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- ホッキョクグマ(Ursus maritimus)について
ホッキョクグマ(Ursus maritimus)
【IUCN】絶滅の危険が増大している種
- 【 学名 】
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Ursus maritimus Phipps, 1774
基本情報
- 大きさ・重さ
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体長:2.1~3.4 m
肩までの高さがおよそ 1.6 mにもなる。
体重:400~680 kg 雌 300 ㎏、雄 600~700 ㎏にもおよぶ。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 ホッキョクグマ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 16-17.
- J.W.レンファー 1986 ホッキョクグマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 104₋105.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 分布
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北アメリカ、グリーンランド、ノルウェー、ロシアの北極地方に分布する。
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ホッキョクグマ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 235.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 保全の取り組み
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北極海周辺では先住民による伝統的な捕獲・利用が行われてきた面があるので、アメリカ合衆国、カナダ、ノルウェー、デンマークなどは、先住民の生活を守りながら、ホッキョクグマの捕獲・取引を厳しく制限する政策を考案してきた。合衆国の海獣保護令のほか、ワシントン条約でも規制が定められ、IUCNからは危急種としてリストアップされている。毛皮に商品価値があり、増殖が遅いという点からも、本種の生息状況を継続的にモニターし、その保護策を検討し続ける必要がある。
ホッキョクグマの保護に関する1973年協定によって、飛行機と大型モーターボートを使っての狩猟と、伝統的な手法での狩猟が行われていなかった地域での狩猟が禁止され、公海は事実上のサンクチュアリ(聖域)となった。この協定はまた、関係国にホッキョクグマを含めた生態系の保護を訴えており、なかでも特に巣ごもりと採食を行う場所と、移動ルートの保護の必要性を強調している。
そしてさらに、関係国は国内での調査を実施するほかに、複数の国の領土・領海にまたがって分布する個体群についての共同研究と保護・管理を行うこと、そして調査結果とデータの交換をとり決めている。付帯決議文は、毛皮につける標識システムの統一と子グマ、子づれの雌グマ、そして巣穴の中のクマの捕獲禁止を要請している。絶滅のおそれのある野生動物国際取引に関する委員会は、生きたホッキョクグマや輸出される毛皮などの記録を残すよう、調印国に要請している。各個体群の分布がある程度切り離されていることは、1国のレベルでの保護管理を容易にしてきた。狩猟の制限は国によってかなり違っている。カナダでは主として海岸地方のエスキモーに、自己消費用の肉と毛皮、取引用の毛皮のために年に約600頭の捕獲を許可している。またエスキモーのガイドをつけることを条件に、許可を受けたハンターによるスポーツハンティング(年15頭以下)も行われている。アメリカ合衆国の海獣保護条例(1972)は、ホッキョクグマの保護管理権を州政府から連邦政府に移譲し、狩猟は年約100頭の捕獲をアラスカエスキモーにだけ限って許可している。グリーンランド(デンマーク領)では、エスキモーと長期在留者が生活と毛皮取引きのために年125~150頭をとっている。ノルウェーは、最近の調査結果が前回の個体数より減っているため、スバールバル諸島での狩猟をほぼ全面禁止している。グリーンランドの個体群はソ連にまたがって分布しているが、ソ連では1956年以来狩猟は禁止され、わずかに数頭(年10頭以下)の子グマが動物園用に捕獲されているに過ぎない。
参考文献
- J.W.レンファー 1986 ホッキョクグマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 104₋105.
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 ホッキョクグマ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 16-17.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 別名・方言名
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俗にシロクマと呼ばれることが珍しくない。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 ホッキョクグマ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 16-17.
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- 分類学的位置付け
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食肉目 クマ科
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 ホッキョクグマ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 16₋17.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 人間との関係
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ホッキョクグマの生息数は、総計およそ2万頭と推測されている。毛皮は良質で、また肉は北極圏では貴重なタンパク源となるため、狩猟の対象となってきた。
ホッキョクグマに関する世間の関心は、北極での人間活動、とくに石油探査とその開発が活発になった1960年代に大きくなった。狩猟が盛んになったのもその時期である。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 ホッキョクグマ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 16₋17.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
形態
- 成獣の形質
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ホッキョクグマはクマ科で最大の種である。トラやライオンと比較しても一回り大きなサイズを示すため、現在生きている陸上の肉食獣でもっとも大きな種ということができる。
クマ独特のがっしりした体形を示すが、ほかのクマ類に比べて首が細長く見え、また四肢もスマートなシルエットを見せる。毛色は少し黄色味を帯びた白色をしている。
厚い体毛と皮下脂肪で低温をさえぎり、前肢を巧みに動かして氷海を泳ぐ。細長い首は、海中から呼吸をするための適応と考えられている。白い体毛には、雪と氷の中で姿を隠すカモフラージュ効果がある。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 ホッキョクグマ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 16-17.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
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本種は陸獣であるが、事実上海上を主たる生活圏としている。
ユーラシアから北アメリカ大陸の北岸、カナダ極域やグリーンランドの沿岸部、いくつかの島々では陸上にあがっているものの、一般に北極圏の凍結した海の上、あるいは海中を移動するのが基本的な生活である。
ホッキョクグマは、風と波がたえず氷を動かし、大きな氷塊とできたばかりの氷、海氷が入り混じっているところに好んで棲む。そのようなところではアザラシが採りやすいのである。そのような地域はだいたい海岸から 300 km以内である。地域によっては陸の上で生活することもあり、出産用の巣穴を陸上に造る雌や、氷の残る海岸や大きな湾のそばの陸の上で夏を過ごすものたちがいる。
参考文献
- J.W.レンファー 1986 ホッキョクグマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 104₋105.
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 ホッキョクグマ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 16-17.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 食性
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主にワモンアザラシ、アゴヒゲアザラシ、タテゴトアザラシを食べる。忍び寄ったり、アザラシが呼吸のために浮上する氷穴の前で待ち伏せたりして狩りを行う。食物が少ないときには、長い期間絶食することができる。特に海の氷が溶けたために沖に出られず、海岸までしか行けない場合は、海藻やコケ、果実を少し食べるだけで、長いときには5ヵ月も生存できる。
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ホッキョクグマ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 235.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- ライフサイクル
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交尾後、受精卵の着床が遅延し、その間に雌は雪を掘って深い巣穴をつくる。着床を遅らせることで見かけ上長い妊娠期間を経た雌は、1月頃に出産する。新生児は体重 600 g程度と非常に小さい。産子数は2頭のことが多い。
こどもは誕生後約3か月間、巣穴の中で母親のミルクをもらって育ち、穴から姿を見せるときには、体重 10 ㎏ほどに成長している。分娩後母親は2年以上こどもと行動をともにし、ミルクや食物の供給などの子育てを行う。性成熟に達するには、生後5~6年を必要とする。
参考文献
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 ホッキョクグマ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 16₋17.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 生殖行動
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繁殖期にはほかの個体に対して攻撃的になり、ときには子グマを殺してしまう。ホッキョクグマの繁殖にはまだわからないことが多いが、交尾は春から初夏にかけて行われる。広い雪原で雄は嗅覚を頼りに、発情雌を探し当てているらしい。
参考文献
- J.W.レンファー 1986 ホッキョクグマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 104₋105.
- 山田格・倉持利明・遠藤秀紀・西海功 2001 ホッキョクグマ, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. 16₋17.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 出産
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妊娠期間は195日~265日と比較的長い。妊娠したクマは11~12月には巣穴の候補地を見つけ、産室を掘る。ふつうは、海岸に沿った雪のふきだまりの中であることが多い。子グマは12~1月に生まれ、その数は1~3頭であるが、平均産子数は1.6~1.9頭と推定される。
参考文献
- J.W.レンファー 1986 ホッキョクグマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 104₋105.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- その他生態
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ホッキョクグマは1日に 20 km、あるいはそれ以上の移動をする。アラスカ沿岸で追跡された1頭のクマは、1年間に 1119 kmも移動した。海氷と密接に関わり合った生活をしているので、冬には氷が広がる南の方へほとんどが移動し、それが後退する夏には北の方へと移動する。
交尾後の番と子グマをつれた雌を除いて、通常ホッキョクグマは単独生活者である。しかし、例えばクジラやセイウチの死体といったごちそうに恵まれたようなときはたくさんが集まり、お互いに寛容さを示すことがある。あるいは氷が溶けてしまい、岸に上がらざるを得ないときなども同様で、30~40頭ものクマが1ヵ所で見られたこともある。
ホッキョクグマは、クマ類でもっとも鋭い嗅覚を持つ。1 km離れた場所から、アザラシの呼吸穴の位置を特定できる。
参考文献
- J.W.レンファー 1986 ホッキョクグマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 104₋105.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ホッキョクグマ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 235.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン