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アフリカゾウ(Loxodonta africana)の分類 Elephantidae
アフリカゾウ(Loxodonta africana)の概要 Loxodonta

アフリカゾウ(Loxodonta africana)

危急 (VU)

【IUCN】絶滅の危険が増大している種

【 学名 】
Loxodonta africana (Blumenbach, 1797)

基本情報

大きさ・重さ

体長:雄 6~7.5 m 雌は雄より 0.6 m低い
体高:雄 3.3 m
体重:最大体重 6 t、雌は平均体重 3 t

参考文献

  • R.F.W.バーンズ 1986 ゾウ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 8₋17.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

分布

サハラ以南のアフリカに分布する。

参考文献

  • R.F.W.バーンズ 1986 ゾウ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 8₋17.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

分類学的位置付け

長鼻目 ゾウ科

参考文献

  • 小原秀雄 1987 アフリカゾウ, 小原秀雄(著) 小原秀雄(編) 世界の天然記念物 : 国際保護動物 第1巻. 講談社. 10, 13, 132-134.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

人間との関係

アフリカゾウは、アフリカに入り込んできた奴隷商人の時代から狩猟の対象にされ、絶滅が危惧されていた。象牙が高価に取引できるからである。殺したゾウから牙を奪い、奴隷たちに運ばせ奴隷ともども売り飛ばすといった、悪辣な方法が実際に行われたらしい。

19世紀から20世紀の初めまでの間に、何万頭のアフリカゾウが殺され、総量では何万トンの象牙が流出したか、はっきりしたことは分かっていない。推定で16~17世紀は年間で100~200トンといわれ、20世紀の初めには年間800トンほどに上昇していたのではないかといわれる。
20世紀の後半に入っても、象牙の価格は高騰し続けた。1970年の値段は10年前の10倍以上である。そのため、密漁密輸の手口はますます悪質化している。

1979年のタンザニアでの調査によれば、売られた象牙の平均重量は 4.8 kgであった。19世紀や20世紀の初めごろは 20~30 kgである。かつて大きな牙の老いた雄を狙い撃ちにしていたのだが、自動小銃や軽機関銃によって、子ゾウを含めた群れが一網打尽にされているからにほかならない。

1980年の象牙の輸出量は700トンぐらいである。自然死の個体からの象牙の回収率は1割以下と考えられ、大半が密漁であることは間違いない。しかも輸出数量の3倍ほどの量が、産出国内や地方で消費されていると言われる。一説では年10万~40万頭殺されているという。このような破壊的な乱獲が続けば、1980年当時でアフリカ全土にいた110万~130万頭のゾウたちが、全部姿を消してしまう日も、そんなに遠い未来ではない。

さらに人工増加による生態系破壊が、アフリカゾウを圧迫している脅威も見逃すことはできない。1950年以来、毎年2%ずつアフリカゾウの棲む土地が破壊された影響だけでも、30年間に個体数は20%は減少したという意見もある。例えばケニアでも、1970年代の10年間を通じて個体数は半減し、1979年の調査では6万5000頭であり、ケニアの東部地方では、1980~83年の間にほぼ絶滅した。タンザニアでは10年前に50万頭いた個体が、今は20万頭まで激減した。

アフリカゾウは個体関係が高度に発達している動物であるだけに、組織の崩壊は残された個体をも死に追いやってしまう。

参考文献

  • 小原秀雄 1987 アフリカゾウ, 小原秀雄(著) 小原秀雄(編) 世界の天然記念物 : 国際保護動物 第1巻. 講談社. 10, 13, 132-134.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

形態

成獣の形質

アフリカゾウは現在では陸上最大の動物で、長くのびた上唇と鼻、それに長い牙、円筒状をした太い四肢に特徴がある。胴体の形状はナスに似ており、しわの多い灰色の厚い皮膚に覆われている。耳介は極めて大きい。牙は上あごにある門歯が伸びたもので、生涯伸び続ける。足は5つの指骨をもっている。
臼歯はわらじに似た形をしており大きい。終生6回生え換わるが、一度に上下左右1本ずつしか萌出せず、機能しない。すり減ると新しい1対が生えてきて、前の歯を押し出すようにして生え換わる。

巨大で目立つ耳はアジアゾウのものより大きく、雄にも雌にも前にのびた牙があり、それを使ってミネラルが豊富な土をほぐして、栄養補助剤として食べる。雄は雌の2倍近い体重があり、牙の付け根の部分がより太い。鼻先の指状突起は2つある。長い鼻は、上くちびると鼻がのびてそれに筋肉がついたものである。ほかの草食獣と違ってくびがあまりに短いため、口が地面に届かない。長鼻目では初めから頭やあごが重かったため、くびを伸ばすようには進化できなかったのである。鼻は枝を折ったり、葉、芽、実を摘み取って食べるのにも使われる。鼻は木を根こそぎにできるほどの力を出せるが、触ったり、匂いを嗅いだりできる鋭い感覚器でもある。触覚器としては、先端に物を掴めるようになった指状突起があり、細かい感覚毛も生えているため、ごく小さな物でもつまみあげることができる。

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 アフリカゾウ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 308₋309.
  • 小原秀雄 1987 アフリカゾウ, 小原秀雄(著) 小原秀雄(編) 世界の天然記念物 : 国際保護動物 第1巻. 講談社. 10, 13, 132-134.
  • R.F.W.バーンズ 1986 ゾウ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 8₋17.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

生態

生息環境

草原、砂漠、熱帯林、湿地、湖や川の近くに生息する。

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 アフリカゾウ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 308₋309.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

食性

食物はほとんどが植物であり、食べる種類は極めて広い。棲む地方によって違うが、ある地域では600種の植物を食べていたことが報告されている。草や木の葉、樹皮、果実などが主だが、ケニアのツァボ国立公園での調査では、食物の8割が草であった。地域によってはバオバブノキも食べる。1日に食べる量は体重の5~6%の量の植物であり、また水は100~300リットルを飲む。
毎日20時間食事をする。広い地域で食事をするので、ゾウの群れはとくに乾季に、生態系へ劇的な変化をもたらすこともある。

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 アフリカゾウ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 308₋309.
  • 小原秀雄 1987 アフリカゾウ, 小原秀雄(著) 小原秀雄(編) 世界の天然記念物 : 国際保護動物 第1巻. 講談社. 10, 13, 132-134.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

生殖行動

雄は12~16歳頃になると、母系の群れから離れて、単独行動や雄だけのルーズな群れをつくって徘徊する。そして交尾期になると雄たちは、発情した雌に対して交尾の優先順位を争って戦う。しかし、既に順位が決まった後は下位の個体は争わないらしい。

参考文献

  • 小原秀雄 1987 アフリカゾウ, 小原秀雄(著) 小原秀雄(編) 世界の天然記念物 : 国際保護動物 第1巻. 講談社. 10, 13, 132-134.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

出産

妊娠期間は22ヵ月、4~9年に1回、1子を出産する。雌は通常60年の間に、数子から10子を出産する。新生児の体重は 90~135 kg、肩高は 85~140 cmぐらいである。その後、毎月、20~25 kgぐらいずつ体重は増加していく。

参考文献

  • 小原秀雄 1987 アフリカゾウ, 小原秀雄(著) 小原秀雄(編) 世界の天然記念物 : 国際保護動物 第1巻. 講談社. 10, 13, 132-134.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

子育て

雌の乳房は前肢の付け根の下あたりの胸に1対あり、授乳期間は通常2年ぐらいである。

参考文献

  • 小原秀雄 1987 アフリカゾウ, 小原秀雄(著) 小原秀雄(編) 世界の天然記念物 : 国際保護動物 第1巻. 講談社. 10, 13, 132-134.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

特徴的な行動

アフリカゾウは極めて親密な個体関係を保っていて、親から子に、植物や水の供給場所などが伝承され、情報として記憶されている。個体を識別するには、こめかみの部分にある腺からの分泌物で判断しているようである。傷ついた個体は集団で守り助け合う。行動の間に日中は30分から1時間、夜間は1~2時間の休息を2回ほど繰り返すが、日中は休息では横たわらず、成獣はふつう立ったままで眠っている。

またアフリカゾウは毎日水辺を訪れ、水を飲んだり、水浴びをしたり、転げまわったりする。

鼻の使い道は多く、水飲み、挨拶、愛撫、威嚇、水浴び、砂浴び、発声、拡声に使われる。水を飲むときはまず鼻で吸っておいて、それを口の中に吹き込む。体を冷やすために背中にも水をかける。水不足の際には、胃から水分を吐き戻して体にかけることもある。川を渡る際に体が潜ってしまうときには、シュノーケル代わりに鼻先を水面上に出し、それで呼吸をすることもできる。

聴覚は鋭く、声によるコミュニケーションを盛んに取り合う。その傾向は、森林に棲む種類で特に顕著である。

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 アフリカゾウ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 308₋309.
  • 小原秀雄 1987 アフリカゾウ, 小原秀雄(著) 小原秀雄(編) 世界の天然記念物 : 国際保護動物 第1巻. 講談社. 10, 13, 132-134.
  • R.F.W.バーンズ 1986 ゾウ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 8₋17.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

その他生態

アフリカゾウは群れをつくって行動するが、その移動速度は時速5~7キロぐらいである。この移動速度にも関わらず、1日に100キロを歩くことも珍しくない。行動圏は 400~3700 ㎢であり、1日の休息時間は4~6時間と極めて短い。
群れのサイズは生息地の生態上の条件によって異なるが、最小単位は雌とその子で、3~10頭ぐらいの群れが多い。アフリカゾウの群れのリーダーは雌であり、母系家族によって構成されている。代が重なれば集団は大きくなるが、群れの個体数の増加によって生活の維持ができなくなったときは、群れは分裂して、行動圏を分ける。

大きな耳は車のラジエーターと同じ働きをする。つまり、大きくて丸みのある体では相対的に放熱率が低いため、常に過熱の恐れがある。この過熱が起きないよう、耳が防いでいる。耳には多くの血管が通っており、耳をぱたつかせることで冷却効果をさらに高めることができる。大きな耳を進化させたことで体の表面積を実質上増やし、ひいては冷却率を高めることで、ゾウは体を大型化する場合の一番の制限要因の1つを解決した。

参考文献

  • ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 アフリカゾウ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 308₋309.
  • 小原秀雄 1987 アフリカゾウ, 小原秀雄(著) 小原秀雄(編) 世界の天然記念物 : 国際保護動物 第1巻. 講談社. 10, 13, 132-134.
  • R.F.W.バーンズ 1986 ゾウ, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 8₋17.

最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン

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