- 解説一覧
- アライグマ(Procyon lotor)について
アライグマ(Procyon lotor)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
-
Procyon lotor (Linnaeus, 1758)
基本情報
- 大きさ・重さ
-
サイズ:頭胴長 41~60 cm、尾長 20~41 cm、肩高 23~30 cm、体重 4~10 kg、ときには 20 kgに達する。
ふつう雄は雌よりやや大きい。
参考文献
- 池田透 1996 アライグマ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 139₋140.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 分布
-
北海道、神奈川県、岐阜県、愛知県で定着している。
北アメリカ原産であり、ヨーロッパ、ロシアでも野生化している。
参考文献
- 池田透 1996 アライグマ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 139₋140.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
-
アライグマ科
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 アライグマ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 243.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
形態
- 成獣の形質
-
毛色は灰色~明るい赤褐色である。尾には5~10本の黒い輪があり、灰白色の顔に両眼をおおうような黒い帯が目立つ。蹠行性で、足跡が明瞭、染色体数は2n=38である。
参考文献
- 池田透 1996 アライグマ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 139₋140.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 幼獣の形質
-
誕生時、体重は 60~75 gで体長は約 10 cmである。体全体が毛に覆われているが、顔としっぽの輪は皮膚の色素が濃くなっただけである。約3週間後には眼が開き、活発に体を動かし、さえずるような声を出す。4~6週間ほどで足は歩けるくらい強靭になる。最初の換毛は7週目に始まり、幼獣の毛が抜け落ち、成獣の毛が成長しはじめる。
参考文献
- Pat Morris and Amy-Jane Beer 2013 アライグマ, Pat Morris、Amy-Jane Beer(著) 本川雅治(翻) 知られざる動物の世界8. 朝倉書店. 16₋21.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
-
原産地の北アメリカでは、水辺の森林地帯を好むといわれる。しかし、雑食性のメニューは魚、鳥、小型哺乳類から果実、農作物、人家のゴミにまで多岐にわたり、湿地や農耕地から市街地まで、多様な環境に生息する。日本でも雑食性をいかんなく発揮して、初めに野生化した民家周辺から河川伝いに、市街地や森林地帯まで、さまざまな環境に生息地を拡大中である。冬のあいだは冬眠しないが、気温が氷点下になると樹洞や岩穴内でじっと動かずにいて、体力の消耗を防ぎ、北海道の寒さにも適応している。
参考文献
- 池田透 1996 アライグマ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 139₋140.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 食性
-
雑食性で、野外に定着した個体は、果実・野菜・穀類・小哺乳類・鳥類・両生爬虫類・魚類・昆虫そのほかの小動物全般を採食する。家畜飼料やトウモロコシを食害することもある。
参考文献
- 米田正明 2008 アライグマ, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. 79.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 天敵
-
オオカミ、ボブキャット、ピューマ、アメリカワシミミズク、ワニなどが天敵である。
参考文献
- Pat Morris and Amy-Jane Beer 2013 アライグマ, Pat Morris、Amy-Jane Beer(著) 本川雅治(翻) 知られざる動物の世界8. 朝倉書店. 16₋21.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 活動時間帯
-
夜行性
参考文献
- Pat Morris and Amy-Jane Beer 2013 アライグマ, Pat Morris、Amy-Jane Beer(著) 本川雅治(翻) 知られざる動物の世界8. 朝倉書店. 16₋21.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 鳴き声
-
少なくとも13種類の鳴き声がアライグマで識別されている。音声は互いに極めて接近したときに、個体間で用いられる。母親はシューという音、短い吠え声、不安を示すような鼻息のような音、鳥のさえずりのような声、うなり声、キーキー声、などの喉を鳴らす声によって子どもと連絡をとり合う。
参考文献
- Pat Morris and Amy-Jane Beer 2013 アライグマ, Pat Morris、Amy-Jane Beer(著) 本川雅治(翻) 知られざる動物の世界8. 朝倉書店. 16₋21.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 生殖行動
-
交尾は12月から8月にかけて行われ、南の方では季節が遅れる。繁殖期のピークはふつう2月から3月の間であり、ほとんどの子は数週間後の4~5月に生まれる。繁殖期の間、雌は1~4個体の雄と交尾する。交尾の優先権を巡る雄間の競争があり、体重の重い雄ほど雌と交尾する機会が多くなる。地位を得た雄は行動圏内での交尾の半分以上に関与し、小さな雄はそれぞれ2~3頭との交尾の機会が得られる。
参考文献
- Pat Morris and Amy-Jane Beer 2013 アライグマ, Pat Morris、Amy-Jane Beer(著) 本川雅治(翻) 知られざる動物の世界8. 朝倉書店. 16₋21.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 出産
-
年1回春に、約2ヵ月の妊娠期間の後、3~6頭の仔を出産する。しかし、妊娠に失敗したり子どもが死んだ場合には、夏から秋に再度交尾・出産することもある。妊娠期間は63日である。出産巣には、樹洞や岩穴のほかに納屋や畜舎の屋根裏、放棄された家屋などの建造物も積極的に利用し、人間を怖れずに人家に出没して餌付けされる親子もいる。日本ではアライグマの天敵となる肉食獣もいないので、今後も野生化は進むものと予想され、それに伴う生態系への影響が危惧される。
参考文献
- 池田透 1996 アライグマ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 139₋140.
- 米田正明 2008 アライグマ, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. 79.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 特徴的な行動
-
北アメリカでの社会構造は、排他的な雄の行動圏のなかに複数の雌を含むので、一夫多妻と考えられている。
北海道でも、交尾期に1頭の雄が少なくとも2頭の雌の巣穴を頻繁に訪れており、北アメリカと同じ社会構造が予想される。雌同士の行動圏は重複することが多い。北アメリカでも日本でも、同じ巣穴で複数の個体が同居するのが見られ、北アメリカではふつう血縁の雌同士の同居と言われている。
参考文献
- 池田透 1996 アライグマ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 139₋140.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- その他生態
-
子どもの頃には人間によくなれるので、ペットとしての人気は高い。しかし好奇心が強くて移り気な動物であり、成長して気性が荒くなるにつれて飼い主の手に負えなくなる場合も少なくない。また優れた学習能力をもち、鋭敏な手先を器用に使って檻の鍵をはずしたり、ドアを開けたりする脱走の名人でもある。こうした飼育管理不備と飼い主による放逐が、日本での野生化の発生原因と考えられ、岐阜県可児市で初めて定着した後、北海道や神奈川県、愛知県でも野生化したアライグマの繁殖が相次いで報告されている。正確な生息数はわからないが、可児市や北海道恵庭市では少なくとも100頭以上のアライグマが生息していると推測される。
参考文献
- 池田透 1996 アライグマ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 139₋140.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
関連情報
- 感染症
-
アライグマ回虫の幼虫移行症という、アライグマには無害だが、家畜更には小さな子どもを死に至らしめることがあるため、今後の動向には注意を要する。
参考文献
- 池田透 1996 アライグマ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 139₋140.
- Pat Morris and Amy-Jane Beer 2013 アライグマ, Pat Morris、Amy-Jane Beer(著) 本川雅治(翻) 知られざる動物の世界8. 朝倉書店. 16₋21.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- その他
-
アライグマが成功を遂げている一方で、いくつかの近縁種(メキシコ南東部のコスメルアライグマ Procyon pygmaeusなど)はIUCNによって絶滅危惧ⅠB類に指定されている。バルバドスアライグマ(P. gloverellani)は1960年代以降に絶滅したといわれている。しかし、アライグマの生存を脅かすものはほとんどいない。アライグマは娯楽で狩猟されることがある(アライグマ猟 coon huntingとして知られる)が、相対的に見ると殺されるのはわずかである。
主な懸念要因はヒトにも伝染することがある病気、例えば、レプスピトラ症、ツラレミア、そして最も多い狂犬病などに対するアライグマの感受性である。アメリカ合衆国南東部では、アライグマは狂犬病の主要な媒介者であり、1997年にはアメリカ合衆国全体で報告された野生動物からの狂犬病感染例の半分を占めていた。
参考文献
- Pat Morris and Amy-Jane Beer 2013 アライグマ, Pat Morris、Amy-Jane Beer(著) 本川雅治(翻) 知られざる動物の世界8. 朝倉書店. 16₋21.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン