- 解説一覧
- オオアリクイ(Myrmecophaga tridactyla)について
オオアリクイ(Myrmecophaga tridactyla)
【IUCN】絶滅の危険が増大している種
- 【 学名 】
-
Myrmecophaga tridactyla Linnaeus, 1758
基本情報
- 分布
-
中央アメリカや南アメリカのアンデス山脈より東側に広く分布し、南はウルグアイからアルゼンチン北西部にまで及ぶ。
参考文献
- C. R. ディックマン 1986 アリクイ, C.R.ディックマン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科6 有袋類ほか. 平凡社. pp. 44-47.
最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
-
貧歯目 アリクイ科
参考文献
- C. R. ディックマン 1986 アリクイ, C.R.ディックマン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科6 有袋類ほか. 平凡社. pp. 44-47.
最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン
形態
- 成獣の形質
-
細長い鼻づらと肩から斜め後方に走る黒と白のしま、ふさふさした尾を持っていることで、新大陸に棲むほかの全ての哺乳類と外見上はっきり区別できる。
前足に5本、後足に4本から5本の指をもち、前足の第5指が極端に退化しており、外からは見えない。また第3指には尖った強力な爪がある。長さは 4~10cm で、その爪は防御の際や、アリやシロアリの巣に穴を空けるときに使われる。
参考文献
- C. R. ディックマン 1986 アリクイ, C.R.ディックマン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科6 有袋類ほか. 平凡社. pp. 44-47.
最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
-
草原や森林に生息する。
オオアリクイの生息密度は生息環境ごとに異なるが、それはおそらく好物のアリの分布に関係しているのだろう。
パナマ運河の中にあるバロ・コロラド島の熱帯多雨林や、ブラジルの南東部の高地の人手が入っていない草原では、密度は 1 ㎢に1,2頭である。
一方、ベネズエラの混合落葉樹林やかなり乾燥したリャノでの密度はその10分の1以下で、それに対応して個体ごとの行動圏も 2500 haと広い。
参考文献
- C. R. ディックマン 1986 アリクイ, C.R.ディックマン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科6 有袋類ほか. 平凡社. pp. 44-47.
最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン
- 食性
-
ベネズエラのリャノ(草原)にいるオオアリ類のような、大型の地上生のアリをもっぱら食べ、ふつう、シロアリやハキリアリ、グンタイアリ、そのほか大きな顎を持ったアリは食べない。
匂いでアリの巣のありかを見つけ、強力な爪で巣を壊さず穴だけを空け、そこから平均約1分間アリを採取する。1つの巣から食べるアリの数はいつでも約140匹と少ない(1日に必要な量の0.5~1%にすぎない)。
オオアリクイは1分間におよそ 14 m移動するので、行動圏の中のいくつものアリの巣を一定の間隔で何度も繰り返し訪れることができる。こうして、獲物を乱獲しすぎないようにしている。
参考文献
- C. R. ディックマン 1986 アリクイ, C.R.ディックマン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科6 有袋類ほか. 平凡社. pp. 44-47.
最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン
- 生殖行動
-
分布域南の方では、秋(3~5月)に繁殖するといわれているが、飼育下では春(8~10月)にも交尾する。
求愛行動はまだわかっていない。しかし、かれらが通常は単独で生活していることから、繁殖する雄と雌は交尾の直前に一緒になり、交尾が終わったすぐあとにまた離れ離れになるのだろう。
参考文献
- C. R. ディックマン 1986 アリクイ, C.R.ディックマン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科6 有袋類ほか. 平凡社. pp. 44-47.
最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン
- 出産
-
雌は2本足でまっすぐに立って出産する。その際、尾を三脚大の3本目にあしのように使う。よく発達した状態(早成性)で生まれ落ちた子どもが毛皮づたいに母親の背中に這い上がると、母親は子どもを綺麗に舐める。ふつう1腹1子であり、およそ6ヶ月間授乳する。
子どもは1ヵ月もすると、ゆっくりしたギャロップ(駆け足)で移動できるようになるが、置いてけぼりにされると短い金切り声のような声をあげる。
満2歳になると一人前になるが、それまでは母親から離れて自分だけで採食することはない。
成獣はいつもは決して音声を発しないが、怒らせるとうなり声をあげる。
雄も雌も自分の唾液の匂いを識別でき、両者とも肛門腺から分泌物を出す。この匂いは恐らく、コミュニケーションに使われるのだろう。
参考文献
- C. R. ディックマン 1986 アリクイ, C.R.ディックマン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科6 有袋類ほか. 平凡社. pp. 44-47.
最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン
- 特徴的な行動
-
いつもはおとなしいが、敵に脅されると素早く後ろあしで立ち上がり、湾曲した大きな爪で切りつける。恐ろしく強力な両腕で抱きしめることも、爪に劣らない武器で、この抱きしめでイヌやネコ科の大型動物や人間さえも倒すことができる。
参考文献
- C. R. ディックマン 1986 アリクイ, C.R.ディックマン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科6 有袋類ほか. 平凡社. pp. 44-47.
最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン
- その他生態
-
大きな爪を傷めないように内側に曲げこみ、前足のこぶしの背と手の片側を地面につけて歩く。従って歩き方は非常に不格好である。
アリの居場所を匂いで探知する能力は非常に優れており、飼育下で条件付けした個体で実験した結果では、ふつうの状態の4000倍に薄めた匂いすら識別できた。オオアリクイは 60 cmも舌を突き出すことができ、獲物をとるため1分間に最高150回も突き出すことができる。
舌を収めるさや、および舌を収縮させる筋肉は胸骨に固定されている。唾液腺からは大量のねばねばした唾が舌の上に分泌される。そのような舌でつかまれたアリは、まず最初に口の上側や両頬にある角質の乳頭状突起で噛み砕かれてから、強靭な胃へと送り込まれる。ときに水を舌で舐めとったり、汁液の多い果実や昆虫の幼虫を口の先で拾い上げたりするが、必要な水分のほとんどは間違いなくアリから得ている。
またかなり低い代謝率をもち、体温も32.7℃と、地上生の哺乳類のなかでもっとも低い動物のうちの1つである。かれらは穴を掘らないが、爪で浅い窪みを掘り、そこで1日14~15時間横になって眠る。その際、巨大な扇のような尾で体を覆い、ピューマやジャガーといった捕食者を鋭い聴覚で警戒する。
参考文献
- C. R. ディックマン 1986 アリクイ, C.R.ディックマン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科6 有袋類ほか. 平凡社. pp. 44-47.
最終更新日:2020-07-01 ハリリセンボン