- 解説一覧
- カピバラ(Hydrochoerus hydrochaeris)について
カピバラ(Hydrochoerus hydrochaeris)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Hydrochoerus hydrochaeris (Linnaeus, 1766)
基本情報
- 大きさ・重さ
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体長:106~134 cm
体重:雄で 35~64 kg 雌で 37~66 kg
肩高:50~62 cm
尾長:退化した
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 カピバラ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 177.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 分布
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南アメリカ北部、東部に分布する。水辺の低地の環境、川沿いの林、マングローブの湿地などに生息する。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 カピバラ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 177.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 亜種・品種
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最も広く見られるのはブラジルカピバラ(H. h. hydrochaeris)である。パラグアイとベネズエラ北西部ではパラグアイカピバラ(H. h. dabbenei)が、ウルグアイとアルゼンチン東部では、ウルグアイカピバラ(H. h. uruguayensis)がこれにとって代わっている。ベネズエラ北西部からコロンビア北部、パナマにかけて棲むパナマカピバラ(H. h. isthmius)は、亜種のなかで最小で、別種とみなすこともある。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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カピバラ科
参考文献
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 カピバラ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 177.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 人間との関係
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コロンビアではカピバラの個体数がひどく減少したため、1980年前後にコロンビア政府はカピバラの狩猟を禁止した。ベネズエラでは植民地時代から、ウシを放牧する地域で殺されてきた。1953年からカピバラの狩猟は法的に取り締まられ、政府の管理下におかれるようになったが、1968年まではほとんど効果がなかった。そこで5年間の猶予期間をおいたあと、カピバラの生物学的及び生態学的研究を基礎にした、保護管理の計画が立てられた。それ以後、400頭を越えるカピバラをもつ許可を受けた放牧場では、毎年個体数調査がなされ、その30~35%が捕獲されている。この計画は、カピバラの地域個体群に明らかに安定をもたらしている。カピバラは現在の時点で危険な状態にはないが、今のレベルの個体数をこれからも保つためには、狩猟や間引きの制限は続ける必要があるだろう。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
形態
- 成獣の形質
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カピバラは、不格好なたるのような形をした動物である。尾はなく、前あしは後あしより短い。前足の4本の指と後足の3本の指には、小さい水かきがある。皮膚は非常に丈夫で、長いまばらな剛毛のような毛で覆われている。鼻孔と眼と耳は大きく、太い鼻づらをもつ頭の上のほうについていて、泳ぐときに水面から上に出るようになっている。齧歯類に典型的な2対の門歯は非常に大きくて、どんな短い草も食べることができる。門歯で切り取った草は大臼歯で噛み砕かれる。下あごの大臼歯は4対あり、第4大臼歯が前の3本を合わせたのとおなじくらいに大きい。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
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川のほとりの開けた草原、そのほか熱帯多雨林を含むさまざまな環境にみられる。集団の行動圏の広さは 2万~2百万 ㎡だが、10万~20万 ㎡がもっとも普通である。1つの集団の行動圏はもちろんその集団が主に使うが、ほかの集団も使う。ほかの時期にも見られるが、特に乾季には2つないしそれ以上の集団が一緒になって採食することがよくある。生息密度は、一部の地域では 1万 ㎡当たり2頭にも達するが、ふつうはもう少し低い(1万 ㎡当たり1頭以下)。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 食性
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カピバラは完全な草食動物で、主に水の中や水辺に生えるイネ科の草を食べる。彼らは熟達した草食いで、熱帯の乾季の終わりのわずかばかり残っている短い枯草でも食べることが出来る。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
最終更新日:2020-12-09 ハリリセンボン
- 天敵
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カピバラの幼体はすぐに疲れてしまうため、捕食者から極めて攻撃されやすい。カピバラは、もっぱら幼体だけを獲物にしているコンドルや野生・半野生のイヌをもっとも恐れる。カイマン(ワニ)やキツネなども、カピバラの幼体を襲うようである。ジャガーやヤマネコ類も、かつては間違いなくカピバラの重要な捕食者であったが、今日彼らはベネズエラやコロンビアのほとんど全域で絶滅に近い状態にある。しかし、ブラジルのいくつかの地域では、今もジャガーがかなりの数のカピバラを捕まえている。
捕食者が集団に接近すると、それを見つけた最初の個体が警戒声を発する。この声を聞くと、集団のほかのメンバーは、ふつうあたりを警戒しながらも立ち上がるという反応をする。もし危険が身近に迫っていたり、警戒声を発した個体がさらに吠え続けたりしている場合には、全員が一斉に水の中へ逃げ込む。その際幼体を中央にして、多くの成体がそのまわりを囲んで緊密なまとまりをつくる。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 活動時間帯
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ふつう朝は休息をとり、暑い日中の時間帯は水の中で過ごす。そして午後遅くから夕方にかけて採食し、夜は休んだり食べたりを繰り返す。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 鳴き声
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カピバラはいくつかのはっきりした鳴き声を持っている。幼体は常に喉を鳴らすような声をだす。この声は、争いの際の敗者によっても発せられる。
もう1つの声である警戒声は、捕食者を最初に発見した個体が発する。この咳払いに似た声は、しばしば繰り返し発せられ、近くにいる仲間はそれを聞くと警戒して立ち上がったり、水の中へ走り込んだりする。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 生殖行動
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カピバラは18ヵ月で性成熟に達する。ベネズエラやコロンビアでは1年中繁殖し、繁殖のピークは雨季の初めにある。気候がもっと温暖なブラジルでは、1年に1回繁殖するようである。
雌が性的に受け入れ可能な状態になると、雄は1時間以上にも及ぶ性的な追いかけを始める。雌は繰り返し立ち止まりながら、水に入ったり出たりして、雄はそのすぐ後について歩く。交尾は水の中で行われる。雌が立ち止まり、雄が雌の背中に乗るが、その際雄の体重で雌が水の中に沈んでしまうことがある。齧歯類に一般的だが、カピバラの交尾も数秒間で終わってしまう。ただ性的な追いかけのたびごとに、普通数回の馬乗り行動(マウンティング)がみられる。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 出産
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妊娠期間は150日、産仔数は1~8仔である。平均は4頭である。
出産の際、雌は集団から離れ、近くの草むらの中に入り、その2~3時間後に幼体が生まれる。幼体は早成性で、生後1週間以内に草を食べることができるようになる。出産後数時間で雌は集団に戻り、幼体も動けるようになるその3日ないし4日後に、集団の仲間入りをする。集団の中では、幼体は乳の出るどの雌からも乳を吸うらしい。すなわち、雌は自分の子以外の幼体にも授乳するらしい。幼体は集団の真ん中で成体に周りをかたく防衛されながら、授乳中の雌をわたり歩いてほとんどの時間を費やす。活動しているときはいつも、キリキリと喉を鳴らすような声を出している。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 カピバラ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 177.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- その他生態
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世界最大のげっ歯類で、泳ぎと潜水が得意である。
子どもは、毛が生えそろった状態で生まれ、生後数時間以内に走ったり、泳いだり、潜ったりできる。番の混群や、1頭の雄に支配された大きな群れは、新鮮な採食場所を求めて移動しながら、行動圏を守る。暑い日中には泥水の中を転げまわったりする。
カピバラは2種類の臭腺をもつ。1つは鼻づらの上にある腺で、雄ではよく発達し、雌ではほとんどないに等しく、〈モリ―ジョ〉(スペイン語で小さい丘の意味)と呼ばれている。モリ―ジョは黒っぽい色をした卵形の毛のない突起物で、そこからはおびただしい白く粘っこい分泌物が出る。このほかに、雄も雌も肛門の両側に1対の分泌腺の袋をもち、そこから臭いのある分泌物を出す。雄の肛門腺には、かたい透明なカルシウム塩の層でびっしり覆われた抜けやすい毛がたくさん生えている。雌の肛門腺の袋にも毛が生えているが、毛は雄に比べ抜けにくく、カルシウム塩の層ではなくべとべとした分泌物で覆われている。そこからの分泌物の科学的成分の割合は、個体ごとに異なる。
雨季にはカピバラは40頭もの集団をつくって生活するが、1つの集団に含まれる成体の数は平均10頭である。このほか番だけ、あるいは子どもづれの番、あるいは独りものの雄なども見られる。独りものの雄はそれとなく集団の中に入り込もうとするが、集団の雄たちに撃退される。乾季にはいくつもの集団が、まだ水の残っている湖や沼のほとりに集まり、一時的に100頭を超す大集団を作ることもある。しかし再び雨季がやってくると、大きな集団は分解する。
小さい集団は閉鎖的なまとまりをもつ傾向があり、中心メンバーの交代は滅多に観察されない。集団の典型的な構成は、優位の雄が1頭(大きなモリ―ジョを持っているためすぐに確認できる)と、1頭から数頭の雌、数頭の幼体、それに1頭から数頭の劣位の雄たちである。優位の雄は劣位の雄たちを繰り返し集団の周辺部に追いやるが、実際の闘いは滅多に見られない。雌同士はたがいにずっと寛容だが、その社会的な関係や優劣関係などの詳細についてはよく分かっていない。周辺部の雄は、かなり流動的に集団を出たり入ったりしているらしい。
参考文献
- D.W.マクドナルド/E.エルレラ 1986 カピバラ, R.A.ランシア、H.E.ホジドン(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科5 小型草食獣. 平凡社. 112₋115.
- ジュリエット・クラットン=ブロック 2005 カピバラ, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. 177.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン