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クマ科(Ursidae)の分類 哺乳綱(Mammalia)
クマ科(Ursidae)の概要 食肉目(Carnivora)

クマ科(Ursidae)

【 学名 】
Ursidae

基本情報

大きさ・重さ

最小でマレーグマの全長 1.1~1.4 m、体重 27~65 kg。最大でホッキョクグマの全長 2~3 m、体重 150~650 kg。

ナマケグマ、ツキノワグマ、メガネグマはほぼ同じ大きさである。

ヒグマ属の3種はアメリカグマ、グリズリー、ホッキョクグマの順に大きくなり、脂肪のついたホッキョクグマの雄では 800 kg、あるいはそれ以上に達する。

マレーグマ、ナマケグマのようにたった1頭の雌としか連れ添わない種類では、雄は雌より10~25%大きい。しかし、数頭の雌の所有を巡り雄同士争う種では、雄が20~100%も重い。

参考文献

  • F.バネル 1986 クマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 98₋99.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

分布

北極、北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、南アメリカまで分布する。温帯と亜熱帯地域の限られた狭い地域に集中している。5属のうち4属は1種ずつからなり、ヒグマ属の3種より南に分布する。

参考文献

  • F.バネル 1986 クマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 98₋99.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

亜種・品種

・グリズリー(ハイイログマ)
英名:grizzly
あるいは、
ヒグマ 英名:brown bear 学名:Ursus arctos

・ホッキョクグマ(シロクマ)
英名:Polar bear
学名:Ursus maritimus

・アメリカグマ
英名:American black bear
学名:Ursus americanus

・ツキノワグマ
英名:Asian black bear
学名:Selenarctos thibetanus

・マレーグマ
英名:sun bear
学名:Helarctos malayanus

・ナマケグマ
英名:sloth bear
学名:Melursus ursinus

・メガネグマ
英名:spectacled bear
学名:Tremarctos ornatus

参考文献

  • F.バネル 1986 クマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 98₋99.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

人間との関係

クマはほかの食肉類に比べると、比較的最近になって進化した。それは、2000万年前の中新世までさかのぼることができる。
最初のクマは、キツネくらいの大きさのアケボノグマ(Ursavus elmensis)である。新しい種になるほど頭骨はよりがっしりし、裂肉歯は切り裂く機能を失い、臼歯は四角張って丸みのある歯尖をもつようになり、体重が増え、尾は短くなった。あし全体は太くなり、くるぶしから下が短くなって、歩き方はしょ行性となった。Ursus minimus は約500万年前に現れ、おそらく、ツキノワグマとアメリカグマへと進化したようだ。ヒグマははじめアジアに現れ、ついで25万年前ごろヨーロッパへと分布を広げた。そのヨーロッパにはホラアナグマ(U. spelaeus)がいた。そして7万~4万年前、ヒグマは北アメリカに侵出した。グリズリーからホッキョクグマが分かれたのはそれ以前のことである。ホッキョクグマはヒグマ系統のうちで最も新しく、7万年以前の化石は知られていない。

人々はクマの毛皮、肉、胆嚢をとるために各地で毎年多くのクマを捕獲し続けてきた。さらに、生息域の開発はトラブルを誘発し、駆除され、クマもまた稀少動物になった。1973年、ホッキョクグマは6ヵ国協定により保護されているが、他種の中の亜種の幾つかは近い将来絶滅すると考えられ、人為的保護が待たれている。

参考文献

  • F.バネル 1986 クマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 98₋99.
  • 川口幸男 1991 クマ科の分類, 今泉吉典(監修) 世界の動物:分類と飼育2(食肉目). 東京動物園協会. 70₋77.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

形態

成獣の形質

クマは大きくてどっしりした胴体と、短いが太くて強力な四肢と短い尾(12 cmを越えることは滅多にない)を備えている。大きな頭に対し、眼と立った丸い耳はとても小さく見える。敏感な嗅覚に比べると、聴覚と視覚は劣っている。クマの足裏は幅広く、扁平である。長く湾曲し、出し入れできない5本の爪で武装した足裏を、地面にぴったりつけて歩く(しょ行性)。またこの鈎爪は、裂いたり穴を掘るときにも使う。口唇は歯根部から離れている。マレーグマは足裏に毛が生えていないが、ほかのクマ、特にホッキョクグマは足裏にもたくさんの毛が生えている。多量の長い毛が密生し、その色は真っ黒か、少し褐色がかっているか白である。小型の4種の胸には淡色の模様がある。

参考文献

  • F.バネル 1986 クマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 98₋99.
  • 川口幸男 1991 クマ科の分類, 今泉吉典(監修) 世界の動物:分類と飼育2(食肉目). 東京動物園協会. 70₋77.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

生態

生息環境

主としては森林に、北極海沿岸から熱帯ジャングルまで生息している。生活はふだん単独であるが、交尾期と子連れの個体だけが複数で過ごす。

参考文献

  • F.バネル 1986 クマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 98₋99.
  • 川口幸男 1991 クマ科の分類, 今泉吉典(監修) 世界の動物:分類と飼育2(食肉目). 東京動物園協会. 70₋77.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

食性

クマはときに動物の肉を食べることもあるが、主に草食である。唯一の例外は、アザラシを主食にしているホッキョクグマである。ナマケグマとマレーグマ以外は日中に採食する。

参考文献

  • F.バネル 1986 クマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 98₋99.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

出産

出産は温帯及び寒帯では季節と関連するが、熱帯では関係しない。
多くの種では交尾の相手は不特定多数(乱婚制)で、雄の行動圏は多くの雌の行動圏と重なる。子どもは1~4年間隔で出生し、ほとんどの地域で母親が冬眠中の11月から2月にかけて出産する。妊娠期間は受精卵の着床遅延により、6~9ヵ月間に延びる。ホッキョクグマでは265日にも及ぶ。巣穴に引きこもって出産し、新生児(通常1~3頭)はほとんど丸裸で(ただしホッキョクグマだけは例外)、まったく無力なうえ、たいへん小さい(200~700 g)。2~6歳で性成熟し、野生での寿命は15~30年間である。

参考文献

  • F.バネル 1986 クマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 98₋99.
  • 川口幸男 1991 クマ科の分類, 今泉吉典(監修) 世界の動物:分類と飼育2(食肉目). 東京動物園協会. 70₋77.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

特徴的な行動

クマ科の多くは寒さが厳しくなる前にたくさん食べて脂肪を蓄積し、あらかじめ用意してある安全な巣穴に入り冬眠する。冬眠は2つの意味があるといわれる。
1つはクマの主食である植物が冬期に不足すること、2つめに新生児が小さすぎて、自分で体温調節ができないことが挙げられる。そのため冬眠する個体は、寒冷地に生息するヒグマやツキノワグマ、ホッキョクグマの一部で、食べ物が年中ある南方産のツキノワグマとアメリカグマの雄、主食が肉食のホッキョクグマの雄は冬も活動する。マレーグマ、メガネグマ、南方産のナマケグマは冬眠をしない。
穴に最初に入るのは成獣の雌で次に亜成獣の雌雄、そして成獣雄である。穴から出るのは亜成獣雄、雌の順番である。ホッキョクグマの妊娠中の雌は冬眠中、体温の低下がほとんどなく体の機能が活動していて、容易に目覚めるため冬眠と呼ばない学者もいる。

参考文献

  • 川口幸男 1991 クマ科の分類, 今泉吉典(監修) 世界の動物:分類と飼育2(食肉目). 東京動物園協会. 70₋77.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

その他生態

ホッキョクグマとグリズリー以外は木登りがうまく、特にマレーグマは毛の生えていない足裏をうまく使って、とても上手に木に登る。クマは短距離であれば早く走れる。
イヌの仲間と違い、コミュニケーションに音声はほとんど使わず、顔の表情もほとんどない(耳をピンと立てたり寝かせたりするのが、何らかの変化を告げるものであるかどうかについては、さまざまな議論がある)。においづけはグリズリーがすることが分かっている。

参考文献

  • F.バネル 1986 クマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 98₋99.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

関連情報

研究されているテーマ

クマはごくまれに人を攻撃して傷つけることがあるが、その多くは不意に出会ったり、子連れで母親が防衛のためにとる行動である。現在は事故を未然に防ぐために、音声や忌避剤の研究が進んでいる。

参考文献

  • 川口幸男 1991 クマ, 今泉吉典(監修) 世界の動物:分類と飼育2(食肉目). 東京動物園協会. 70₋77.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

その他

クマの頭骨は、食肉類の中で最長でがっしりしている。
クマの歯は、ほとんど肉食性の種類からほぼ植食性のクマ科が進化してきたあとをよく示している。
グリズリーはクマの典型的な歯列を備えている。特殊化していない門歯、長い犬歯、数が減ったか欠けている小臼歯(未発達の裂肉歯)、そして食物のほとんどを占める植物質を砕くための、丸みのある歯尖のついた幅広く平たい大臼歯である。歯の数の個体変異が大きいという事実は、臼歯の数の減少が目下進行中であることを示している。
しかし、ヒグマ属系統の中で一番新しいホッキョクグマは、完全に肉食性(主としてアザラシの肉)であり、肉を切り裂く裂肉歯を再び発達させてきているようである。
ナマケグマはクマとしては異常な歯式をしており、上の門歯の内側の1対がない。これはシロアリを吸い込みやすくするための変化である。小さな大臼歯は、果肉食と昆虫食のための適応である。

参考文献

  • F.バネル 1986 クマ, F.バネル(著) 今泉吉典(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科1 食肉類. 平凡社. 98₋99.

最終更新日:2020-05-15 ハリリセンボン

種・分類一覧