- 解説一覧
- トド(Eumetopias jubatus)について
トド(Eumetopias jubatus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
【環境省】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
- 【 学名 】
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Eumetopias jubatus (Schreber, 1776)
基本情報
- 大きさ・重さ
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サイズ:雄は最大で頭胴長 325 cm(平均 280 cm)、体重 1120 kg(平均 566 kg)に達する。
雌は頭胴長平均 230 cm、体重平均 263 kgである。
参考文献
- 磯野岳臣 1996 アシカ類 トド, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 92₋94.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 分布
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日本へは、冬季に北海道沿岸に来遊する。
繁殖地は千島列島の中部以北、サハリン、アリューシャン(アレウト)列島から中部カリフォルニアまでである。
参考文献
- 磯野岳臣 1996 アシカ類 トド, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 92₋94.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 生息状況
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トドの駆除は漁業被害対策として行われ、年間100~200頭が銃猟により駆除されている。トドによる漁業被害は、網の内外の有用魚が食害されるだけでなく、漁網が破られるなどの直接的な被害も多数報告されている。1992年度の被害総額は、漁業者の申告によれば約5億円に達する。太平洋沿岸では、近年は被害が少なく、減少傾向にある。しかし日本海沿岸では被害が年々増加し、休漁をよぎなくされる例もある。漁業被害の実態については不明な部分が多く、研究者や行政機関よる直接の調査が待たれる。
トドの総個体数は生息海域全体で、1985年には約29万頭と推定されていたが、1991年にはわずか9万頭にまで減少した。この急激な減少の原因は不明だが、おもな繁殖場が点在するベーリング海でのトドの主要な餌である、スケトウダラの乱獲との関連が指摘されている。
参考文献
- 磯野岳臣 1996 アシカ類 トド, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 92₋94.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 保全の取り組み
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アメリカ合衆国、カナダ、ロシアの3ヵ国では、1970年代以来、捕獲の全面禁止などの保護対策がとられ、アメリカでは1990年代に絶滅危惧種に指定された。日本では水産庁が希少種に指定したが、漁業被害対策として駆除が行われている。トドと漁業の軋轢は早期解決の困難な問題であり、漁網そのものの強度を高めたり、漁網にトドを近づけないための忌避効果をもつ音波などの研究が開始されている。
参考文献
- 磯野岳臣 1996 アシカ類 トド, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 92₋94.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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食肉目 アシカ科 トド属
参考文献
- 今泉吉典 1960 トド, 今泉吉典(著) 原色日本哺乳類図鑑. 保育社. 180.
- 伊藤徹魯 2008 トド, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. 100.
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形態
- 成獣の形質
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雌成獣の体色は黄褐色~赤褐色で腹面は暗色をしている。雄成獣の体色は雌より濃色である。
アシカ科動物中の最大種である。雄成獣の体前半部は顕著に肥大し、細い雌と対照的である。上顎の第4と第5頬歯の間の広い歯隙が、アシカ科他種との識別点である。
夏毛は雄雌共に淡い赤茶色、前肢間と腹面は暗色、秋に黄味を帯びた茶色となり、冬には黒茶色になる。下面は濃色である。歯式はオットセイに等しく、臼歯(前臼歯も含む)はふつう5対である。
参考文献
- 伊藤徹魯 2008 トド, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. 100.
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生態
- 生息環境
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冬季に北海道沿岸に来遊するトドは、沿岸に比較的近いところに生息し、また雄は体長 3 m、体重 1 tにも達するので、見るものを感動させる。しかしその巨体ゆえの大食漢のため、漁業者からは海のギャングという名を与えられ嫌われている。
北海道沿岸にトドが姿を見せるのは、10月から翌年4月にかけてである。多くの個体は流氷の南下に押し出されるようにようにして、北海道沿岸に来遊する。来遊数は、漁業者のアンケート調査などから約2000頭~3000頭と推定されているが、科学的な調査はまだ行われておらず、実態は不明である。またかつては、日本海沿岸に来遊するのはサハリン近海のチュレニイ島(旧海豹島)で繁殖する個体群、太平洋沿岸に来遊するのは中部千島の繁殖場で繁殖する個体群と考えられていた。しかし、アメリカ合衆国とロシアの研究者が1989年に中部千島で標識を装着した個体が、日本海側礼文島沖や神恵内沖などで再捕獲され、日本海沿岸と太平洋沿岸に来遊するトドを別の個体群とみなすことはできなくなった。
来遊するトドの年齢や性別は、各海域によって特徴がある。日本海沿岸の積丹岬沖や太平洋沿岸の内浦椀には、雄の成獣が数多く来遊する。また稚内沖や知床半島の羅臼沖には雌の成獣が多い。
未成獣は雄も雌も、雌成獣と同じ海域で見られる。しかし、年齢や性別による回遊パターンの相違があるのかなど不明な点が多く、今後の調査で異なる結果が出る可能性もある。
来遊したトドでは、沿岸から比較的近い海域で、数頭から数十頭の集団で遊泳しているのが観察される。
参考文献
- 磯野岳臣 1996 アシカ類 トド, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 92₋94.
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- 食性
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夜間 200 m以浅の海域で、主にスケトウダラやマダラ、ミズダコなどを捕食する。胃の中に石が見つかることがあり、消化を助けるためなどともいわれるが、ホテイウオやミズダコは吸盤をもつので、吸着された石がいっしょに飲み込まれた可能性が高い。
参考文献
- 磯野岳臣 1996 アシカ類 トド, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 92₋94.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 活動時間帯
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トドは夜行性で、日中は休息している。体の比重が海水より大きく、オットセイのように浮いて寝ることはできないので、休息のために岩礁に上陸しなければならない。かつては北海道各地の沿岸に、「トド岩」などと呼ばれるトドの集団休息する岩礁があったが、現在では日本海沿岸に少数が残るものの、太平洋沿岸ではほとんど消滅した。駆除が徹底的に行われた結果である。集団が観察されるのは日中であり、夜間の採餌のときも集団で行動するのかどうかはわからない。(少数だがグループハンティングの可能性を示唆する観察例はある)。
参考文献
- 磯野岳臣 1996 アシカ類 トド, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 92₋94.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 生殖行動
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5~7月に集団で一雄多雌型(雌平均10頭)の繁殖を行う。
トドの繁殖場は岩礁などであり、繁殖場は中部千島からオホーツク海、アリューシャン(アレウト)列島、アラスカからカリフォルニア中部と北太平洋北部の辺縁に沿って分布している。北海道東部沿岸でもまれに、妊娠末期の雌や大型の成獣雄が観察されているが、繁殖は確認されていない。
参考文献
- 磯野岳臣 1996 アシカ類 トド, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 92₋94.
- 伊藤徹魯 2008 トド, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. 100.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
- 出産
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出産盛期は6月で、1産1仔である。授乳期間は1~2年であるが、2~3年乳を飲み続ける子どももいる。
参考文献
- 伊藤徹魯 2008 トド, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. 100.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン
関連情報
- その他
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鰭脚類は陸上では行動が制限されるので、どの種も人間を含む捕食者の接近を非常に警戒する。しかし、水中では敵を知らず、また好奇心も旺盛なので、むしろ船などに接近してくる。
参考文献
- 磯野岳臣 1996 アシカ類 トド, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 92₋94.
最終更新日:2020-05-12 ハリリセンボン