- 解説一覧
- アシカ科(Otariidae)について
基本情報
- 大きさ・重さ
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体長:鼻の先から尾の先までの体長は、ガラパゴスオットセイの 120 cmからトドの 287 cmまで。
体重:ガラパゴスオットセイの 27 kgからトドの 1000 kgまで。
参考文献
- 新妻昭夫 1996 鰭脚目総論, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 88₋90.
- W.N.ボナー 1986 アシカ・オットセイ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 86₋99, 100-107.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 分布
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日本からメキシコにかけての北太平洋沿岸、ガラパゴス諸島、南アメリカのペルー北部以南の西岸からホーン岬をめぐって東岸はブラジル南部まで、南アフリカの南~南西岸、オーストラリア南岸とニュージーランド南島、南極を取り囲む大洋島に分布する。
参考文献
- 新妻昭夫 1996 鰭脚目総論, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 88₋90.
- W.N.ボナー 1986 アシカ・オットセイ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 86₋99, 100-107.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 人間との関係
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人間との関係は、漁業者と動物との競合関係である。動物が漁業に与える影響は主に3種類である。
第1は、網やその中の魚に対する被害である。定置網に高価な魚が入っている場合、その被害は甚大である。
第2は、魚の潜在的な資源に対する捕食圧である。アシカ類の捕食活動が漁獲量に影響を与えると考えるのは自然だが、その影響を実際に数字で算出することは非常に難しい。しかし、未だ漁業に対する影響を減らすために殺されたりすることがしばしば相次いでいる。
第3は、彼らが食物とする魚で最終幼生期を過ごす寄生虫の宿主になっていることである。最もよく知られている例は、コッドワームと呼ばれる寄生虫である。この寄生虫は幼生期をタラや、タラに類似した魚の小腸や筋肉に寄生して過ごす。もしタラにこの寄生虫が多く見つかれば、タラの商品価値は下落する。
商業活動や、漁業に及ぼす被害を防ぐという立場から、アシカ類の捕殺は慎重になったが、人間の活動はいろいろな悪影響を与えうる。巻網漁業やトロール漁業は往々にして魚と一緒にアシカ類を捕らえてしまう。また海に捨てられたまま漂っている合成繊維の漁網に絡まって死ぬ場合もある。
おそらく漁業が与える最も大きな影響は、生態系に与える打撃である。しかし、漁業活動がアシカ類に悪い影響を与えてきたという直接的な証拠はない。彼らは1つの魚種が漁業によって減少しても、ほかの種に食物を転換することが可能である。しかし、人間がさらに効率的な漁業を行い、魚資源を根こそぎ漁獲すれば、彼らの食物となる魚種がなくなってしまうということもあり得る。
参考文献
- W.N.ボナー 1986 アシカ・オットセイ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 86₋99, 100-107.
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形態
- 成獣の形質
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小さいながらも耳介がある。アシカ科は後ろびれを体の下に曲げこむことができ、また前びれが長く大きいので、陸上では四肢を用いて歩くことができる。水中での泳ぎ方は大きな前びれをあおるようにして推進し、後ろびれで舵取りをする。海中採餌と遊泳に適応して体は流線型となり、前後肢はひれになっている。抵抗を少なくするように突出部がなくなり、耳は小さくなるか完全に消失している。
体色は基本的に褐色で、腹側と背側の濃淡のほかに模様のようなものは一切ない。
アシカ科の雄では睾丸が体外に出て、袋におさまっている。ペニスも必要なとき以外は体内におさめられている。雌の乳首も普段は皮膚の中に隠れ、乳房も皮下脂肪中に薄く広がる。
参考文献
- 新妻昭夫 1996 鰭脚目総論, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 88₋90.
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- 幼獣の形質
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新生児は特殊な新生児毛で覆われている。この新生児毛は非常に柔らかく毛足の長い毛であり、その後生え換わる毛の色と異なる。新生自毛は2~3ヵ月で脱落し、この頃には皮下脂肪が増し、体熱の放散に対処できるようになっている。
参考文献
- W.N.ボナー 1986 アシカ・オットセイ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 86-99, 100-107.
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生態
- 生息環境
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一般に岩礁や孤島の海岸に生息する。
参考文献
- W.N.ボナー 1986 アシカ・オットセイ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 86-99, 100-107.
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- 食性
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海流が上昇して栄養分を表面に巻き上げる海域に集まり、表層~中層あるいは底層にいるさまざまな魚類や無脊椎動物を食べる。つまり、捕まえやすく量が多いものなら何でも食べるのである。底生のタコ類やイセエビ類もよく食べる。
参考文献
- W.N.ボナー 1986 アシカ・オットセイ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 86-99, 100-107.
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- 天敵
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シャチやホオジロザメが天敵である。そのほかには天敵はいない。
参考文献
- 新妻昭夫 1996 鰭脚目総論, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 88-90.
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- 生殖行動
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雄は雌より数日ないし数週間早く繁殖場に現れ、なわばりを海岸に構える。雌は、前年の繁殖期に身ごもった胎児を出産する直前に繁殖場にやってくる。捕食者が陸上に多く、アシカ科は陸上での運動能力が優れていないため、捕食者のいない小島や岩礁が繁殖場所に選ばれる。特に出産・育子期の雌は行動制限があるため、慎重に場所を選択する必要がある。また集団の規模が大きいほど安全性が高まるため、多数の雌が集合し、同調して出産することになる。
受精卵は最初、胚盤胞と呼ばれる細胞が中空のボールを形作る段階まで発生が進む。そしてその胚盤胞は、新生児への授乳期(生後4ヵ月程度)が終わるまで子宮内で発生を休止させた状態でいる。この休止卵の状態が終わると胚盤胞は子宮壁に着床し、胎盤ができ、発育を始める。このような現象は着床遅滞と呼ばれ、この現象によってアシカ類は出産と交尾を同時期に行い、危険にさらされる可能性が大きい陸上での繁殖期を短縮できる。
参考文献
- 新妻昭夫 1996 鰭脚目総論, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 88-90.
- W.N.ボナー 1986 アシカ・オットセイ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 86-99, 100-107.
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- 出産
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アシカ科の雌は、出産から10日前後の育子期間中に交尾を受け入れる。
産子数は1子で、出産時間はごく短時間である。なぜなら産み落とされる子の形が魚雷型をしているため、頭・尾どちらの方向からでも同じようにするりと生まれるからである。双子は胎内でうまく発育しないらしく、極めてまれである。
参考文献
- 新妻昭夫 1996 鰭脚目総論, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 88-90.
- W.N.ボナー 1986 アシカ・オットセイ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 86-99, 100-107.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- 子育て
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母親は出産後6日間は、子どものそばで付きっきりで世話をし、定期的に乳を与える。雌は定期的に採食から戻り、子どもに授乳するとまた海に出ていく。そうやっておよそ117日間のあいだに、採食と授乳を平均して17回繰り返す。それぞれの期間を比較すれば、海上で採食している時間のほうが、陸上で授乳している時間より2倍長い。母親が海に出ているあいだ、子どもたちは雄のなわばりから出て、奥まったところに集まる。母親は採食から帰ると、特徴的な子を呼ぶ声をあげる。子が答える声で、母親はさらににおいをかいでわが子を確認すると、草の茂みなどの安全な場所につれていって授乳する。その後子どもたちは互いに連れ立って海に出ていく傾向があるため、離乳と子別れは出産よりも同一時期に起こる。そのため、遅く生まれた子どもは授乳期間が短くなってしまい、早く生まれた子どもよりも体重が少ないまま離乳することになる。
参考文献
- W.N.ボナー 1986 アシカ・オットセイ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 86-99, 100-107.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン
- その他生態
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水温はアシカの体温(37℃前後)に比べてかなり低いため、密生した毛と厚い皮下脂肪が断熱材となっている。反面、陸上では体温が高くなりすぎる危険があるので、水際から離れることができない。
魚は肉が柔らかく咀嚼する必要がなく、また水中で咀嚼すると塩分濃度の高い海水を飲み込んでしまうので、ほとんど噛むことなく魚を丸飲みする。そのため切歯(門歯)と犬歯以外の歯は同形となり頬歯(きょうし)と呼ばれる。アシカ科の頬歯は単尖頭の杭状になっている。
髭がよく発達しており、この髭の根元には神経細胞がよく発達しており、触覚器官として機能していると考えられる。聴覚は極めて敏感である。とくに水中音声レパートリーがかなり豊富なことが近年明らかになりつつあり、音声コミュニケーションが発達しているものと推測される。
現生アシカ科14種はすべて程度の差こそあれ社会性動物である。集団で生活する傾向が強く、とくに繁殖期には繁殖場に多数の個体が集合する。
参考文献
- W.N.ボナー 1996 アシカ・オットセイ類, 森恭一(著) 日高敏隆(監修) 伊沢紘生、粕谷俊雄、川道武男(編) 日本動物大百科2:哺乳類Ⅱ. 平凡社. 86-99, 100-107.
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関連情報
- その他
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アシカ科の祖先は、今からおよそ2500万年前、中新世初期か漸新世後期の北太平洋海盆地域に生息していたイヌに似た原始食肉類から分かれた。この小型でアシカに似た原始的な動物はエナリアルクティスと呼ばれ、上あごと下あごに裂肉歯があるなど典型的な食肉類の歯を備えていた。この動物はおそらく、海岸に住んでいたと考えられている。
まもなくこれから、アシカの特徴を持つ一群の動物、デスマトフォキスが生じた。この動物はずっと大型で、歯は(イヌやネコなど典型的な食肉類とはまったく異なる)同形歯であり、耳の部分は潜水に関連した変化がかなり進んでいる。したがって、海岸での生活よりは沿岸の海中生活に適応していたと思われる。
中新世の中期から後期にかけて繁栄したデスマトフォキスの1種アロデスムスは、性的二型(雄が雌より大きい)が明らかで犬歯は強大であり、歯に明瞭に現れている年輪状の模様は定期的な絶食期間があったことを示している。これらの特徴はすべて、アロデスムスの繁殖様式が現生のアシカ類やオットセイ類と同じように、一夫多妻であったことを物語るものである。しかしながら、この成功した分類群であったデスマトフォキス類は、およそ1000万年前の中新世後期には姿を消してしまった。そのころには、中新世初期に出現した原始的なセイウチの祖先が勢力を拡大した。
いっぽう、中新世初期のいつのころか不明であるが、アシカ科に含められるような動物がエナリアルクティスから生じた。知られているものでもっとも古いアシカ類はピサノタリアであり、カリフォルニアのいくつかの地点の、およそ1100万年前の地層から化石が出ている。ピサノタリアは非常に小型の動物で、現生のアシカ科の中でもっとも小型のガラパゴスオットセイよりいくぶん小さいくらいであった。眼窩の上部には骨突起が発達し、歯は同形歯だった。どちらも現生アシカ科に共通する特徴である。しかし、歯根は複数あり、性的二型はみられない。
800万年前ころには、体がずっと大きく性的二型の顕著なアシカ科の動物が北太平洋にいた。四肢の骨の構造にいくらかの違いがみられること、および臼歯がまだ2根であったことを除けば、現生のアシカ類と見間違えても不思議はないだろう。キタオットセイが約600万年前にアシカ科の主流から分かれ、その後まもなくアシカ科は南半球への進出を開始した。アシカ科のなかに、セイウチを追って中央アメリカ海路を抜け北大西洋に入ったものがいたという証拠は、今のところ得られていない。
600万年前から200万年ないし300万年前までのあいだ、アシカ科はほとんど変化しなかった。当時の種は、現在のミナミオットセイ類によく似たままだった。ところが、それ以後の200万年間に、急激な変化が起こった。体が大型化し、臼歯が単根となり、属の分化が始まったのだ。そして現生するアシカ類5属が、過去300万年ほどのあいだに、ミナミオットセイ類に似た祖先から出現したのである。
参考文献
- W.N.ボナー 1986 アシカ・オットセイ類, R.ギャンベル(著) 大隅清治(監修) D.W.マクドナルド(編) 動物大百科2:海生哺乳類. 平凡社. 86-99, 100-107.
最終更新日:2020-05-14 ハリリセンボン