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- シロイルカ(Delphinapterus leucas)について

シロイルカ(Delphinapterus leucas)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Delphinapterus leucas (Pallas, 1776)
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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体長:4~5.5 m
体重:1~1.5 t
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 シロイルカ(ベルーガ), ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 196₋197.
- P.ブローディ 1986 シロイルカ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 48₋51.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- 分布
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北半球の極付近、温帯海域から北極海域に分布する。
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 シロイルカ(ベルーガ), ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 196₋197.
- P.ブローディ 1986 シロイルカ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 48₋51.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- 生息状況
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沿岸や河口域を好み、いくつもの孤立した集団が知られる。シロイルカにとって、さまざまな人間活動は現在、捕獲以上の脅威を与えている。カナダのセントローレンス川河口では、環境汚染の影響が心配され、別の地域では水力発電にともなうダム建設、油田開発による環境の変化があげられる。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロイルカ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 72-73.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- 和名の解説
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クジラの仲間では唯一体色がまっ白であることから、この名がついている。
参考文献
- 鳥羽山照夫 1994 海のカナリア シロイルカ, 山田恒史(編) 動物たちの地球 9巻(哺乳類2). 朝日新聞社. 114₋115.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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ロシア語でも英語でも白色を意味するベルーガ(beluga)や、ホワイトホエールと呼ばれる。(鳥羽山, 1994, 114)
多様な鳴音を発し古くから「海のカナリア」の異名を持つことで知られる。(山田ら, 2001, 72)
参考文献
- 鳥羽山照夫 1994 海のカナリア シロイルカ, 山田恒史(編) 動物たちの地球 9巻(哺乳類2). 朝日新聞社. 114₋115.
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロイルカ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 72-73.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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イッカク科
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 シロイルカ(ベルーガ), ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 196₋197.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 人間との関係
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北方住民の人々にとっては、生存をかけた重要な食糧源として現在でも捕獲されている。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロイルカ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 72₋73.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
形態
- 成獣の形質
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体はずんぐりと太く、頭は小さく丸く、吻は短い。背びれはないが、隆起が背中の中央部をはしる。胸びれは小さく、丸みを帯び、成体のオスでは先が反り返る。この胸びれはよく動き、細やかな動きに役立つほか、ゆっくり後進することも可能である。尾びれの後縁は、多くの場合丸く突出する。皮脂はブヨブヨと柔らかく、体はしなやかで、皺ができることが多い。頸椎がまったく癒合していないので、頭がよく動き、ときには90度近くまで左右に曲げることができる。しなやかな動きはこの柔軟な頭の動きに負うところが大きい。上顎には片側9本、下顎には片側8本の歯があり、摩耗が激しいことが多い。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロイルカ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 72₋73.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 幼獣の形質
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出生体長は約 1.6 mで、出生時の体色は暗灰色か褐色を帯びた灰色である。年をとるにつれて白さが増し、やがて5~12歳の間にはまっ白になる。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロイルカ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 72₋73.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
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北極あるいは亜北極海域の沿岸に近い浅瀬や、ときには沖合に生息する。また夏には、越冬地を離れて汽水性の入江や河口に集まる。河を数千 ㎞も遡った記録がある。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロイルカ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 72₋73.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 食性
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多様な群集性魚類、甲殻類、多毛類、ときには軟体動物にも及ぶ。
5頭ないしそれ以上が共同して魚の群れを追い回して、浅瀬や浜に追い上げることもするほか、海底の1尾の魚を追い回すことも上手に行う。かれらは柔軟なくびを左右に動かしつつ、海水を吸い込んだり吹き出したりして、海底に隠れている食物を探り出す。索餌期には厚い皮下脂肪(10~20 cm)をたくわえ、保温にも役立たせる。
参考文献
- P.ブローディ 1986 シロイルカ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 48₋51.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 天敵
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ホッキョクグマ、セイウチ
参考文献
- 鳥羽山照夫 1994 海のカナリア シロイルカ, 山田恒史(編) 動物たちの地球 9巻(哺乳類2). 朝日新聞社. 114₋115.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- ライフサイクル
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シロイルカは北極圏の季節的変化とともに、毎年決まった回遊をする。定着氷縁沖合いの冬の索餌場で越冬すると、流氷域を移動し、各地の暖かい河口域に向かう。妊娠した雌は、個体群によって異なるが4~8月にかけてこの河口域で出産する。母と子の絆は強く、以後約2年間にわたり授乳しこどもの世話をする。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロイルカ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 72₋73.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 鳴き声
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水中の群れから聞こえる声はモーというウシのような声、チューチュー、ピーピー、カチンカチンという声など多様である。一部の声は空中でもよく聞こえる。
参考文献
- P.ブローディ 1986 シロイルカ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 48₋51.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 出産
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雌は5歳以後、雄は8歳以後に性的に成熟する。生息密度が高いと、雄・雌とも成熟は少し遅れるらしい。優位の雄は多くの雌と交尾を行う。交尾後まもなく、浮氷の中を旅して 300 kmも離れた暖かい河口域に6~7月に到着し、ここに8~9月まで留まる。前年の交尾期に妊娠した雌は、ここで1子を産む。妊娠期間は14ヵ月~15ヵ月であり、双子は極めてまれである。河口域にいて出産が近づいた雌は、未成熟な雌に伴われて主群から離れる傾向がある。これらの雌が出産雌を補助するのか、それとも単なる好奇心で行動しているのかは明らかではない。
参考文献
- P.ブローディ 1986 シロイルカ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 48₋51.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 特徴的な行動
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じゃれあって相手の胸びれや尾びれを噛むことがある。
参考文献
- P.ブローディ 1986 シロイルカ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 48₋51.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- その他生態
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シロイルカは一生1つの集団内で生活するが、集団の広がりは季節的に変化し、繁殖場では密集しているが、採食場では広い範囲に分散する。集団内では年齢や性別によって小グループをつくる。成体の雄のグループや、母親と新生児と子どもからなるグループもある。成体の雄のグループが優位な繁殖雄の集まりなのか、一部の優位雄によって群れから締め出された非繁殖雄の集まりなのかは、今のところ明らかではない。定着氷から離れた沖合の冬の採食場では、いくつかの集団が同じ場所で冬を越すが、夏の繁殖期にはそれぞれの繁殖場に戻るので、集団間の交流はないらしい。
ほかのクジラと大きく異なり、夏に皮膚は黄色っぽくなり、そして脱皮をする。
また採食とコミュニケーションにおいて、音響以外に視覚も用いている。
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 シロイルカ(ベルーガ), ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 196₋197.
- P.ブローディ 1986 シロイルカ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 48₋51.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
関連情報
- その他
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極地の規則的な季節的変化に導かれて、毎年定まった回遊をするほか、夏に河口で群生することから、シロイルカの捕獲は容易である。18~19世紀のヨーロッパやアメリカの捕鯨船は、主目的であるホッキョククジラ漁のあとで、数百頭のシロイルカを浜に追い上げて採油し、鯨油の不足分を補ってタンクをいっぱいにしたものである。商業捕鯨で乱獲された後も、地域によって原住民の自家消費用の油、肉、食用の表皮個体群は、捕鯨により数が減っている。また現在、化学物質による水質汚染の脅威にさらされている。
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 シロイルカ(ベルーガ), ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 196₋197.
- P.ブローディ 1986 シロイルカ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 48₋51.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン