- 解説一覧
- ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)について
ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)
【IUCN】絶滅の危険が増大している種
- 【 学名 】
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Ailuropoda melanoleuca (David, 1869)
基本情報
- 大きさ・重さ
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体長:1.6~1.9 m
肩高:70~80 cm
体重:100~150 kg
雄は雌より約10%大きい。
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118-119.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ジャイアントパンダ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 240₋241.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 分布
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中国中西部(四川・雲南・甘粛省)に分布する。
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118₋119.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ジャイアントパンダ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 240₋241.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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アライグマ科 ジャイアントパンダ属(Ailuropoda)
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118₋119.
- 中里竜二 1991 ジャイアントパンダ, 今泉吉典(監修) 世界の動物:分類と飼育2(食肉目). 東京動物園協会. 68₋69.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 人間との関係
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ジャイアントパンダはもっとも稀少な哺乳類の1つである。野生個体は1000頭以下で、500頭以下とも推定されている。しかし迫害されているわけではなく、それどころか心情的にも伝統的にも保護されており、山林保護の法律によって守られている。
パンダの生息地は一般に近寄りがたく、人が住むのに適さない場所である。そのため開墾や入植による人間の圧力がかかることは少ない。
ジャイアントパンダは国際自然保護連合のレッドデータブックの中で、絶滅の危機に瀕する種ではなく、稀少種としてランクされている。ここ数年は、約100年ごとに起こるタケ(Sinarundenaria nitida)の開花、結実に続く枯死により、ジャイアントパンダの死亡が広範囲に増加している。明らかにこの種は、過去においてもこのような事態にあいながらも、何世紀にもわたってこれを克服してきたことになる。パンダは必要となれば、タケの不足をほかの手に入る食物で補うことができる。生息環境の周辺で人口の増加、入植の増加が、ほかの孤立した好適な生息環境へパンダを移動したり、別の生息環境を用意することを妨げている。
種を守るため、人間の介入が必要な段階に達しているようである。隔離された小さな個体群は常に危険な状態にあるため、飼育されている集団は、貴重な予備軍である。長年にわたり飼育されてきたパンダは僅かながらいるが、繁殖は極めて少なかった。
最初にうまく子どもが育ったのは1963年北京動物園でのことだが、それ以来わずか12頭の成功例があるにすぎない。基本的な問題は、飼育個体が大変少なく、しかもとても大事にされていることである。ほとんどの国や動物園にはわずか1番か1頭ずつしかおらず、よりよい繁殖地にそのパンダを送るつもりもないことである。
そしてほかにもさまざまな問題がある。人に慣れすぎて雄を受け入れない雌(ロンドン)、正しい交尾姿勢のとれない雄(ワシントン)、病気の雌(ロンドン)、病気の雄(マドリード)、妊娠中に死んだ雌(東京)、雌に対しけんか腰だったり、雌に興味を持たない雄がいることなどである。
雄と雌の相性が悪いという問題を解決する1つの方法は、人工授精である。1978年以来、中国ではわずかながら成功しているが、成功率を高める程ではない。これは雌が繁殖できる状態にあるのに、交尾が行われないときにのみ効果を持つ。この方法の成否は、ジャイアントパンダを確実に動けなくする方法と、精子を貯蔵する技術の開発にかかっている。
飼育下での幼獣の生存率は、たいへん低い。2頭生まれることも多いが、母親はそのうちの1頭だけを育て、もう1頭は見捨ててしまう。もし見捨てられた子どもを育てる方法が見つかれば、飼育下での繁殖率は著しく増加するだろうが、その試みは未だに成功していない。
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118₋119.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
形態
- 成獣の形質
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がっしりした樽型の体つきをしているクマで、白と黒の配色が目立つため、すぐに見分けられる。前足には、事実上もう一つの余分の指といえる突起がある。それは、手首の骨の1つ、橈骨近くにある骨がより大きく、長くなったものである。しかもそれは、ほかの指と対向するようについており、親指のように使うことができる。耳、卵形の目の模様、鼻、肩、四肢は黒く、それ以外は白い。大きな頭と立った耳、小さいビーズのような目を持つ。
中国では「大熊猫」や「白熊」と呼ばれる。厳格ななわばりは持たないが、体臭、尿、木の引っかき傷で行動圏をマーキングして争いを避ける。
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ジャイアントパンダ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 240₋241.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
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海抜 2,600~3 500 mの高地の寒冷・湿潤なタケ林に生息する。
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118₋119.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 食性
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前足には、事実上もう一つの余分の指といえる突起があるおかげで、食物の大半を占めるタケのような細長いものを前足でつかむことができる。食べられたタケの茎のほとんどは約10時間後に、たくさんの糞に混ざってほとんどその姿を変えずに排泄される。このように、主に植物を食べていながらも、消化器の構造は植物を食べるようには適応していないため、消化効率は悪い。
1日の55%は採食に費やし、12~18 kgの竹を採食するといわれている。摂食のときは、ふつう前足で食べ物をはさみ、背中を真っすぐに起こして座る。小さなものは、地表から直接食べることもする。野生のパンダは球根、草、ときには昆虫や齧歯類も食べる。30種以上ある竹のさまざまな部分を食べ、春は竹の子、夏は葉、冬は茎を食べる。
食肉目の特徴であるひとつの胃と短い腸を持ち、死肉を食べることもある。ふつう単独で暮らし、明け方や夕方に採食して、採食場所でもある竹藪の中で眠る。
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118₋119.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ジャイアントパンダ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 240₋241.
- 中里竜二 1991 ジャイアントパンダ, 今泉吉典(監修) 世界の動物:分類と飼育2(食肉目). 東京動物園協会. 68₋69.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 天敵
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子が巣穴にいるときは、ゴールデンキャット、テン、イタチの餌食になる恐れがある。成獣になると捕食される危険性はほとんどないが、ヒョウ、ドール、ヒグマなどの餌食になったという報告もある。
参考文献
- 中里竜二 1991 ジャイアントパンダ, 今泉吉典(監修) 世界の動物:分類と飼育2(食肉目). 東京動物園協会. 68₋69.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 活動時間帯
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昼夜関係なく活動するが、活動のピークは夜明け前後と日暮れどきである。
参考文献
- 中里竜二 1991 ジャイアントパンダ, 今泉吉典(監修) 世界の動物:分類と飼育2(食肉目). 東京動物園協会. 68₋69.
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- 鳴き声
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大きなウマのいななきのような鳴き声で、数百 m先まで届く。
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118₋119.
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- 生殖行動
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性的に成熟するのは雌が4~5歳、雄は雌より2~3年遅れる。雌は1年のうちの一時期、4~5月に雄を受け入れる。繁殖期に雌は唸ったり、クンクン鳴いたり吠えたりする(約11種類の鳴き声が確認されている)。交尾そのものはとても短く、そっけないものである。雄は新生児を殺すこともある。
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118₋119.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ジャイアントパンダ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 240₋241.
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- 出産
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妊娠期間は97~181日、産仔数は1~2仔である。ときに3頭生まれることもあるが、育つのは1頭だけのようである。生まれたばかりの子は、体重 100~150 gと小さくて眼も見えず、まったく無力な存在である。お産は隠れ穴で行われる。眼は1ヵ月半~2ヵ月で開き、3ヵ月で動けるようになり、6ヵ月で乳離れし、12ヵ月で独立するといわれている。
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118₋119.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ジャイアントパンダ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 240₋241.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- その他生態
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野生ではほとんど単独生活を送り、ヒョウのそれと似たようななわばりを持っているようである。匂いづけは特に雄が日常的に行い、大きな物体に肛門腺をこすりつける。短い距離で使われる単純な発生による信号が、わずかながらある。
ほとんどのクマ類と違って、パンダは冬眠しない。
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118₋119.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 ジャイアントパンダ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 240₋241.
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関連情報
- 外来種としての影響
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発見されたのは1869年のことであり、初めて生きた個体が西洋に持ち込まれたのは1937年のことにすぎない。近年は幸運な少数の友好国へだけ贈られる外交的な贈り物になっている。その人気は、数が少ないことのほかに、人に可愛いと思わせる特徴をいくつか合わせ持っていることによる。例えば、一見して分かるかわいらしさ、丸い顔、大胆な配色、それに座ったり食べたりするときの仕草が人間に似ていることなどである。稀少さと人気の高さから、世界野生生物基金(WWF)はジャイアントパンダをそのシンボルに採用している。
参考文献
- B.C.R.バートラム 1986 ジャイアントパンダ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 118₋119.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン