- 解説一覧
- キタオットセイ(Callorhinus ursinus)について
キタオットセイ(Callorhinus ursinus)
【IUCN】絶滅の危険が増大している種
- 【 学名 】
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Callorhinus ursinus (Linnaeus, 1758)
基本情報
- 分布
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ベーリング海とオホーツク海のほか、銚子沖からカリフォルニア沖に至る北太平洋の北部、さらに日本海では朝鮮半島中央部沖以東と佐渡沖以東の海域に分布する。
参考文献
- 伊藤徹魯 2008 食肉目(ネコ目)アシカ科, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. pp. 98-100.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- 生息状況
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オットセイの個体数は、コマンドルスキー諸島では漸増して24万頭だが、チュレニイ島ではかつて18万頭だったのが1994年には6万頭にまで激減した。中部千島の個体数は不明である。アラスカ沖のプリビロフ諸島で繁殖するオットセイの個体数も漸減している。減少の原因として、主要な餌であるスケトウダラの乱獲や流し網による混獲が指摘されている。
参考文献
- 和田一雄 1996 アシカ類 オットセイ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. pp. 94-95.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- 保全の取り組み
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オットセイとラッコは1741年にベーリングが率いる探検隊によって発見された後、良質な毛皮のため乱獲され、19世紀末には絶滅に瀕するまでになった。そのため1911年に日本、アメリカ合衆国、カナダ、ロシアの4ヵ国間でオットセイ保護条約が締結され、繁殖場での厳重に管理された捕獲以外は禁止された。また、三陸沖で行われていた突きん棒漁という伝統猟も禁止された。この条約によって、オットセイは絶滅の淵から見事に回復した。
しかし、1984年の条約改正に際し、日本、カナダ、ロシアは翌年までに条約の延長を批准したが、アメリカ合衆国だけは期限の1988年までに批准できず、同条約は失効した。保護団体が、オットセイの繁殖場での狩猟は虐殺である、最大持続生産量を割り込んでいるので捕獲すべきではない、オットセイ猟を生業としていたアレウト人の生活の変化などの理由をあげ、議会へのロビー活動を展開した結果である。動物の生存権が世界的に市民権を得たことや毛皮利用を否定する考えが、条約の失効をもたらしたといえる。
反面、適正な個体群管理に必要な調査・研究体制が崩壊したことも指摘しておかなければならない。
参考文献
- 和田一雄 1996 アシカ類 オットセイ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. pp. 94-95.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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食肉目 アシカ科 オットセイ属
参考文献
- 伊藤徹魯 2008 食肉目(ネコ目)アシカ科, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. pp. 98-100.
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形態
- 成獣の形質
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雌成獣
体色:背面は銀灰色で腹面は赤褐色をしている
平均体長:130 cm
体重:44 kg
雄成獣
体色:全身赤褐色~黒色をしている
平均体長:200 cm
体重:210 kg
体前半部は雄成獣で著しく肥大し、細く小さい雌と対照的である。
前後肢は鰭状となりほとんど同大、尾は極めて短い。耳介は極めて小さいが、アシカよりは大きい。顔は短くプロフィールは凸かほとんど直である。下毛は白味を帯びる。
長い後肢(体長の約30%)と密な下毛によってアシカ科の他種と識別できる。
参考文献
- 伊藤徹魯 2008 食肉目(ネコ目)アシカ科, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. pp. 98-100.
- 1960 原色日本哺乳類図鑑 - 書籍全体, 今泉吉典(著) 原色日本哺乳類図鑑. 保育社. .
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生態
- 食性
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三陸沖は世界の3大漁場の1つとされる。暖流・寒流両系の魚やイカが高密度に集中し、海洋生態系の高次消費者であるオットセイの好適な索餌場所となる。とくに栄養を必要とする妊娠雌が、生産性の高い潮境に集中する。主要な餌はスルメイカ、ニュウドウイカ、ホタルイカ、オオクチイワシなどのハダカイワシ類、マサバ、カタクチイワシ、スケトウダラ、イトヒキダラなど、親潮と黒潮の混合水域に多いイカ類、浮魚や底魚である。
参考文献
- 和田一雄 1996 アシカ類 オットセイ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. pp. 94-95.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- ライフサイクル
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三陸沖に回遊してくるのはロシアの2大繁殖場のオットセイで、繁殖期が終わり、6月に生まれた子どもが独立する10月頃に島を離れ、南下を開始する。北海道の釧路沖には例年1月頃に妊娠雌が出現し、親潮の南下とともにさらに南下して、ふつう4月の銚子沖が南限となる。妊娠雌は大集団となって、親潮と黒潮の潮境の餌生物がもっとも豊富な海域に集中するのである。年齢の若い雄と雌は、妊娠雌の集団の北寄りに分散し、6歳以上の雄は北海道までしか南下せず、三陸沖にはほとんど姿を見せない。
日本海に回遊してくるのはチュレニイ島で繁殖する個体だが、詳しい調査はまだされていない。南限は朝鮮湾から大和堆にいたる海峡である。黒潮の北上分枝が北上し始める5月下旬ごろ、雌は妊娠後期に入り、目立って腹部の大きくなった雌が一路、繁殖場を目指す。成獣雄は先に北上を開始し、繁殖場になわばりを構えて雌の到着を待つ。若い雄や雌は北上が遅れるが、6月には三陸沖からオットセイの姿が消える。
参考文献
- 和田一雄 1996 アシカ類 オットセイ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. pp. 94-95.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- 活動時間帯
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夜行性のため、昼間はプカプカと波間に浮かんで寝ているが、外洋性の動物なのでふつうは沿岸に近づかず、海岸から観察することはまずできない。
参考文献
- 和田一雄 1996 アシカ類 オットセイ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. pp. 94-95.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- 生殖行動
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個体群の90%以上はベーリング海のプリビロフ諸島とコマンドル諸島、サハリンのロベン島で繁殖する。
6~8月に海岸に大集団をつくり、一雄多雌型(雌9~60頭)の繁殖を行う。
性成熟年齢は雌雄とも3~5歳であるが、繁殖活動に参加できる雄は、8歳以上の大型個体のみである。
参考文献
- 伊藤徹魯 2008 食肉目(ネコ目)アシカ科, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. pp. 98-100.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- 出産
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子どもは出生後約4ヵ月で離乳する。
参考文献
- 和田一雄 1996 アシカ類 オットセイ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. pp. 94-95.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
- その他生態
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外洋性の種で、年10~11ヵ月を外洋で過ごす。日本近海へは主にロシア領の繁殖場から12月~翌5月に来遊し、表面水温15℃以下の冷水域を回遊しつつ、餌動物の豊富な潮境に集まる。
参考文献
- 伊藤徹魯 2008 食肉目(ネコ目)アシカ科, 前田喜四雄(著) 阿部永、石井信夫、伊藤徹魯、金子之史、前田喜四雄、三浦慎悟、米田政明、阿部永(監修) 日本の哺乳類. 改訂2版. 東海大学出版会. pp. 98-100.
最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン
関連情報
- その他
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オットセイ保護条約は1988年に失効。アメリカ合衆国では国内法(海産哺乳類保護法)で保護されている。総生息数は約120万頭である。
参考文献
- 和田一雄 1996 アシカ類 オットセイ, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. pp. 94-95.
最終更新日:2021-03-04 ハリリセンボン