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シロナガスクジラ(Balaenoptera musculus)の分類 Balaenopteridae
シロナガスクジラ(Balaenoptera musculus)の概要 Balaenoptera

シロナガスクジラ(Balaenoptera musculus)

準危急種 (EN)

【IUCN】近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

【 学名 】
Balaenoptera musculus (Linnaeus, 1758)

基本情報

大きさ・重さ

サイズ:本種の最大記録は体長 33.6 m、体重 190 tの南半球産の雌であった。北太平洋産の個体は南半球産よりも約 1.5 m小さく、成熟クジラの平均体長は 23.9 m、体重 81.9 tであり、雌が雄よりも平均 1.3 m大きい。

各部長比(%)は頭長23.5、尾長29.4、胸びれ長13.1、胸びれ幅3.7、尾びれ付け根幅5.2である。

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

分布

熱帯から寒帯までの全世界の海洋に広く分布し、日本近海には太平洋側の外洋を回遊の途中通過する。

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

生息状況

シロナガスクジラは19世紀末から20世紀半ばにかけて、その大きさゆえにもっとも厳しい捕獲圧にさらされた。1965年に全面捕獲禁止となったものの、系群の個体数は捕獲開始以前の水準をはるかに下回っている。だが、カリフォルニア沖で摂餌する系群のように回復の兆しを見せている個体群もある。

参考文献

  • 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロナガスクジラ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 60-61.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

保全の取り組み

シロナガスクジラは体が大きく、遊泳速度が速く、死ぬと沈んでしまうので捕獲がむずかしい。
11世紀ころに遡るバスク地方の沿岸捕鯨はもとより、それにつづくスピッツベルゲンやグリーンランドの捕鯨、18世紀以来のアメリカ式捕鯨などの、帆船から手漕ぎボートを降ろしてクジラを追跡する方法では、捕獲することは不可能であった。1860年代は、汽船に搭載した捕鯨砲から、網のついた銛を発射する近代捕鯨法が開発され、シロナガスクジラも捕獲が可能となった。しかし、大量の油が生産されるこのクジラを主対象として、世界の海で大量の捕獲が禁止され、保護がはかられている。
アジア系のシロナガスクジラは、日本では江戸時代から網取り式捕鯨で少数の捕獲がなされてきた。1890年代から近代捕鯨が日本に導入されてから捕獲量が増加し、1910~65年のあいだに2600頭が捕獲され、1966年から捕獲禁止措置が取られた。この個体群は20世紀の初めには約1200頭であったが、1966年までに200頭に減少したと推定される。
その後保護を続けてきた結果、最近の調査で数多くのアジア系シロナガスクジラが目視されているので、アジア系個体群のクジラの数は確実に回復に向かっているとみなされる。アジア系個体群は外洋性なので、沿岸の環境破壊や汚染の影響は少ない。遠洋流し網漁業が近年禁止されたので、これによる混獲の被害も受けないが、海洋汚染が長期的に与える影響については注意を要する。

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

和名の解説

好天の強い日光のもとで水面下の個体を透かして見ると白っぽく見えるため、その様子からシロナガスクジラと呼ばれるようになったものと思われる。

参考文献

  • 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロナガスクジラ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 60-61.

最終更新日:2020-12-14 ハリリセンボン

亜種・品種

世界最大の動物であるシロナガスクジラは、熱帯から寒帯までの世界の海洋に広く分布し、南半球に2つと、北半球に1つの合計3つの亜種に分類されている。北太平洋では東西2つの外洋性個体群のほかに、カリフォルニア湾やカリフォルニア州の沖には沿岸性の個体群が存在する。日本近海に来遊する外洋性のアジア個体群は、太平洋側の外洋に分布し、オホーツク海、日本海、東シナ海にはほとんど分布しないが、20世紀初頭には北九州や朝鮮半島の東西岸で少数捕獲された。ベーリング海にも分布しない。(大隅, 1996)

ピグミーシロナガスクジラ(B. m. brevicauda):南半球と北部インド洋に分布する。体長が短く頭部が比較的大きいが、洋上において識別するのは難しい。(山田ら, 2001, 61)

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.
  • 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロナガスクジラ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 60-61.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

分類学的位置付け

ナガスクジラ科

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 シロナガスクジラ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 212.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

形態

成獣の形質

体形は長い紡錘形で、大きな口は体長の5分の1を占める。上あごは平らで幅広く、背面からはU字形に見える。上あごの口の中の左右にそれぞれ270~400枚の幅広く、真っ黒いくじらひげが、櫛のように垂れ下がっている。下あごは上あごよりも少し前に突き出して受け口になっている。鼻孔は頭頂に1対あり、後方に開いたハの字をなす。下あごからへそにかけての皮膚に、55~80本の長いうねが刻まれている。鎌形の胸びれは大きく長く、直角三角形状の比較的小さな背びれが、体の後端から4分の1に位置する。左右の尾びれは長い鎌形をして、それらが合する後縁中央部にはV字の切れ込みがある。
体色は青灰色を基調とし、その上に刷毛ではいたような淡い模様が重なり広がる。胸びれ表面は白い。

頭部は上から見ると幅広くU字型であることが、一般に直線的に尖った感じのナガスクジラ科のほかの種とは印象が異なり、有効な識別点の1つである。また背ビレの大きさと位置も、ほかのナガスクジラ鯨類との識別点となる。

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.
  • 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロナガスクジラ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 60-61.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

似ている種 (間違えやすい種)

ナガスクジラともっとも間違われやすいが、接近すれば体形・体色と泳ぎ方で判別される。

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

生態

生息環境

地中海、バルト海、紅海、アラビア湾をのぞく世界中に生息する。深い外洋で、おもに水温の低い海域を好む。

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 シロナガスクジラ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 212.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

食性

北太平洋の外洋性の個体群はもっぱらオキアミ類を主食としており、餌の種類の選択性が強い。アジア系ではナガスクジラ、ミンククジラ、ザトウクジラと餌の競合関係にある。餌の集団を発見すると、体を横にして、餌の集団のまわりを旋回し、しだいに輪をせばめて餌集団を濃縮し、口を大きく膨らませて、餌を水と一緒に飲み込み、うねを縮ませ、くじらひげで餌を水からこして食べる。餌生物は表層性であるので、ふつうは索餌のために深く潜水することはない。索餌場では1日に体重の4%以上の餌を食べ、繁殖場では餌を採らないとされるが、回遊時には採食すると考えられる。

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

天敵

唯一の天敵はシャチである。

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

鳴き声

ブーブーとうなったり呻いたりするような鳴き声である。動物の中でもっとも大きく、ときには180デシベル以上の音量になり、1,000 km離れたほかのクジラに聞こえている。

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 シロナガスクジラ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 212.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

出産

母親の胎内で11ヵ月間に体長 7 m、体重 2.7 tに成長した子が、ふつう1頭生まれる。6~7ヵ月で離乳し、母親から離れて生活するようになる。離乳時には体長が約 12 mにまで成長する。生後初期の自然死亡率は高いが、以後は平均年間4.5%となる。雌の平均性成熟年齢は北太平洋では個体数の減少につれて、12歳から9歳に低下した。雌雄とも25歳までに成長が止まり、それ以後の平均体長は北太平洋産のアジア系で雄 23.4 m、雌 24.8 mである。
ほかのナガスクジラ科のクジラと同様に、冬季に低緯度で繁殖場を形成するのが一般と推定されるが、アジア系の繁殖場はいまだに特定されないし、繁殖行動の実態についても分かっていない。
北太平洋産の妊娠率は、1950年代までは25%前後であったが、1960年代には35%に増加したと推定される。したがって繁殖周期は約4年から3年に短縮したことになる。年齢の増加とともに妊娠率は低下するが、更年期はない。

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

その他生態

ふつう単独で遊泳し、大きな群れをつくらない。水面に浮上して、10~20秒間に数回呼吸し、潜水時間は3~10分である。潜水深度は通常は深くなく、200 mが限度と推定される。

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

関連情報

その他

噴気は高く細く、高さは 9 m以上になることもある。

いくつかの内部寄生虫の存在が報告されている。外部寄生物として、まれにペネラ、フジツボ、カメノテ、クジラジラミ(いずれも甲殻類)が見られ、高緯度海域では珪藻の膜が皮膚を覆って、褐色に見える。

参考文献

  • 大隅清治 1996 シロナガスクジラ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 36₋37.
  • 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 シロナガスクジラ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 60-61.

最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン

種・分類一覧