心で、船首波に乗って遊ぶことはしない。船と接触しそうになると、潜水したり遊泳方向を変えて回避する。水面にはほとんど波を立てずに呼吸し、ジャンプはめったにしない。ふつうは1~数頭の小群で泳いでいる。親子づれに追従する、1、2頭の大型個体を目撃することがある。 性別を船上から判定することは難しいが、それらの体長が母親と同じくらい、あるいはそれより大きければ、交尾の機会を待つ雄かもしれない。実際、泌乳しながら妊娠している雌が確認されている。ときどき見られる大群は、餌を追ってたくさんの群れが一時的に集まったものらしい。散開してゆっくり泳いでいたいくつかのスナメリの群れが、いっせいに魚群の方へ向かい、そのまわりを勢いよく泳ぎ回るのが観察されている。このような群れには、カモメ類などの鳥がついていることが多い。冬に西九州の橘湾で、少なくとも117頭のスナメリからなる大群が確認されたことがある。 胸びれの付け根付近から尾柄までの背中の正中線上には、小突起の散在する隆起部がある。これは、感覚器官としての働きをもつと考えられている。中国の長江(揚子江)では、生まれた子をこの部分に背負って泳いでいるスナメリが観察されている。ただし日本ではそのような行動の観察例はない。水族館で飼育されている個体は、背面の隆起部を使ってこすりあいを頻繁に行う。

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 スナメリ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 183.
  • 白木原美紀 1996 ネズミイルカとスナメリ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 84₋85.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

関連情報

研究されているテーマ

日本のスナメリの飼育個体に関する研究は、1960年代、伊勢湾産個体を対象として、鳥羽水族館によって開始された。巻き網による積極的な捕獲も行われ、野外では観察が困難な出産や育児に関する知見も得られた。また飼育下におけるスナメリの鳴音が録音され、イルカ類の鳴音の1つであるホイッスルをスナメリが発しないことが明らかにされている。野生個体に関しては、長崎沿岸海域で形態学的、生態学的研究が行われた。当時、橘湾沿岸域では、1ヵ月間に50頭以上の標本が集まったという。1970年代になると、瀬戸内海の島々を繋ぐフェリーを用いて、スナメリの分布、生息数調査が行われた。今日、瀬戸内海東部におけるスナメリの生息数の減少を検知するにいたった貴重な研究である。それ以降、日本人によるスナメリの生態学的研究は飛躍的に多様化した。分布・移動、生息数、生活史、形態・分類、遺伝、個体群構造、音響、飼育個体の行動、寄生虫、汚染物質などに関する研究成果が次々と公表されている。スナメリに関する研究は、パキスタン、中国、香港などでも行われている。近年では、スナメリの漂着、迷入、目撃に関する記録が日本鯨類研究所が発行する『鯨研通信』のストラディング・レコードや国立科学博物館のホームページを通して広く公表されている。

参考文献

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

その他

頭骨の形態にも違いがみられる。伊勢湾のスナメリは頭骨の幅が狭い。大村湾のスナメリは、距離的に近い有明海産より瀬戸内海産のスナメリに似ている。これらの事実は、彼らが地域的にあまり交流がないことを示している。

参考文献

  • 白木原美紀 1996 ネズミイルカとスナメリ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 84₋85.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

種・分類一覧