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オコジョ(Mustela erminea)の分類 Mustelidae
オコジョ(Mustela erminea)の概要 Mustela

オコジョ(Mustela erminea)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Mustela erminea Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

・頭胴長 雄 182~292 mm、雌 190~245 mm
・尾長 雄 48~125 mm 雌 54~105 mm
・尾率 雄 24~55 mm 雌 31~44 mm
・足 雄 30~50 mm 雌 26.5~44 mm
・耳 雄 13~22 mm 雌 11.8~22 mm
・頭骨全長 雄 36.8~51.2 mm 雌 35.0~48.0 mm

参考文献

  • 1960 原色日本哺乳類図鑑 - 書籍全体, 今泉吉典(著) 原色日本哺乳類図鑑. 保育社. .

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

分布

ユーラシア北部と北アメリカに広く分布する。日本国内では、本州中部の白山・北アルプス・中央アルプス以北の山岳地と北海道に生息する。

参考文献

  • 米田正明 2008 イタチ科, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. pp. 80-89.

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

亜種・品種

亜種:エゾオコジョ(Mustela erminea orientalis)
特徴:基亜種よりやや小さく尾も短い。尾端の黒色部は長く42~73mmで尾(毛とも)の長さの約1/2を占める。夏毛は上面灰茶色で手の上面は完全に白い。

・頭胴長 雄 235~240 mm、雌 225 mm
・尾長 雄 70~88 mm 雌 70 mm
・尾率 雄 35~37 mm 雌 31 mm
・足 雄 39~42 mm 雌 36.5 mm
・耳 雄 13~20.5 mm 雌 13 mm
・頭骨全長 雄 42~44.5 mm 

分布:ベーリング海峡以南、サハリン、千鳥、北海道に分布。
    

亜種:ホンドオコジョ(Mustela erminea nippon)
特徴:エゾオコジョよりも更に小さく、尾端の黒色部は尾(毛とも)の長さの1/3に過ぎない。夏毛はオコジョと同色であるが、手上面の白色部は狭く指の上面に限られる。冬毛は尾端を除き純白である。

・頭胴長 雄 182~198 mm、雌 140~170 mm
・尾長 雄 48~67 mm 雌 54~61 mm
・尾率 雌 35~38 mm
・足 雄 30.5~34.2 mm 雌 26~28 mm
・耳 雄 14.5~15.5 mm 雌 11.8~12.5 mm
・頭骨全長 雄 37.4 mm 

分布:本州の中部地方より北の山岳地帯。夏は標高 1500 m以上の亜高山帯や高山帯、冬は 1000 mぐらいの地域に生息。同一種は北半球に広く分布。

参考文献

  • 1960 原色日本哺乳類図鑑 - 書籍全体, 今泉吉典(著) 原色日本哺乳類図鑑. 保育社. .
  • 増田戻樹 1996 オコジョとイイズナ, 日高敏隆(監修) 川道武男(編) 日本動物大百科1:哺乳類Ⅰ. 平凡社. pp. 132-134.

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

分類学的位置付け

イタチ科

参考文献

  • 米田正明 2008 イタチ科, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. pp. 80-89.

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

人間との関係

オコジョは開発の進んだ地域には生息しにくいものの、実際には農村地帯などに出現し、人間の関心をよぶ。とりわけ家禽を捕食することが実際にあり、またイエネズミを捕食する有益的な性格もあって、人々に注目されやすい。一方で特に冬毛は良質で、襟巻などに加工できることから、狩猟の対象となってきた。1970年代の記録では、カナダで少なくとも1シーズンに5万頭以上が捕獲されている。

参考文献

  • 2001 極地の哺乳類・鳥類 - 書籍全体, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. .

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

形態

成獣の形質

毛色は、夏期は背面が褐色で、腹面が白色。冬期は全身美しい白色を呈する。また尾の先端部は1年中黒色である。冬毛は柔らかくて保温性に優れるが、夏毛は比較的粗い。

雌雄差が明確で、雄のほうが大きくなる。

参考文献

  • 2001 極地の哺乳類・鳥類 - 書籍全体, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. .

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

生態

生息環境

ツンドラ地帯や寒冷林のほか高山の岩場などを生息環境とし、岩の裂け目などにすむ。

参考文献

  • 2001 極地の哺乳類・鳥類 - 書籍全体, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. .

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

食性

犬歯で頸部を破壊して獲物を殺しているようだが、しばしば自分よりも大きな獲物をも標的とし、ノウサギ類を捕食するケースが報告されている。そのほか、小型の齧歯類、鳥類、鳥の卵、カエル類、昆虫などが食物である。

寒冷環境の厳しいところでは、冬期、捕獲した獲物の死がいを巣穴で保存して少しずつ食べているらしいが、何を主たる栄養源としているかは明らかにされていない。

参考文献

  • 2001 極地の哺乳類・鳥類 - 書籍全体, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. .

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

ライフサイクル

繁殖は、初夏に交尾することに始まる。オコジョはいわゆる交尾排卵動物で、雌が発情を持続し、数少ない交尾の機会に確実に排卵を起こして受精する戦略をとる。しかし受精卵は雌の子宮内で着床せずに時間を経過し、翌年の3月に着床、4週間程度の真の妊娠期間を経て出産は4~5月頃である。見かけの妊娠は10か月以上におよぶという、小型肉食獣によくある交尾排卵と着床遅延の好例である。

産子数は4~9頭程度のことが多いとされ、こどもの成長は非常に早く、8週目には離乳して、夏には自分の力でハンティングをする姿が見られる。また雌の性成熟はとても早く、生後最初の夏には交尾することができるとされる。一方で雄の性成熟はおよそ1年かかり、次の年の夏期まで繁殖には参加できない。

なお寿命は数年間と推測されているが、詳しいことはわかっていない。

参考文献

  • 2001 極地の哺乳類・鳥類 - 書籍全体, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. .

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

活動時間帯

主に夜行性である。

参考文献

  • 2001 極地の哺乳類・鳥類 - 書籍全体, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. .

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

出産

妊娠期間は約4週間。出産期は春で、樹洞や石のすきまなどにつくった巣で産む。産子数は4~5子である。

参考文献

  • 増田戻樹 1996 オコジョとイイズナ, 日高敏隆(監修) 川道武男(編) 日本動物大百科1:哺乳類Ⅰ. 平凡社. pp. 132-134.

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

特徴的な行動

小さな動物でありながら夜間は数km以上移動して獲物を探す。狙った獲物を執拗に追い続けるという報告もある。木登りや、泳ぎも特異なようで小さな体で敏捷に動き、穴に隠れた獲物も捕まえることができる。

参考文献

  • 2001 極地の哺乳類・鳥類 - 書籍全体, 山田格、倉持利明、遠藤秀紀、西海功(著) 内藤靖彦(監修) 極地の哺乳類・鳥類. 人類文化社. .

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

その他生態

オコジョの毛換わりについては、これは色が変わるのではなく、毛が生え換わるのである。

日本にはオコジョに限らず、夏毛と冬毛をもつ哺乳類がたくさんいるが、冬毛が夏毛とまったく違った白色になるのは、ほかにイイズナ、エゾユキウサギと一部の二ホンノウサギだけである。イイズナは尾の先に黒い部分がないので、全身が白化するが、オコジョは夏毛も冬毛も、尾の先が1年中黒い。

白い色に変化する理由として、もっとも簡単な説明としては保護色、つまりまわりが雪景色のとき、体が白い方が相手に悟られず、獲物を捕らえるのに都合がよいという説があるが、実際に当てはまらないことも多い。

例えば初冬など、まだ周りが雪景色でもないのに、すでに白くなっていることが良くある。その時期では白いとかえって目立ってしまうのである。逆に、春先はというと、まわりの雪がなくなるには、あと1ヵ月以上もかかるというのに、オコジョはもう完全な夏毛の茶色になっていて、これも雪の上で良く目立つ。

ちなみに雪原の上にいる獲物にそっと忍び寄って一気に襲うというパターンなら保護色の効果もわかるのだが、オコジョの行動を見ていると、穴や石のあいだなどに、片っ端から潜り込んで、ネズミやモグラなどの獲物を探しており、待ち伏せをして相手を襲うという感じはしない。ただし、猛禽類などに見つからないようにする対捕食者戦略としての効果はあるかもしれない。

もう1つよくいわれる説に、これは保温のためで、雪の中ではライチョウと同じように白いほうが体温の消失が少ないというのがある。ただし、この説は、各種の実験結果から否定されている。

このほかにも地域的な違いや、経験、遺伝なども影響しているといわれ、はっきりした理由はいまだにわかっていないのが現実である。

次に毛換わりの季節であるが、毛換わりには個体差があり、まったく同じ場所に住んでいても、必ずしも同じように毛換わりが進行するとは限らない。またイギリスのオコジョでは雄より体の小さい雌の方が早く換毛するという報告もある。標高 1500~1700 mの志賀高原で行われた観察例では、換毛の期間は1ヵ月前後であるという。

参考文献

  • 増田戻樹 1996 オコジョとイイズナ, 日高敏隆(監修) 川道武男(編) 日本動物大百科1:哺乳類Ⅰ. 平凡社. pp. 132-134.

最終更新日:2021-02-01 ハリリセンボン

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