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オナガチンチラ(Chinchilla lanigera)の分類 Chinchillidae
オナガチンチラ(Chinchilla lanigera)の概要 Chinchilla

オナガチンチラ(Chinchilla lanigera)

準危急種 (EN)

【IUCN】近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

【 学名 】
Chinchilla lanigera Bennett, 1829

基本情報

大きさ・重さ

大きさ:体長 22~38 cm、体重 400~600 g
尾長:7.5~15 cm

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.
  • 2005 世界哺乳類図鑑 - 書籍全体, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. .

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

分類学的位置付け

ネズミ目 チンチラ科 チンチラ属

C. lanigera(オナガチンチラ)は、C. brevicauda(タンビオチンチラ)やC. costina(コスチナチンチラ)などの種類も存在するともいわれ、分類学的に議論されている。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

人間との関係

チンチラは古代から南アメリカのアンデス固有の動物で、毛皮や食肉目的で捕獲されていた。中世に毛皮の商業利用で、ヨーロッパの市場に出回るようになった。1枚のコートを制作するのに100頭以上の毛皮を使用し、1900年代初頭には絶滅寸前まで乱獲された。野生の個体数が激減したため、現在は政府の保護下に置かれている。IUCNのレッドデータリストの危急種、またワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)では附属書Ⅰにも記載されている。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

形態

成獣の形質

チンチラは耳介と尻尾が大きく、四肢が細くて長い。特に後肢は前肢と比較して発達しているため、大きな尻尾とともに跳躍に役立っている。

耳介以外は細いしなやかな 2~3 cmの長さの被毛で被われ、1本の毛根から約60本の細い被毛が密生し、厚い毛皮をつくり、寒冷に耐える。皮脂のラノリン様脂は皮膚の乾燥を防ぐが、被毛が絡まないように砂浴びで除去する必要がある。

触毛は発達した感覚毛で、岩の隙間の巣穴での生活に適している。

肛門の頭腹側に1つの肛門腺が存在するが、その臭いは人には感じられない。乳首は鼠径部と外側肋骨部に2対(4個)見られる。

指の数は前後肢ともに4本で、犬や猫のような肉球と小さな平爪を備える。前肢は2つの発達した偽指と呼ばれる肉球突出部分が見られ、親指の代わりに使用して物を掴むことができる。

眼球は大きく、浅い眼窩に収まり、虹彩は縦長のスリット状である。耳介は丸く大きくて薄く、聴覚が発達し可聴域が広い。薄い壁に囲まれた鼓室胞をもち、聴覚の研究対象にされている。

脊椎は頸椎7個、胸椎13個、腰椎6個、仙椎3個、尾椎20個である。

歯式は計20本、切歯も臼歯も常生歯で、切歯のエナメル質は黄色~橙色をしている。これは銅や鉄などの色素が、カルシウムと一緒に取り込まれるためである。

チンチラの消化管容積は大きく、腹腔は胸腔と比較して顕著に大きい。消化管は胃と盲腸が比較的大きい。胃は単胃で、噴門と幽門の付着部位は近隣しているため、嘔吐することができない。腸管は細長く、盲腸は膨隆した構造を呈し、腸内微生物によって繊維質の消化・発酵が行われる。肝臓は6葉で、胆嚢も存在する。

肺は7葉で、右肺は前葉、中葉、後葉副葉の4葉、左肺は前葉、中葉、後葉の3葉である。

毛色は背側が灰青色で、腹側は白色を帯びている。灰青色は全体的に明るいものから、純粋な灰色に近いものまで幅がある。

雄は生殖孔と肛門の距離が雌よりも長く、わずかな膨らみをもつ陰嚢が見られる。また生殖孔の開口部を押すと陰茎が露出することで、雌雄の鑑別を行う。

雌の生殖孔は円錐形で、大きな尿道乳頭と近接しており、雄の陰茎と類似する。雄は精巣以外に発達した精嚢腺や凝固腺などの副生殖腺が発達し、交配後に膣栓をつくる。雌は1対の卵巣と子宮角をもつ。これは双角子宮、あるいは両分子宮といわれる。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

生態

生息環境

標高 4,500 mの傾斜のある岩場で、寒冷(-15~-20℃)な乾燥地帯に生息している。チンチラは12~100頭の集団をつくる群居性をもち、2~5家族が岩の割れ目や穴に棲む。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

食性

餌は草の葉や茎、根、樹皮、サボテンやコケなどの植物質を食べ、雪解け水や岩場に結露した水滴などを飲む。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

活動時間帯

夜行性の動物で夕方から活動を始めるが、日中活動することもできる。聴覚が発達しているため、音の刺激に敏感な面もある。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

鳴き声

チンチラは警戒心が強いが、好奇心旺盛で活動的な面をもち、意思表示も明確である。興奮したり、嫌なことをされると「ギーギー」、「グーグー」と甲高い声を上げる。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

生殖行動

雌の性成熟は8ヵ月齢以降、雄は8.5ヵ月齢(2~11ヵ月)である。
季節繁殖動物で、北半球では11~5月に、南半球では5~11月に発情期を迎える。しかし、飼育環境を調節することで、年間を通して繁殖が可能との報告もある。
雌は多発情を示し、発情期は30~50日間で、自然排卵を行う。発情期と分娩時以外は膣を閉鎖する膜があり、発情前日に膜が破れて開口する。繁殖の際には雄と雌を各1頭ずつにさせるか、1頭の雄に4~5頭の雌をあてる。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

出産

妊娠期間は105~118日と、ほかの齧歯類と比較して長い。産子数は約2(1~5)頭で、新生子は眼が開いて被毛も生え、体重 30~50 gと早熟した状態で生まれる。離乳には6~8週間を要する。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.
  • 2005 世界哺乳類図鑑 - 書籍全体, ジュリエット・クラットン=ブロック(著) 渡辺健太郎(翻) 世界哺乳類図鑑. 新樹社. .

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

その他生態

頻繁に後肢ですわって見まわし、周囲を警戒する。危険にさらされると後肢で立ち上がり、敵につばを吐く。冬の繁殖期には、雌はたがいに攻撃的になる。

参考文献

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関連情報

飼育方法

チンチラは神経質な性格であることに加え、聴覚が発達しているために、静かでストレスが少ない環境で飼育する。そのため騒音はもちろんのこと、電子機器などにも敏感に反応するため、機器の近くには飼育ケージを置かない方がよい。

【飼育頭数】
群居性をもつため、飼育は単独でも複数でも可能である。しかし、雄同士あるいは集団の中で優劣が認められると、喧嘩が起こるため注意する。

【ケージ】
チンチラは跳躍力が優れており、十分な運動量を確保できるスペースが必要である。本来狭いケージでの飼育は不向きであるが、ケージの外に出して運動させる時間を多くとる方法で代償している。一般的にはケージは床面積が広いだけでなく、高層で立体的に設置することが理想である。さらにチンチラは齧る力が強いため、金属製の金網タイプのケージを選ぶ。しかし金網床の網目が大きいと、跳躍した際に後肢が挟まり、骨折などの事故が発生するため注意する。ケージの中に床敷、餌容器や給水器などをレイアウトして設置する。
ケージ内には高い位置に数段の棚を設置し、跳躍して移動できるように立体的なレイアウトとする。そして精神的にリラックスさせるために、身体が隠れるくらいの大きさの巣箱や小屋も設置する。チンチラはトイレを一定の場所に行わないが、排泄物の臭気は少ない。

【温度・湿度・照明】
チンチラは高温や高湿度の環境では高体温になりやすく、熱中症に陥りやすい。厚い毛皮をもつために寒さには順応できるが、暑さには対応できない。理想環境温度はほかの哺乳類と比較すると低い。理想温度は10~20℃や10~15.6℃と報告されている。21.1℃以上になると不快感を示し、32.2℃以上では死亡する。湿度を50%以下に設定すれば、18.3~26.7℃でも適応できる。本邦において夏季の飼育期間中には、エアコンなどの温度管理ができるものを用意しなければならない。なお、湿度が高いと体温が高くなるため、風通しをよくしたり、除湿器を設置するなどの工夫も必要となる。チンチラは夜行性であるため、特別に日光浴をさせる必要はない。

~熱中症~
体温上昇により、呼吸促進や心拍数増加、舌や歯肉の発赤、下痢などが見られる。チンチラは皮膚の発汗作用を欠き、過呼吸が熱の発散に効果的ではないことも発生要因の1つである。熱中症の徴候が見られたら、冷房器具で室温を下げたり、保冷剤などで体温を下げ、傾向的に飲水させるなどの迅速な救急処置が必要となる。

【食餌】
チンチラは完全草食動物で、牧草を中心に、チンチラ用ペレットや野菜などを給餌する。給餌時間は活動を始める夕方から、夜の早い時間に分けて与えるとよい。牧草やペレットは常に餌容器に入れておき、腐りやすい野菜は時間を決めて新鮮なものを与える。なお、チンチラは前肢で餌を握って食べる。

~ペレット~
チンチラの栄養学的情報は少なく、モルモットやウサギ用のペレットが長く代用されてきた。チンチラには粗蛋白は14~16%が必要とされているが、一般的なペット用のチンチラ用ペレットでは粗蛋白15~18%、粗繊維18~20%、粗脂肪2.3~3.0%の製品が多い。

~飲水~
野生のチンチラは、必要な水分量が草露や岩場などに結露した水滴を舐める程度で得られるため、飲水を積極的に行わない。しかし、飼育下ではボトルなどから飲水を行う。実験動物では、1日あたりの飲水量は約 40 mlである。

【ケア】
運動量を増やし、ストレスの少ない環境を提供することが環境エンリッチメントとして重要である。十分な運動量の確保は、齧る行為とともにストレスを減らすことにもつながる。跳躍しながらの運動は、広いケージで飼育していても補うことはできないため、多くの場合はケージから出す必要がある。回し車で運動させることも方法の1つであるが、個体によっては興味を示さない。
そして齧り木などを齧らせる行為も必要であるが、ケージの金網を齧り壊すほどの破壊力があるため、軽石を与えることも推奨されている。
またチンチラは砂浴びを行って皮脂を除去し、細い被毛が絡まないような衛生管理が必要である。
チンチラは知能の高い動物で、人を認識して近寄ってくるほどまでに慣れる。人とのコミュニケーションは、ストレスをかけないように時間をかけて行うとよい。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

その他

野生での寿命は約10年(飼育下では最長17.2年)である。一部の報告では20年以上とも言われている。

参考文献

  • 霍野晋吉@横須賀誠 2012 チンチラ, 霍野晋吉、横須賀誠(著) カラーアトラスエキゾチックアニマル : 種類・生態・飼育・疾病 哺乳類編. 緑書房. pp. 178-188.

最終更新日:2020-05-13 ハリリセンボン

種・分類一覧