- 解説一覧
- バク科(Tapiridae)について
基本情報
- 大きさ・重さ
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体長:180~250 cm
尾長:5~10 cm
肩高:75~120 cm
体重:225~300 kg
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 分布
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南アメリカ、中央アメリカ、東南アジアに分布する。
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 亜種・品種
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・アメリカバク
英名:Brazilian(またはSouth American)tapir
学名:Tapirus terrestris
分布:南アメリカのコロンビア、ベネズエラからパラグアイ、ブラジルまで。
生息環境:水場に近い林や草原に生息する。
体毛:背面は暗褐色から赤褐色で、下面は淡色をしている。毛は短くかたい。短く幅の狭いタテガミがある。
妊娠期間:390~400日。
寿命:30年。
保全状況:VU(IUCN)記載なし(環境省)
・ヤマバク
英名:mountain(またはWooly, Andean)tapir
学名:Tapirus pinchaque
分布:アンデス山地(コロンビア、エクアドル、ペルー、ベネズエラ西部)の標高 4,500 mまで。
生息環境:森林限界までの山岳森林に生息する。
体毛:赤褐色で、他種より毛深い。口のまわりと耳の縁が白色をしている。
妊娠期間:390~400日。
寿命:30年。
保全状況:EN(IUCN)記載なし(環境省)
・ベアードバク
英名:Baird's tapir
学名:Tapirus bairdi
分布:メキシコから南の中央アメリカとコロンビア、アンデスより西側のエクアドルまで。
生息環境:湿地の林と兵陵地の林に生息する。
体毛:赤褐色で毛はまばら。短く幅の広いタテガミがある。耳の縁は白色をしている。
妊娠期間:390~400日。
寿命:30年。
保全状況:EN(IUCN)記載なし(環境省)
・マレーバク
英名:Malayan(またはAsian)tapir
学名:Tapirus indicus
分布:ビルマ、タイ、マレー半島、スマトラ。
生息環境:深い現生熱帯多雨林に生息する。
サイズ:体長 220~250 cm、尾長 5~10 cm、肩高 90~105 cm、体重 250~300 kg。
体毛:胴の中央部は白色で、体の前半分および後あしは黒色をしている。
妊娠期間:390~395日。
寿命:30年。
保全状況:EN(IUCN)記載なし(環境省)
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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奇蹄目 バク科
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 人間との関係
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メキシコと南アメリカでは、若いトウモロコシそのほかの穀類を荒らし、マレーシアでは若いゴムの植林地を荒らすといわれている。
バクはこの地上に数百万年も生き続けてきたが、その将来については安心できない。かれらは、食物として、またスポーツの対象として、あるいは厚い毛皮をとるために数多く狩られている。(バクの毛皮からは良質な皮革がとれ、むちや手綱として珍重されている)。しかし、一番の脅威は、木材採取や農地開発などによる生息環境の破壊である。最近のパラグアイとブラジル国境でのダム建設による、広大な森林地帯の水没のような人間の開発行為もその1つである。バクの存続にとって最善の策は、マレーシアのタマンネガラ(国立公園)のように森林が保護されることである。しかし、このタマンネガラでさえも、その一部が水力発電計画により水没しようとしている。
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
形態
- 成獣の形質
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どっしりとした体つきをしており、肩より腰がわずかに高く、四肢は短くがっしりとしている。このよく引き締まった流線形の体は、深く茂った森林の下生えの中をかき分けて進むのに理想的である。
バクのくびは短く、頭の先は鼻と上唇が合わさって、短いがゾウの鼻のようになっている。その先端に鼻孔がある。この鼻は、密生した植物の中を歩くときに方向を嗅ぎ分けたり、食物となる小枝や芽を口元に引き寄せる鋭敏な指の役目もする。
耳は大きく突き出ていて、先端は白いことが多い。聴覚は優れているが、嗅覚ほど鋭くはない。視覚は、この夜行性の動物にとってそれほど重要なものではない。眼は小さく、眼窩の奥に収まっていて、藪を突き抜けるときなどに小枝や棘で傷つくのを防いでいる。
ベアードバクとアメリカバクのくびの背面には、短くて硬いたてがみがある。これはジャガーなど捕食者から、体のうちでもっとも弱い部分に致命的な傷を受けることを避ける防具として役立っている。
マレーバクは、胴の中央が白で、その前と後ろが黒という目立った色分けになっているが、これもまた、捕食者から身を守るのに役立っている。
夜の暗がりの中では、バクの全身の形が白と黒に分断され、捕食者は見つけることができない。バクの皮は厚くて丈夫で、毛はまばらにしか生えていない。ヤマバクだけは毛が深く、寒さから身を守っている。
指の数は前足が4本、後足は3本である。前足の4本目の指は、ほかの3本よりやや小さめで、高い位置に外向きについており、柔らかい地面を歩くときだけ役に立つ。すべての指はひづめに被われているが、接地する下面は球状になっている。
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
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バクは森林に棲み、森林開拓地や川辺などをうろつきまわって食物を探す。
ベアードバクは標高 3,350 mまでの湿潤林、草原、熱帯雨林、落葉モンスーン林、雲霧林、河辺林湿地、沼沢地などに生息する。
ヤマバクは標高 2.000~4,400 m地帯の高地草原や山地雲霧林に、マレーバクは川辺や沼沢地周辺の雨林に好んで生息する。
参考文献
- 小原秀雄 2000 ベアードバク, ヤマバク, 小原秀雄、太田英利、浦本昌紀、松井正文(著) レッド・データ・アニマルズ : 動物世界遺産 3. 講談社. 36₋37, 160.
- 小原秀雄 2000 マレーバク, 小原秀雄 、太田英利 、浦本昌紀 、松井正文 (著) レッド・データ・アニマルズ : 動物世界遺産 4. 講談社. 150₋151.
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 食性
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食物は草、水草、木の葉、芽、小枝、果実などだが、特に若い枝を好む。1本の木からは数枚の葉しか食べずに、ジグザグに歩きながら採食する。
マレーバクは森林周辺部や二次林近くで採食することを好む。ヤマバクは、採食場のほかに、塩分やミネラルを摂るための塩なめ場にも、5~7頭の小群で規則的に訪れる。
参考文献
- 小原秀雄 2000 ベアードバク, ヤマバク, 小原秀雄、太田英利、浦本昌紀、松井正文(著) レッド・データ・アニマルズ : 動物世界遺産 3. 講談社. 36₋37, 160.
- 小原秀雄 2000 マレーバク, 小原秀雄 、太田英利 、浦本昌紀 、松井正文 (著) レッド・データ・アニマルズ : 動物世界遺産 4. 講談社. 150₋151.
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 天敵
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主な捕食者は大型ネコ類で、アメリカではジャガー、アジアではヒョウとトラである。
マレーバクはクマにやられることもあるし、水の中にいるときに若いバクがワニに襲われることもある。
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 活動時間帯
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主に夜間に活動する。
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
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- 生殖行動
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繁殖は年中みられ、雌は2ヵ月ごとに発情するようである。交尾に先だって、甲高くキーキーと鳴き合う騒がしい求愛の儀式が見られる。
雄と雌は逆向きに並んで立ち、互いに相手の陰部のにおいを嗅ぎ、ぐるぐる回り始める。回る速さがだんだん速くなるにつれ、相手の足や耳やわき腹を咬み、相手の腹を鼻で突く。
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 出産
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出産が近づくと、雌は安全な場所をみつけて、1頭(まれに2頭)の子を産む。年齢的に最盛期の雌は、18ヵ月ごとに出産をする。どの種類であれ、バクの子どもは赤褐色の体に白い斑点としま模様がある。これは、ジャングルの下生えの中の木もれ陽のもとでは、素晴らしいカモフラージュとなる。生後2ヵ月になるとこの模様は薄れ始め、6ヵ月までには、成体と同じ色合いになる。子どもは、十分育つまで母親のところにいるが、6~8ヵ月でひとりで歩きまわるようになる。性成熟するのは、さらに2~3年経ってからである。
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- 特徴的な行動
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バクは坂を登るのも得意で、川の土手や山の急斜面を猛スピードで駆け上がることができる。いつも同じルートを通るため、川へ通じる道ができることもある。バクは歩く時に鼻を地表近くに下げている。追いつめられたときには、藪の中に身を潜めるか、さもなくば歯を剥いて防戦する。
マレーバクは追われると水中に逃げ込み、潜水して身を守ることもある。
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン
- その他生態
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子連れの母親以外は、バクは単独で暮らし、行動圏は広い。
泳ぎはうまく、水中で過ごす時間が長い。採食したり、体を冷やしたり、外部寄生虫を退治したりするためである。
何かに驚いたときには、水の中に逃げ込み、数分間も水中に潜んでいる。
マレーバクは、カバと同じように水底を歩くといわれている。水浴びをすると腸の動きがよくなり、川岸や水中で糞をすることが多い。
参考文献
- K.マッキノン 1986 バク, R.F.W.バーンズ(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科4 大型草食獣. 平凡社. 44₋45.
最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン